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ショーン派閥“クリックKliq”出現――フミ斎藤のプロレス講座別冊WWEヒストリー第183回(1995年編)

週刊SPA! 9/20(火) 9:10配信

 1月のPPV“ロイヤルランブル95”(1995年1月22日=フロリダ州タンパ、タンパ・サンドーム)で30選手出場・時間差式変則バトルロイヤル“ロイヤルランブル”に優勝したショーン・マイケルズは、“レッスルマニア11”(1995年4月2日=コネティカット州ハートフォード)のメインイベント出場権を獲得した。

 WWEのツアーは“ロイヤルランブル”終了後、同じフロリダ州内で3日間連続のTVテーピングをおこなった。1・23パルメットー大会は“マンデーナイト・ロウ”、1・24ウエストパームビーチ大会は“WWEスーパースターズ”、1・25フォートマイヤース大会は“WWEレスリング・チャレンジ”と“WWEアクション・ゾーン”の計4番組の録画収録。

 “マンデーナイト・ロウ”(USAネットワーク=ケーブル)は1月23日、1月30日、2月6日の3週オンエア分、“WWEスーパースターズ”(同)も2月18日、2月25日、3月4日の3週オンエア分のタメ撮りシフト。“WWEレスリング・チャレンジ”と“WWEアクション・ゾーン”(両番組ともシンディケーション・パッケージ=番組販売)も2月19日、2月26日、3月5日の3週オンエア分の録画撮りになっていた。

 月曜の“ロウ”(生中継)と火曜の“スマックダウン・ライブ”(生中継)の2日間のTVテーピングが毎週おこなわれる現在の番組制作シフトと比較すると、1990年代のWWEのTVショーはずいぶんとのんびりしたペースで連続ドラマが進行していた。

 世界じゅうのどこからでもインターネットにアクセスできる時代がやって来るのはまだ数年後のことで、1995年にはWWEオフィシャルウェブサイトはまだ存在していなかったし、パソコンやタブレットやスマートフォンの画面で動画がリアルタイム観られる、という発想もテクノロジーもまだなかった。

 WWEのドレッシングルームに“クリックKliq”なるグループが出現したのはちょうどこのころだった。クリックの語源はそのものずばり、派閥を意味するクリックcliqueという単語。TVショーの画面に映っている連続ドラマのストーリー上の“軍団”ではなくて、全米ツアー中の移動から滞在先のホテル、試合会場のバックステージでもつねに行動をともにする運命共同体のようなグループだった。

 クリックのオリジナル・メンバーはショーン・マイケルズ、ディーゼル(ケビン・ナッシュ)、レーザー・ラモン(スコット・ホール)、123キッド(ショーン・ウォルトマン)の4人。その後、このグループに新顔のハンター・ハースト・ヘルムスルリー(ポール・レベック=現在のトリプルH)が加わった。

 1月のPPV“ロイヤルランブル”が終了した時点ではショーンだけがヒールで、ディーゼル、ラモン、キッドの3人はベビーフェース。マイケルズとディーゼルは4・2“レッスルマニア11”のメインイベントで対戦することが決定していたため、アリーナの外ではいっしょに行動しているところをファンに目撃されるとマズい立場にあったが、クリックはそんな“業界の常識”を完全に無視した。

 クリックとそれまでのいわゆる“軍団”との根本的なちがいはその行動力、発言力、政治的な影響力の大きさにあった。3カ月後に迫った“レッスルマニア11”のメインイベントをつとめるディーゼルとショーンがバックステージで新派閥をつくったことで、ワンマン社長のビンス・マクマホンと現実的なレベルでのネゴシエーションが可能になった。

 “1984体制”以後、こういう形でビンスをじわじわとコーナーに追いつめていったWWEスーパースターはいなかった。あのハルク・ホーガンもビンスとは本気でケンカをしなかった。ビンスは40代に手が届いたホーガンに引退を勧告し、ホーガンはメインイベント以外のポジションで試合をするつもりはなかったため、結果的にホーガンにはライバル団体WCWへの移籍しか選択肢はなかった。

 クリックは内部――WWEの心臓部――からビンスに揺さぶりをかけていった。ショーンとディーゼルは“レッスルマニア11”の試合結果に関係なく、その後も自分たちがいかに継続的にトップのポジションをキープしつづけるかを最優先課題とした。ビンスにとってはこのアプローチは想定外だった。(つづく)

※この連載は月~金で毎日更新されます

文/斎藤文彦 イラスト/おはつ

※斎藤文彦さんへの質問メールは、こちら(https://nikkan-spa.jp/inquiry)に! 件名に「フミ斎藤のプロレス講座」と書いたうえで、お送りください。

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最終更新:9/20(火) 9:10

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