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ノーベル賞「空間を把握する脳のメカニズム」とは何か

nikkei BPnet 9月20日(火)9時38分配信

ハンプトンコート宮殿「緑の迷路」

 方向音痴はなぜ道に迷いやすいのでしょうか。日本人の約40パーセントを占める方向音痴にとって、最大の関心事であるこの謎を解く手がかりになるのは、2014年のノーベル生理学・医学賞を授与された、「空間を把握する脳のメカニズム」です。今回はその内容を、多数の図をまじえて、やさしく説明したいと思います。

 私たちは近くの公園に行こうと思ったとき、脳の中で無意識に「空間を把握するための情報処理」をしています。例えばこんな具合です。

(1)自分が今いる場所を確認する
(2)公園がどこにあるかを把握する
(3)今いる場所から公園までの道筋(ルート)を作成する

 脳はこの種の位置情報やルートを、どのように記憶し、どのように処理しているのでしょうか。

 1900年代に入ると、科学者たちはラットやマウスを使った迷路実験を開始しました。脳科学辞典「迷路」によると、1901年に初めて行われた実験用の迷路は、ロンドン郊外に位置し、庭園が美しいハンプトンコート宮殿にある「緑の迷路」を参考にして作成されたそうです。

 この迷路は、スタート地点と公園中央にあるゴールとの間に、多数の分岐と袋小路を持つ複雑な構造です。回答は図に示しましたが、これ以外にも、あと2つのルートが存在します。

 迷路実験では、ラットが分かれ道や行き止まりがある迷路を抜けて、エサを置いたゴールを目指す姿を観察します。実験を繰り返しているうちにラットは少しずつ学習し、行き止まりの道に入り込む回数が減っていきました。

 「緑の迷路」に続いて、「T迷路」「Y迷路」「放射状迷路」「バーンズ迷路」「高架式十字迷路」など、各種の迷路が作成されました。

 このうち「8方向放射状迷路」では少し変わった実験が行われました。8本の道のうち、4本の道の先端にエサを置き、ラットが効率よくエサを得られるように学習させたのです。

 効率よく回るためには、まず「エサが置かれている道と、置かれていない道」を見分け、また「すでに歩いた道」は除外しなければなりません。実際には、ラットは40回くらい学習すると、エサが置かれた4本の道を正しく記憶し、重複せずに1度だけ通るようになりました。

 各種の実験を経て、ラットが迷路の構造を理解し、かつ記憶している事実は確認できました。しかしラットが脳のどの場所で、どのような情報処理をしているのか、すなわち「空間を把握する脳のメカニズム」は不明のままでした。

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最終更新:9月20日(火)9時38分

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