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血液中のDHA濃度が高い人は、アルツハイマー病で見られる脳の異常が起きにくい

nikkei BPnet 9月21日(水)9時1分配信

DHAが脳へのアミロイド沈着を防ぐ

 心臓病などに有効とされ、市販サプリメントなどでも人気があるDHA(ドコサヘキサエン酸)が、認知症予防にも有効かもしれない。こんな研究成果が新たに報告された。

 九州大学の二宮利治教授らが2014年にまとめた認知症の高齢者人口の推計によると、高齢者に占める認知症患者の割合は約15%、予備群を含めると、実に4人に1人という高い比率になる。以前、日本では、脳梗塞などに伴う脳血管型認知症が多かったが、現在ではアルツハイマー病が最も多いとされる。アルツハイマー病では、脳に「アミロイド」と呼ばれるたんぱく質が溜まって神経細胞が破壊され、しだいに脳が萎縮してしまう。

 このほど、高齢者を対象とした米国の最新研究で、血液中のDHA濃度が高い人では低い人に比べ、脳にアミロイドが沈着しにくく、脳の萎縮も起きにくい可能性が明らかになった。

 DHAは、EPA(エイコサペンタエン酸)などと並ぶω(オメガ)-3不飽和脂肪酸の1つ。ω-3脂肪酸は魚などに多く含まれ、摂取量が多いと冠状動脈疾患や大腸がんなどが減少することが報告されている。体内で合成できないため、必ず摂取する必要がある。

 米国南カリフォルニア大学のフセイン・ヤシン氏らの研究グループは、ω-3脂肪酸の中でDHAに注目した。DHAは人の脳内に豊富に存在し、特に皮質灰白質と呼ばれる部分では、脂肪酸の30~40%がDHAだとされている。一方、EPAはほとんど脳内には存在しない。これまでの研究により、DHAを多く摂取するほど認知機能が良好であることが分かっているほか、細胞培養や動物実験などにより、DHAが脳へのアミロイド沈着を防ぐ働きがあることが示されていた。

 そこで今回、研究グループは、高齢者における血液中のDHA濃度と、脳のアミロイド沈着や脳の体積との関係を明らかにしようと考えた。

海馬と嗅内野の体積は、血液中のDHA濃度が高い人ほど大きい

 研究対象としたのは、2008年6月から2013年5月にかけ、認知機能と血管疾患の関係を調べるために実施された「脳加齢研究」に参加した平均年齢77歳の61人(男性20人、女性41人)。このうち30人は認知機能が正常、29人は認知機能障害が疑われるレベルで、2人は軽度認知機能障害と判断された。

 これらの人々に対し、DHAの血液中濃度とアルツハイマー病の関連を調べるさまざまな検査を実施した。【この研究で実施された主な検査項目】

・血液中のDHA濃度測定 ・アミロイドPET検査による脳へのアミロイド沈着の確認 ・MRI検査による脳の各部の体積の測定 ・神経心理学に基づく認知機能全般、言語的記憶、非言語的記憶の能力と実行機能の評価

 まず、脳におけるアミロイドの沈着を調べるためにPET検査を行ったところ、61人のうち23人がアミロイドの異常沈着あり(アミロイドーシス)と判定された。

 血液中のDHA濃度(血清中の総脂肪酸量に占めるDHAの割合)は、アミロイドーシスと判定された人では0.97%、アミロイドーシスではない人では1.25%と、アミロイドーシスの人の方が23%低かった。また、血液中のDHA濃度が高いほど、脳のアミロイド沈着量が少ない逆相関の関係も認められた。

 次に、DHAの血液中濃度と脳の体積の関係を調べたところ、アルツハイマー病の初期に変化が生じる場所で、記憶に重要な役割を果たす部位とされる海馬(かいば)と嗅内野の体積は、血液中のDHA濃度が高い人ほど大きかった。

 さらに、神経心理学的検査の結果と血液中のDHA濃度との関係を調べたところ、非言語的記憶(顔写真を見て人を思い出すような言葉によらない記憶)のスコアとDHA濃度の間に関連性があることが示された。ただし、そのほかの認知機能全体、実行機能、言語的記憶のスコアはDHA濃度とは無関係だった。

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最終更新:9月21日(水)9時1分

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