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西武・浅村栄斗が見たくなかった物。「足を引っ張ったという自覚はある」

Number Web 9月22日(木)18時1分配信

 「あれ、目に入るの嫌やった。打率も低いし、得点圏打率も悪いし……」

 浅村栄斗が苦笑する「あれ」とは、打席に入る際に球場の大型ビジョンに出る自身の成績である。

 今年から西武プリンスドームは、打率や本塁打数のみならず、得点圏打率や出塁率、盗塁数など打者成績を詳しく電光掲示板に表示するようになった。選手の「働き」が一目でわかる、観客にしてみれば非常にうれしいサービスだ。

 しかし今シーズン序盤の浅村にとっては、毎打席厳しい現実を突きつけられる時間だった。打席に入るたび、1割台後半の打率がいやおうなしに目に入った。

 8月、全試合に出場しリーグトップとなる5割の得点圏打率、そしてリーグ2位となる3割8分4厘の打率を残した浅村は、自身3度目となる月間MVPを受賞した。9月19日現在、打率は3割6厘。得点圏打率も3割目前まで持ち直している。

 「コツコツとヒットを重ねることができて、この数字までやっと来たという感じですね」

「だいぶ足を引っ張ったという自覚はあります」

 シーズン序盤の浅村は、打撃不振に苦しんでいた。打率は1割台で、なかなか2割にすら到達しない。得点圏にランナーを置いた場面でヒットが出ず、足元を見つめながらベンチに引き揚げるシーンが目立った。浅村だけの責任ではないが、チームの勝ち星も足踏み状態。首位のソフトバンクに大きく水をあけられてペナントレースを折り返した。

 「いい打順を任せてもらっている分、やっぱり自分のバッティングが大きく勝敗を左右する。だいぶ足を引っ張ったという自覚はあります」

 3番、5番、そして中村剛也がニ軍落ちしたときには4番を任されることもあった。主軸を打つバッターとしての責任感がズシリと肩にのしかかった。

気分を変え、フォームを変えて調子を取り戻す。

 初球から思い切りフルスイングする姿や、その豪快な打球からはイメージしにくいが、悩みや感情を胸にしまい込む性格である。

 「大丈夫、大丈夫」

 「そのうち打てるようになるよ」

 浅村の性格をよく知るベテランの上本達之や、大阪桐蔭高の先輩中村は、浅村が悩み過ぎないようにと、凡退して肩を落とす浅村にあえて笑顔で声をかけ続けた。

 浅村自身も「頭を空っぽにするために」と、試合前の練習にアメリカンノックを取り入れた。外野のポール間を全力でガムシャラに走り、ただひたすらに打球を追った。

 「対ピッチャーというより、フォームとかタイミングとか、そういう自分側のことを考え過ぎていましたね。アメリカンノックを受けたり、走ったりして頭をリセットしていました。下半身のキレを出すためという意味もありますけど、それをやり続けたのも夏場になってバッティングがよくなった理由のひとつかもしれません」

 そしてもうひとつ、8月に高打率を残せた要因がフォームの見直しだった。それまでよりスタンスを狭くして打席に立つようになった。

 「打ちに行くときに、足幅が広くなるクセがあったんですよね。そのせいで、真っ直ぐに差し込まれたり、回転できずに中途半端に振ってしまう打席が多かった。コーチのアドバイスもあって、もっと体の回転を意識しようと。足の幅を狭くすることで、踏み出したときのスタンスも以前より狭くなったし、体が回転しやすくなった。ピッチャーのボールに逆らわずに、右方向に打ち返せている、いい感触がありました」

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最終更新:9月22日(木)18時1分

Number Web

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