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住友化学、リチウム電池で一発逆転狙いの買収劇

ダイヤモンド・オンライン 9月21日(水)6時0分配信

 合従連衡が進むはずだ──。1年半ほど前から、化学業界の幹部がリチウムイオン電池の部材分野について異口同音に予見していたことが、着実に現実のものとなっている。

 8月31日、国内総合化学2位の住友化学が、主要4部材の一つの正極材なる部材で、一発逆転をもくろむ一手を投じた。正極材メーカーの田中化学研究所を連結子会社化すると発表したのだ。

 田中化学は、規模は小ぶりながら「技術力が高いと業界では有名」(競合役員)な知る人ぞ知る企業。その第三者割当増資を約65億円で引き受け、14.8%の出資比率を50.1%に引き上げる。

 リチウムイオン電池の部材分野では目下、大小のメーカーが入り乱れた苛烈な競争が繰り広げられている。正極材でも日亜化学工業やベルギーのユミコアなど、大きくシェアを握るメーカーがある一方で、中国など、新興勢力による追い上げもすさまじい。

 住友化学は20年の長きにわたり研究開発を進めてきたものの、なかなか事業化できずに今に至る。独自の正極材の開発には成功するも他の主要部材との兼ね合いが悪くお蔵入りするなど、電池部材の開発特有の難しさに直面してきた。

● 資金力が成功の鍵

 それでも赤堀金吾・住友化学電池部材事業部長が、「存在感のある正極材メーカーになる」と言って余裕を見せるのは、今がまだ巻き返し可能な段階とみているからだ。

 何しろ、リチウムイオン電池の需要の“本丸”であるプラグインハイブリッド車や電気自動車が本格普及するのはこれからだ。リチウムイオン電池の市場は、2020年に15年比1.5倍の3.2兆円まで拡大する見込み(富士経済予測)。4部材の市場も急成長するとみられ、参入の余地はある。

 部材メーカー同士の勝負もついていない。正極材にしても技術は発展途上で、“完成型”が誰にも見えていないのだ。高品質を実現できるノウハウさえあれば、後発でもシェアの奪取が望める。

 田中化学は需要を読み違えて行った工場投資が重く、財務的に苦しい。が、高容量、長寿命、高出力といった正極材の性能を決める前駆体の制御技術に優れる。実際、住友化学と田中化学が13年から進める車載用の共同開発は順調で、顧客による審査の「最終段階でコンペをしている案件が幾つかある」(赤堀事業部長)といい、早ければこの秋にも結果が出る。ここで出資比率を引き上げ、一気に正極材市場に攻め入る考えだ。

 ただし、「リチウムイオン電池の部材事業は、とにかく金が掛かる」。化学各社の幹部がこうぼやくように、住友化学の当出資の成否は、手にした技術力だけでは測れない。自動車メーカーのコスト要求と安定供給体制の構築要請に応えるためのあくなき投資も、成功の必須条件となる。

 (「週刊ダイヤモンド」編集部 新井美江子)

週刊ダイヤモンド編集部

最終更新:9月21日(水)6時0分

ダイヤモンド・オンライン

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