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こけおどしのショー「総火演」はやっても無意味

JBpress 9月21日(水)6時10分配信

 8月末、富士山麓の東富士演習場において、今年も陸上自衛隊が「富士総合火力演習」を実施した。

 演習は毎年一般公開されている。戦車やヘリコプター、様々な火砲などによる実弾射撃を間近に見ることができるとあって、非常に人気の高いイベントである。

 しかし、元米海兵隊大佐、グラント・ニューシャム氏はこの富士総合火力演習を辛辣に批判する。言ってみれば「歌舞伎」のようなショーに過ぎず、日本国民を勘違いさせる無益なものだというのだ。

 ニューシャム氏は日本戦略研究フォーラムの上席研究員を務める、知日派の中では傑出した軍事専門家である。一体、なぜ彼は演習を批判するのか。まずは、彼が「ナショナルインタレスト」と「アジアタイムズ」に寄稿した内容を簡単にご紹介しよう。

■ 総火演は自衛隊の能力不足を誤魔化すショーだ

 「富士火力総合演習」は、何万人もの日本人の観客を集めているが、これは自衛隊の能力不足を隠ぺいするためのカネのかかる「歌舞伎」でしかない。

 今年のシナリオは、「島嶼奪還作戦」のシミュレーションだった。観客たちは演習を見て、自衛隊が日本を防衛する十分な実力を持っていると誤解したかもしれない。だが、日本政府は、自衛隊の抱える深刻な欠点を修正しなければ、戦略的にも軍事的にも敗北を喫することになるだろう。

 自衛隊の欠点の第1は、陸上自衛隊が「日本版海兵隊」構想に真剣でないということである。陸自の指導者たちの一部は、陸海空の統合運用による水陸両用作戦で南西諸島を防衛する構想にいまだに抵抗している。彼らは北海道をロシアから守った機甲部隊の歴史的な役割にとらわれたままであり、考え方の違いから派閥争いも起きている。実際、改革派である陸自の2人の将軍が早期退役に追い込まれた。

 第2に、「日本版海兵隊」構想が提案する組織構造は十分なものだが、海自と陸自と空自は、それぞれが統合運用に対して消極的だ。多くの自衛隊幹部は、陸海空が統一された士官学校(防衛大学)で学んだ。それにもかかわらず卒業と同時に各軍の文化の奴隷となって、軍種間での協力を避けるようになってしまう。統合の欠如は自衛隊の基本的な弱点である。自衛官たちは誰でもそれが問題であるということを知っているが、誰も積極的な改善の努力をしない。

 第3は、陸海空自衛隊間の電子的コミュニケーションが深刻に欠如しているということだ。空自と海自の大部分が富士総合火力演習で不在だったのは、おそらく当然だろう。

 第4は、防衛予算が不足しているということだ。防衛予算を増額したいという安倍首相の努力は徒労に終わった。日本の防衛費は何十年も不足しており、訓練用の予算も足りていない。陸自はただでさえ実戦的な訓練が十分行えていないのに、PRのために弾薬を発射するのはゆがんでいる。

 予算不足は、訓練時間と飛行時間の不測に繋がり、それは即応性の欠落に向けた悪循環を生み出しかねない。そして、予算が不足している時、陸海空自衛隊は互いの協力体制を強化することはない。しかも、海外との共同訓練を断る際の、自衛隊の常とう句は「お金がないので」だ。

 日本の防衛装備品の調達戦略にも問題がある。日本の防衛に本当に必要なものを買うというよりも、日本の産業のため、もしくは公共事業のためという趣旨が多々見られる。しかも、財務省と経産省と防衛省はしばしば齟齬をきたしており、彼らは自衛隊の意見をあまり尋ねようとしない。

 ゆえに、私は以下の主張をしたい。まず、日本は完璧で素晴らしい3つの軍隊を持っているのだから、互いに協力させるべきだ。そのシナジー効果は大きい。

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最終更新:9月21日(水)12時0分

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