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女の子たちの「写真遊び」

日経トレンディネット 9月20日(火)12時16分配信

この連載は、女心のわからないモリシロウ(某電気機器メーカーエンジニア)が、若い女の子たちから絶大な支持を受けるプリントシール機の企画に携わる稲垣涼子(フリューGIRLS'TREND 研究所所長)と、シンデレラテクノロジーを研究する久保友香(東京大学大学院情報理工学系研究科特任研究員)の元を訪ね、女の子たちの「盛る」という行動を糸口に、デジタル時代の女の子たちの価値尺度を学んでいく連載です。

【関連画像】『Lumi』の筐体

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モリ: 最近どこにいても、女の子たちが、スマホを持って、自撮りをしているのを見かけます。なぜそんなに顔写真を撮るんでしょうか。

久保: 確かに、ポートレート写真って、昔はそんなに撮りませんでしたよね。

モリ: 証明写真くらい。

久保: 確かになんの景色もなく、一人で顔を撮るといったら、証明写真くらいですかね。

稲垣: 今の女の子でも、とくに景色もなく、一人で自撮りをする子は、そんなに多くはないかと思います。

久保: そうか!

モリ: とはいえ、景色と一緒に撮るというのも旅行の時くらいでした。でも今の女の子は、どこにでもあるコーヒーショップなどでもいつも撮っていますよね。

久保: お友だちと撮りたい気持ちは、私もわかります。でも、私が学生のころは何かの行事の時くらいでしたね。そういえば、高校の卒業間際に、毎日レンズ付きフィルムを学校に持っていって、あらゆるお友だちとツーショットで撮影して、それを一つのアルバムにまとめたことがあります。そのときは、とくに背景に意味もなく、ただ友人と撮った写真を、撮り集めていました。

稲垣: そうですね。私もやっていました! 友だちともう会えなくなるので、記念に。景色というよりは友だちを残すためのアルバムというようなイメージで作っていたようにも思います。

モリ: 私のころはなかったと思います。

久保: レンズ付きフィルム がなかったからかもしれませんね。『写ルンです』誕生が1986年なので。

モリ: そうかもしれませんね。

久保: かつてはなかったか、あっても卒業間際くらいにしかしなかったようなことが、今の若い世代の間では、日常化しているということでしょうね。

稲垣: そうですね。今の女の子に自撮りやプリ機で撮影をする目的を聞いても「思い出」という答えが最も多いです。「写真撮影を通じたお友だちとの思い出づくり」が日常化したのは確かです。

久保: 日常化の第一歩を作ったのが1995年発売の『プリント倶楽部』でしょうね。それまでならば、小学校・中学校・高校・大学それぞれの卒業時という、多くても人生で4回くらいしかしていなかったであろうことを、今では多くの若者がお友だちと遊ぶたび、月に1回くらいの頻度でするようになったのではないでしょうか。

モリ: 頻度、急増ですね。

久保: そして2002年にカメラ付き携帯電話が誕生したことで自撮りができるようになり、さらに日常化。多い人ならば、週に1回くらいの頻度で、お友だちとの思い出写真を残すようになっていったのではないでしょうか。そして画像処理の発達により“盛った”写真を手に入れられるようにもなりました。

稲垣: それから撮った写真の使い道ができたことも重要です。見せる場ができたことで、写真を撮ることがより活発になりました。

久保: 確かに。私が卒業時に作ったアルバムは、結局誰にも見せないままになっている気がします。1995年に『プリント倶楽部』が発売されたときに、皆がプリ帳を作るようになって、友人との写真を、別の友人に見せることが盛んになりました。

モリ: プリ帳?

稲垣: プリのシールを、ノートなどに並べて貼ったものです。最初は同じサイズのシールを敷き詰めて並べていましたが、徐々にペンで書きこんだり、シールや写真、雑誌の切り抜きなども貼ったりとコラージュする女の子が増えました。

※プリ帳

プリ機から出力されるシールを、ノートなどに並べて貼ったもの

久保: そして、2000年代になると、プロフサイト、ブログ、SNSなど、多くの女の子がインターネットで情報発信するようになり、見せる相手が増えていきます。今では、友人との思い出写真を、不特定多数が見るかもしれないところで公開している人が多くいます。

稲垣: 今は「お友だちと写真を撮る」という「写真遊び」がものすごく盛んになっています。

モリ: 「遊び」なんですね。

久保: この間、稲垣さんから、女の子たちが「暇つぶし」に写真を撮っているというのを聞いて、驚きました。フィルムを現像していた時代は、一枚一枚が貴重だったので、「暇つぶし」でシャッターボタンを押すことはなかったですね。

モリ: 今は、無料のようなものですものね。

久保: そうです。私が高校生のころは、レンズ付きフィルムを一つ買うのに1000円くらい、現像にも1000円くらいかけて、24枚程度の写真を手に入れました。『プリント倶楽部』が登場して、300円で1回プレイすると16枚のシールが手に入ったとき、すごく安く感じました。それが今では、1枚あたり0円のようなものですね。

モリ: どこにでもあるコーヒーショップで自撮りしている女の子たちのことが、やっと少し理解できてきました。

稲垣: 昔から女の子たちに「どんなことをして遊んでいるか」というのを聞いていますが、私が高校生のときから、本質は変わっていないと思っています。私が高校生のときは「買い物かカラオケ行って、お茶かごはんして、プリを撮って帰る」というイメージ。プリだけでなく、スマホやアプリの進化で自撮りが加わったり、SNSで見せる場所が増えたことで、女の子の「遊び」の時間に占める「写真遊び」の時間は、年々増えていると思います。

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最終更新:9月20日(火)12時16分

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