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【残業なし・ノルマなし】でもメンタル不調者続出! 『心が折れる職場』の実態

ダ・ヴィンチニュース 9月21日(水)6時30分配信

 過重労働、長時間労働、不規則な勤務時間、パワハラ、重たいノルマなどなど、いわゆる「ブラック企業」と言われる職場がこの世には存在する。そういう会社では、精神的にまいってしまい、休職・退職する社員が続出しても不思議ではないが、一見、健全そうに見える企業でも「メンタル不調者続出」の職場があるそうだ。

『心が折れる職場(日経プレミアシリーズ)』(見波利幸/日本経済新聞出版社)では、「ブラック企業ではないけれど、社員の心を折ってしまい、休職に追い込んでしまう職場」の特徴と、その対処法を教えてくれている。

 著者は日本のメンタルヘルスの草分け的存在。体調を崩した本人だけではなく、上司、経営陣含め、企業全体として職場における心の健康を維持する取り組みの重要性を訴えている。

 さて、それではブラック企業ではないのに、「心が折れてしまう職場」にはどのような特徴があるのか。一つは、「一人でトラブル対処にあたる職業は要注意」だそうだ。

 教師の例を挙げている。例えばモンスターペアレントの問題を抱えており、受け持ちクラスの生徒の自宅へ「問題対処」に訪問しなければならない場合。いくら説得しても分かってもらえない。また、給食費をはらってもらえない……「どうしよう」と困り切っている時、「一緒に解決策を考えよう」「今度は自分も一緒に行くよ」と協力的な姿勢を持っている「上司」がいてくれるだけで、メンタル不調につながりにくくなる。

 だが、「あなたが悪い」「それがあなたの仕事だ」と突き放されてしまうと、行き場がなくなり、どうしようもなくなってしまう。教師に限らず、心が折れる職場は「悩みがあっても一人で抱え込むしかない・誰にも相談できない」という特徴が多い。

 また本書では、上司(経営陣)の役割、重要性を強く説いている。「部下のことより、上司である自分の利益ばかり考えている人がかなりの割合でいる」とのこと。もちろん、昨今の不景気で人員が減り、上司が部下のことばかりに時間を割いていられないという現状もあるが、「上司は実際に仕事の配分や担当を考え、部下にあてがっていく」ことも重要な職務の一つ。

 仕事自体がそれほど過重ではないのに、メンタル不調者を出してしまう職場というのは、社員が「自発的に働いている」という気持ちが乏しく、「やらされ感」を抱いていることが多い。そうではなく、「自発的に働いている」状態に近づけるよう、上司がサポートをしていくことも大切な働きかけだ。

 職場の環境、上司の考え方も「心が折れる職場」につながる大きな原因になってくるが、もちろん、メンタル不調になる本人に一因があるケースも存在する。メンタル不調になりやすい人の傾向の一つに「運動系の部活を経験していない人」があるそうだ。

 ビジネスの世界では、今「レジリエンス」(跳ね返る力)が大切だと言われている。逆境に置かれても、それを跳ね除ける強さ。しなやかに跳ね返る弾力の強さ。これはメンタルの強さとも言い換えることができる。このレジリエンスの違いが、個々のストレス耐性の違いにつながっていく。

 レジリエンスの高いタイプは、学生時代に体育会系のクラブに所属していた人が多い傾向にある。その理由は「理不尽さへの耐性があるから」。運動部は上下関係も厳しく、下級生の間はランニングや雑用などの下積みばかり。誰がどう見ても競技の上達には関係ないようなトレーニングだって、顧問に「やれ」と言われれば黙々とこなさなければならない。上級生のパシリにされて、努力しても試合には出してもらえない。そういった「理不尽さの経験」が社会に出た後のレジリエンスの強さにつながるのだという。

 また、「仕事一筋」ではなく、趣味を持っていることも「心が折れにくい人」の傾向だという。仕事で自信を失くすようなことがあっても、プライベートで前向きな「承認」(褒められる/認められる)を得られれば、自分を全否定せず、自信を持てるということが大きい。

「心が折れる職場」には様々な原因がある。しかし、一番大切なのは「職場のリーダーが『関わる気持ち』を持つこと」だ。目の前の人を尊重し、その人の気持ちと向き合い、部下にも両親、家族がいることを感じられるか。難しい専門知識や技術が必要なわけではないのだ。「関わろうとする気持ち」、それを大切にしていくことが、今後の日本企業には求められていく。

「心が折れる職場」は人の「思いやり」で変えていける。本書はその手助けになるだろう。

文=雨野裾

最終更新:9月21日(水)6時30分

ダ・ヴィンチニュース

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