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泉田新潟県知事が語る「出馬撤回の理由は『原子力防災を争点にしてほしい』から」

HARBOR BUSINESS Online 9/21(水) 9:10配信

 9月29日に告示される新潟知事選(10月16日投開票)で、今年2月に出馬表明をしていた泉田裕彦知事が8月30日に突然、出馬撤回を表明。その途端、東京電力の株価が上昇した。すでに出馬表明をしていた自民推薦の森民夫・前長岡市長(全国市長会会長)が最有力候補となり、柏崎刈羽原発再稼働の可能性が高まったと株式市場が判断したためだ。

 新潟県庁を訪れ、出馬撤回について泉田知事に話を聞いた。

◆『新潟日報』、自民党反泉田派によるネガティブキャンペーン!?

――出馬撤回の理由として、『新潟日報』の報道をあげていました。

泉田知事:事実に反する記事や、県民に誤解を与えかねない記事が地元紙『新潟日報』にずっと載っていたので、「訂正してほしい」「適切な報道をしてほしい」と申し入れました。しかし、県から申し入れがあったことは報道されず、申入れ内容が正しいのか否かかも伝えない。あまりにもそれが重なったので8月24日の定例会見で訂正を求めましたが、「異例の会見」と報じただけで、状況は変わらなかった。「これでは、県の主張を届けるのが難しいのではないか」ということから今回、「(知事選から)撤退」という決断をしました。

【解説】泉田知事の対抗馬の森氏は旧建設省出身で長岡市長を5期務めたものの、67歳と高齢で長岡市以外での知名度は低かった。そこで自民党の一部(反泉田派)が、東電の広告を今年5回載せた『新潟日報』と連携して、泉田知事へのネガティブキャンペーンを先行させたとの見方もある。

 まず『新潟日報』が、県が出資した「新潟国際海運」のフェリー購入問題(日本海横断航路問題)を追及する記事を7月から連日のように掲載。これを受けて自民党は県議会で調査委員会を設置、泉田知事や県担当職員を追及した。問題の経過は、「海運会社の子会社が韓国企業から船を買おうとしたが、途中で速度未達であることが分かって購入を中止。これに対し韓国企業は仲裁機関に提訴、1億6000万円の損害賠償の支払いを命じたが、新潟国際海運側は応じなかった」というものだった。

◆私が出ると航路問題ばかりに争点が当たってしまう

――フェリー問題は民間企業間の契約トラブルにすぎず、新潟県に損害を与えたわけではなかった。しかもボロ船を売りつけようとした韓国企業は「ある県議会メンバーが関心を示している」「『新潟日報』が力になってくれる」とメールに書いていたそうですが。

泉田:あるところから「『航路問題で泉田知事の首を取る』というプロジェクトが進んでいるようだが、現状どうですか」との取材の申し入れがありました。ということになると、単なる報道の問題ではなくて「政治的な狙いも含んだもの」と理解せざるを得ない。だからこそ(県の反論が掲載されずに県民に)届かないのだと思いました。

 今回の県知事選は「原子力防災にどう向き合うのか」などを問うべきですが、私が出ると航路問題ばかりに焦点が当たってしまう。これまでの福島原発事故の総括で、原子力防災でいくつもの穴があったことが分かっています。柏崎刈羽原発の5~30km圏には屋内退避する住民が約44万人もいますが、「ヨウ素剤配布」「屋内退避時の余震リスク」「避難バスの運転手確保」などの問題が積み残しになっています。

「原子力災害対策指針が妥当なのか」を議論することが知事選の争点です。「県民の健康、生命、安全、原子力防災など、本来議論すべきことを議論できる環境になってほしい」ということが撤退の理由です。原子力防災の議論を引継ぐ候補者が出ることを期待しています。

◆泉田知事の後継候補者選びに注目が集まる

 一方、「福島原発事故の検証と、総括なき原発再稼働はありえない」が持論の泉田知事を引き継ぐ後継者探しも始まっている。元経産官僚の古賀茂明氏や、泉田知事のモデルが登場する『原発ホワイトアウト』の著者とされる霞が関官僚の名前などがあがったが、両人とも固辞。その後、野党三党(社民・生活・共産)と市民グループの間で民進党衆院五区総支部長の米山隆一氏が浮上したが、この提案を民進党県連は拒否した。民進党蓮舫新代表の野党共闘への動きも鈍いままだが、それでも市民グループは「出馬容認を再度、民進党に働きかけたい」(佐々木寛新潟情報国際大学教授)と意気込んでいる。

 泉田知事継承候補の擁立が注目されるこの新潟県知事選は、蓮舫新代表の試金石でもある。野党第一党が「原発再稼働反対」の民意の受け皿作り(野党統一候補擁立)を主導できなければ「自民推薦候補支持を決定した連合新潟に配慮した」「大飯原発再稼働を進めた野田佳彦新幹事長(元首相)の傀儡」と酷評されてしまうだろう。

<取材・文・撮影/横田一(ジャーナリスト。小泉純一郎元首相の「原発ゼロ」に関する発言をまとめた最新刊『黙って寝てはいられない』<小泉純一郎/談、吉原毅/編>に編集協力)

ハーバー・ビジネス・オンライン

最終更新:9/21(水) 9:10

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