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秘湯の一軒宿で鮮やかに染まる渓谷を見下ろし、見上げる醍醐味

旅行読売 9月21日(水)20時30分配信

ホテル祖谷(いや)温泉
徳島県

 四国といえば瀬戸内海やうず潮、土佐の桂浜など海のイメージが強い。しかし、四国のもう一つの魅力は山である。標高はそれほど高くなくても、山頂に続く斜面は決してなだらかではない。そのために、植林などの人の手の入っていない森が数多く残っている。ブナ、トチノキ、サワグルミ、シャクナゲなどが急斜面を覆い、四季の彩りを見せてくれる。
 海辺の町から山中へ。川を遡る旅こそ四国の醍醐味だ。たとえば「四国三郎」の異名をもつ吉野川。海に注ぐ徳島市の河口部は川幅2380メートルを誇り、関東の荒川に次いで日本2位だ。上流へ向かうと吉野川の水運に恵まれ、藍で繁栄して“うだつがあがった”脇町がある。広かった川幅は阿波池田を過ぎると徐々に狭まり、やがて急斜面に挟まれた渓流になる。
 土讃線祖谷口駅で沢は二手に分かれる。土讃線に沿って行けば、紅葉とスリルに満ちた川下りが楽しめる小歩危(こぼけ)、大歩危(おおぼけ)に至る。一方、吉野川支流の祖谷川に沿って登れば、山は一層険しくなり、やがて一軒宿の祖谷温泉に達する。祖谷川は標高1955メートルの剣山(つるぎさん)を水源とする。
 祖谷温泉まで路線バスで向かったが、「運転手さん、(安全運転で)頼むよ」とつい心中で懇願してしまうほど、V字形に切れ込んだ谷が深く道も狭い。祖谷温泉でバスを降り、旅館のスタッフに笑顔で迎えられた時は安堵感を覚えたほどだった。
 山深き渓谷までの旅のご褒美は、手つかずの森である。20室をもつ祖谷温泉の客室やレストラン施設は、県道沿いの上部にある。ここから見下ろす四国自然林特有の紅葉が素晴らしい。ただし、祖谷温泉の紅葉は見下ろすだけではない。入浴の用意を整えて、ケーブルカーに乗り込む。ケーブルカーは約5分かけて傾斜度42度、長さ250メートルの急斜面をゆるりと下りる。赤、黄、オレンジといった華やかな色がグラデーションとなって両側に迫ってくる。
 はるか下に見えた渓流沿いにケーブルカーの終点があり、そこに四国では貴重な源泉かけ流しの露天風呂がある。
 「昨年が開湯50周年でした。開湯51年目にして初めて露天風呂の男湯と女湯を入れ替え制にしました。これからは、男性も女性も趣の異なる湯船をお楽しみいただけます」と、若女将の石川千代さんが言う。

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最終更新:9月21日(水)20時30分

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