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獲物を咀嚼するエイがアマゾンで見つかる、「咀嚼」は哺乳類だけではなかった

ナショナル ジオグラフィック日本版 9/21(水) 7:31配信

仕組みを映像で解明

 獲物を「咀嚼(そしゃく)」するエイが、アマゾンで見つかった。

 ここで言う咀嚼とは、「歯が並んだ顎を上下左右に動かし、硬い食物を細かくする」こと。獲物や食料に噛みつく動物はたくさんいるが、咀嚼するのは哺乳類だけ、というのがこれまでの定説だった。

動画:咀嚼するエイをハイスピードカメラで撮影

 ところが、カナダ、トロント大学スカボロ校の生物学者マシュー・コルマン氏は、アマゾン川にすむ淡水のエイ、オレンジスポットタンスイエイが咀嚼する様子をとらえてその仕組みを解明、9月14日付で学術誌「Proceedings of the Royal Society B」に発表した。咀嚼が哺乳類だけの特徴でないことを実証したほか、骨格が軟骨でできたエイが貝や甲殻類といった硬い餌をどうやって食べるかを明らかにした。

「硬い骨を持たない軟骨魚類がどうやって頑丈な獲物を噛みつぶせるのかを探りたかったのです」とコルマン氏。「そんななか、アマゾンのエイのことを耳にしました。この種はサメやエイの中で唯一、昆虫を捕食しています。一体どうやって、と思いますよね」

 コルマン氏は、オレンジスポットタンスイエイが軟らかい魚、硬いエビ、さらに硬いヤゴ(トンボの幼虫)の3種類の餌を捕食する様子をハイスピードカメラで撮影した。

 映像では、オレンジスポットタンスイエイはエビや虫を口で挟み、顎を左右にぱくぱくと動かしていた。また、顎の上半分と左半分も別々の動きをしていた。この2つの動きを組み合わせることで剪断力を生み、獲物を少しずつ動かしながら引き裂いていたのだ。

 これは「咀嚼」だろうか? 確かにそう見える。顎を収縮させ、左右に動かしたりして獲物をばらばらにしているのだから。この映像からは、硬い餌を細かくするために、哺乳類もオレンジスポットタンスイエイも、非常によく似た解決策を独自に発達させてきたことが見て取れる。

咀嚼もいろいろ

 コルマン氏は、咀嚼を狭義にとらえすぎなのではと主張する。一部には、咀嚼こそ哺乳類が繁栄してきた鍵となる画期的な行動だと説く生物学者もいる。咀嚼ができるようになったおかげで、昆虫や草、その他の豊富な食料を食べられるようになったというわけだ。だが、「咀嚼」を哺乳類の食べ方を基準にして定義するのはかなり自己中心的といえる。似たようなことをしている動物は、哺乳類以外にもたくさんいるのだ。

 鳥類や多くの爬虫類は、砂嚢という筋肉でできた胃のような器官で餌をすりつぶす。消化を助けるため、小石を飲み込んでいる者さえいる。また、多くの魚は喉の中に咽頭顎というもう1組の顎を持っており、獲物を押しつぶして細かくする。

 こうした食べ方は、人間の目には奇異に映る。というのも、捕食と解体の動作が分離されているからだ。人間などの動物は、どちらの動作も1つの器官が担う。「ライオンはガゼルを捕らえると、獲物を捕らえるのにも食べるのにも、顎を使います」とコルマン氏。だが鳥の場合、イモムシを捕まえて飲み込むのにはくちばしを使うが、すりつぶすのは砂嚢で行う。ベラ科の魚は1つめの顎で餌を採り、もう1つの顎で押しつぶす。

 オレンジスポットタンスイエイはどうかと言えば、全身で餌を採る。海や川の底近くに伏せ、円盤形をした体の端を突然持ち上げて獲物を口の中に吸い上げる。そして咀嚼する。

 生物学者のなかには、咀嚼するには人間の臼歯のように複雑でざらざらした歯が必要だという主張する者もいる。確かに、歯の凹凸が大きければ、獲物を捕らえるのも引き裂くのも容易になる。だがコルマン氏は、別の淡水エイがあごを収縮させることで歯の配置を変えられることを発見した。1つ1つの歯は単純な形でも、あごの動きによって凹凸を作り出しているということだ。

「ある種の咀嚼と考えてよいプロセスは、脊椎動物の世界全体にさまざまな形で存在するのです」とコルマン氏は話す。

文=Ed Yong/訳=高野夏美

最終更新:9/21(水) 7:31

ナショナル ジオグラフィック日本版

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