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アマゾンと楽天、「読み放題」の勢いは続くか

東洋経済オンライン 9月21日(水)6時0分配信

 アマゾン・ドット・コムと楽天。国内EC市場で覇権を争うライバルの2社が、電子書籍分野でも激しく火花を散らしている。新たな戦場となっているのは、読み放題サービスだ。

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 アマゾン日本法人が電子書籍の定額読み放題サービス「キンドル・アンリミテッド」を開始したのは8月3日。対抗するかのように、楽天も1週間遅れで雑誌にジャンルを絞った定額読み放題の「楽天マガジン」を開始したのだ。アマゾンと楽天は、2012年に相次いで電子書籍の国内配信を開始して以来、しのぎを削ってきた。ただ、これまでは漫画や小説など個別の作品の単品販売だけだった。

■プライム会員向けに含まれない、独自サービス

 アマゾンは電子書籍の読み放題以前から、定額制のコンテンツ提供サービスを展開してきた。年間3900円(税込み)のプライム会員向けに、2015年秋から動画見放題の「プライム・ビデオ」や、音楽聴き放題の「プライム・ミュージック」を追加料金なしで提供。ECの枠を超えた利便性の提供をテコに、顧客囲い込みを進めている。

 しかし、新たに始めた「キンドル・アンリミテッド」は月額980円(税込み)と有料だ。対象となる書籍は和書13万冊、洋書130万冊以上と豊富で、書籍や漫画、雑誌や写真集などジャンルも幅広い。

 書籍販売はアマゾンが日本での事業拡大の足掛かりにした分野で、注力分野であることは電子書籍でも同じ。品ぞろえの充実度からしても、有料会員事業に付随する動画や音楽のサービスと違って、単独で収益貢献が期待される事業だ。

 だが、「キンドル・アンリミテッド」は開始直後に思わぬトラブルに陥った。アマゾン側の想定以上に利用が増えたために、1カ月後の9月初頭までに専門書や写真集といった比較的高額な本などが、読み放題の対象から相次ぎ外される事態となってしまったのだ。

出版社も電子書籍に期待

 不測の事態の背景にあるのは、アマゾンと出版社が結んだ契約だ。アマゾンはサービス開始当初から、読み放題の対象作品数を多くそろえようと、出版社に支払う利用料を2016年の年末まで上乗せする契約を締結した。

 読み放題の場合、一般的にはダウンロード数やダウンロード後に読まれたページ数などに応じて利用料が支払われるが、利用料を上乗せする今回の契約では、書籍や雑誌についてダウンロード後、全体の10%以上が読まれた場合に、1冊が売れたのと同じ収益を出版社に支払うことになっていた。アマゾンの予想を超えた読み放題の利用でダウンロードが増えたため、出版社に支払う金額が予算オーバーになったもようだ。

■出版社側も電子書籍に期待

 ある大手出版の幹部は「マーケティングに長けているアマゾンが需要を読み違えたのには、正直、驚いた」と述べ、次のように分析する。

 「出版各社の『キンドル・アンリミテッド』向けラインナップがかなり充実していたこともあって、消費者の食いつきが想定を超えたのだろう。以前は読み放題サービスへのコンテンツ提供に消極的な出版社が多かったが、紙の本の市場縮小が続く中で、電子書籍に活路を求める傾向が強まっている」

 アマゾン側は、出版社側に年内は続けると説明してきた上乗せ契約について、見直し時期の前倒しを求めており、複数の大手出版社からは「話が違う」などと不満の声が漏れている。

 最初は読み放題の対象になっていた作品が後から読めなくなれば、利用者の失望も大きいため、こうした事態の再発防止やコンテンツ入れ替えの最適化は重要な課題といえる。

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最終更新:9月21日(水)6時0分

東洋経済オンライン

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