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漫画家・安野モヨコの全仕事を振り返る展覧会「STRIP!」

nippon.com 9/21(水) 20:35配信

原画の美しさに触れ、物語を体感できる展示

「働きマン」や「さくらん」などで知られる漫画家・安野モヨコ氏の20年超におよぶ作品を展示した「安野モヨコ展 STRIP!」が9月26日まで開催中だ。「これまでの歩みをありのままに晒(さら)す」という意味をタイトルに込めた展覧会。渋谷から池袋に移転したパルコミュージアムのオープニングを飾るもので、20年の画業を網羅する初めての大規模個展となる。「ハッピー・マニア」「働きマン」「さくらん」「シュガシュガルーン」「オチビサン」などのトビラ絵や名場面などの精密で美しい原画を眺めて歩くだけでなく、「読める」展示になっているのがファンにはうれしい。

「安野モヨコ展 STRIP!」会場写真

雑誌には掲載されたものの、単行本未収録であるため“幻”とされている「さくらん」の第2章もここで読むことができる(展覧会を記念して発売された画集では2章全話を掲載!)。現在連載中の「鼻下長紳士回顧録」のエリアでは、文字のない1コマ、そこに描かれた娼婦たちの姿や表情から、この作品が醸す独特の雰囲気や物語が十分に伝わってくる。

初期のヒット作「ハッピー・マニア」(祥伝社)の展示は、主人公であるシゲタカヨコが恋してきた男性をカタログ的に紹介していく見せ方が面白い。彼ら一人一人を「名前」「出会い」「職業」「性向」といったスペックで表示し、シゲタとの絡みを数コマの漫画で紹介するのだが、10人以上の男性キャラには1人として同じタイプがいない。でも、どこかの誰かに重なるような男性(しかも、どちらかというとクズ)の類型を、よくもこれだけそろえたものだと感心するし、懲りずにアプローチし続けるシゲタの貪欲さもアッパレすぎる。

編集者から遊女まで、女もほれる女たち

安野モヨコ作品には、たくさんの「カッコイイ女」が登場する。恋に仕事にと猪突(ちょとつ)猛進する登場人物たちは、ぱっと見にはグイグイ進む強さが目立つ。しかし、一人になるとつまらないことで悩み、人知れず泣きぬれ、また人前に出れば意地を張る。目をつぶって明後日の方向に走り、自爆することも少なくない。強いだけでない、弱さや甘さもひっくるめて「カッコイイ」。そんな姿が多くの読者の共感を呼び、引きつける。

テレビドラマ化もされた「働きマン」(講談社)は、週刊誌「JIDAI」編集部で編集記者として働く松方弘子が主人公。仕事が修羅場に突入すれば、「仕事モードオン!!男スイッチ入ります。働きマン!」の掛け声とともに変身し、恋人の存在や自分自身が女であることも忘れて仕事に没頭する。とはいえ、28歳という妙齢の松方、仕事仲間や上司とぶつかり励まされ、仕事で失敗してはへこむ一方で仕事に元気をもらい、恋人との関係にも苦悩する。そんな姿がリアルに描かれ、同じような悩みを持つ女性たちから絶大な人気を得た。

江戸時代が舞台の「さくらん」(講談社)では、遊郭・吉原の遊女たちの暮らしを描いた。蜷川実花監督で映画化された人気作のひとつだ。主人公は、美しさと強気な態度(時折見せる甘さも)で旦那衆をとりこにし、吉原一の売れっ子花魁(おいらん)へと成長するきよ葉。女性向け時代漫画という珍しいジャンルだが、着物の柄や髪型、髪飾り、江戸の街並み、柱の木目の一つ一つに至るまで、全ての線を手で描いたという絵に、まず圧倒される。そして、遊女同士のせめぎ合いや客との掛け合いなど、粋なセリフのやりとりに、ぐっと心をつかまれてしまう。華やかな世界の裏には自らの意思では抜け出せないやるせなさや死が意外に近いところにあることを感じて、もの悲しくなることもある。でも、女たちは逞(たくま)しく生きている。

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最終更新:9/21(水) 20:35

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