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「熊本地震で露呈したリスク社会の罠」(前編)~姜尚中(政治学者)【1】

nikkei BPnet 9月20日(火)9時35分配信

 気鋭の若きフォトジャーナリスト安田菜津紀の「未来への扉」対談シリーズ。第3回は日本を代表する論客で政治学者、東京理科大学特命教授、今年1月からは熊本県立劇場館長に就任した姜尚中氏をゲストに迎え、国内外の多様な問題について話を聞いた。
 その第1弾となる今回は4月に姜氏の地元である熊本を襲った「熊本地震」を巡る話から。熊本地震は歴史をさかのぼれば、実は想定可能な地震だった。そのリスクになぜ対応できなかったのか。「リスク社会」が抱える罠に姜氏が鋭く切り込む。
(構成=高島三幸 対談写真=村田和聡)

巨人が下から蹴り上げるような直下型地震の恐ろしさ

安田 今年4月に発生した熊本地震は姜さんの地元だったのですね。

姜 そうなんです。偶然ですが、4月はこれまで日本を襲った震災の取材をしていました。南三陸で東日本大震災の取材をしてから、雲仙の普賢岳の火砕流の話を聞いて、13日まで神戸で阪神・淡路大震災の話を聞いていました。そして地震当日の14日には熊本県立劇場の仕事で熊本に帰っていて、地震に遭遇したんです。

 大地震が起きた21時26分は、ホテルの10階の部屋にいました。揺れたというより、巨人がビルごと下から突き上げるような感じで、今までに経験したことがない感覚でした。

 翌日以降、熊本の中部に位置する益城町(ましきまち)を取材して分かったのは、被害状況は違うものの、阪神・淡路大震災に似てるんです。内陸型地震で震源地が浅いところで活断層が動いていたので、建物の壊れ方が早かったんです。まるでくるりと宙返りするような形で建物が壊れて、それが凶器となり人々を襲ったんですね。

 一方、東日本大震災のような海溝型地震の場合は、直下型と違って、かなり横揺れが激しいんです。だから、ああいう壊れ方はしない。東日本大震災の場合は津波による被害は甚大でしたが、地震そのものの被害という意味ではだいぶ状況が違いました。

 16日に起きた本震は真夜中だったこともあって、同じ内陸型地震でも阪神・淡路大震災のような火災による被害をもたらさなかったのが、せめてもの救いでした。あの規模の地震がもし昼間に起きていたら、死者の数は数千人に及んでいたでしょう。

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最終更新:9月20日(火)9時35分

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