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いい土地は、買えない仕組みになっている 日本の家づくり、ココがおかしい! 後編<夢を叶えるデザイン住宅の建て方>

幻冬舎plus 9月23日(金)6時0分配信

鐘撞 正也(フリーダムアーキテクツデザイン株式会社代表取締役社長)

 人生最大の買い物である、マイホーム。住宅展示場に出かけても、いいモデルハウスはないし、かといって建築家に設計を頼むのは不安……と悩みは尽きません。
というのも日本の住宅市場は、安心して家づくりができる仕組みになっていないのです。今の日本の家づくりが抱えている問題点を、デザイン住宅において注文受注件数が全国№1の建築設計事務所・フリーダムの社長である鐘撞正也氏が解説します!  後篇は、土地ビジネスの仕組みについて。

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 家づくりにあたって、まず土地探しからという人も少なくありません。インターネットで検索したり、街の不動産仲介会社の店頭に張り出された販売図面を見たりしながら、案内をしてもらって候補の物件を見に行くというのが一般的だと思います。

 しかし、多くのお客様が実感していることですが、なかなか、これと思う土地は見つかりません。それは、たまたまよい土地に出合えなかったということでも、お客様の土地の探し方に問題があったということでもありません。私はそこに、現在の土地ビジネスの構造的な問題があると感じています。いい土地が買えない仕組みになっているのです。それはどういうことか――。

 日本の土地の流通を担う不動産仲介会社は、「売買代金の3%プラス6万円」を手数料として受け取る(取引額が400万円以上の場合の上限)というビジネスモデルで仕事をしています。

 例えば2000万円の土地を仲介したら、66万円が手数料収入になります(以下概算)。もし郊外に安価な500万円の土地があっても、契約に至ったところで手数料収入はわずか21万円です。しかも、土地価格は安くても、現地へお客様を案内するだけでも半日を費やしてしまいますし、仲介するためには権利関係の調査や現況の細かいチェック、売買契約に必要な書類の準備など、非常に多くの手間をかけなければなりません。
 安く手に入る土地は、土地を探している人にとって喜ぶべきものです。ところが購入者が喜ぶ安い土地は、仲介会社にとって手数料が低く魅力のないもの、という構図になっています。土地の仲介においては、お客様と仲介者の利益は相反している。これでは、安くていい土地が出てくるわけがありません。

 建築条件付きの土地販売が増えるのも同じ理由です。
 建築条件付きの土地販売とは、仲介会社が指定する建設会社で住宅を建築する約束がセットになった土地の売買契約です。将来、決まった会社と建築の工事請負契約を結ぶことを条件として土地の売買契約ができます。指定されている建設会社以外で住宅を建てることはできません。

 こうすることによって仲介会社は、土地を単体で扱うより建築を請け負う会社からマージンを受け取ることができるのです。2000万円の土地の仲介手数料が3%プラス6万円で66万円、それに加え、例えば建築費2000万円の3%にあた60万円を建設会社からマージンとして受け取ることができます。私の知り合いに不動産仲介会社のベテラン営業マンがいます。その会社のトップセールスといわれていて、年間50件、60件という土地の売買を仲介しています。しかし、その9割近くが建築条件付きとのこと。土地のみの仲介は数件しか行っていない。それほど土地単体の仲介は彼らにとって魅力がないのです。

 実は、建築条件付きの土地販売は、「抱き合わせ販売」として独占禁止法に抵触するものと考えられています。人気のゲームソフトは不人気のゲームソフトと一緒でないと買えない、昔はこういうことがよくありました。これと同じです。それでも「建築条件付きの土地販売」が行われているのは、契約書に次のような但し書きを付けているからです。
「この土地は、土地売買契約後3カ月以内に売主と住宅建築請負契約をすることを条件として販売する。この期間内に、住宅建築請負契約が成立しなかった場合契約は白紙となり、売主は受領した金銭を全額返却する」というものです。この一項があることで、建築条件付きの土地販売はかろうじて独占禁止法違反とみなされないのです。しかし、このことはほとんど知られていません。こうしたグレーゾーンともいえる取引形態が維持されているのも「土地だけでは儲けが少ない」という不動産業界の都合によるものなのです。

 せっかく見つけた土地を何とか活用したい、そんな気持ちで急いで3カ月以内に建築請負契約をしたい、と考えるのが土地の購入者の心情でしょう。建築条件付きの土地販売は、何とか土地を購入したいという建て主の足元を見たような仕組みといえるかもしれません。

 3カ月はあっという間です。プランは自由とはいうものの、見積の検討もしっかりと行わなければなりません。プランをやり取りし、それに合わせて何度も見積もりを取り直すような余裕はありません。結局、土地売買の時に示された、不動産会社が特に深い検討もせずに描いた「参考プラン」のようなもので建てるケースが多くなります。それでは、思い通りの家づくりにはなりません。こだわりのある家づくりは、ほとんどできないと考えた方がよいでしょう。

 確かに、建築条件付きの土地販売であれば、土地購入の後、改めて建設会社を探す必要がなく、土地購入という一度の手間で住宅建築まで進むことができます。そこに価値を見出すのならいいのですが、もともとは仲介手数料に何か上乗せしたいという不動産会社の思惑で考え出されたものであることは知っておいてもよいと思います。


■鐘撞 正也(フリーダムアーキテクツデザイン株式会社代表取締役社長)
1971年兵庫県出身。1995年に個人建築事務所フリーダム設計を設立。完全独立系設計事務所の中で、注文住宅受注件数が全国No.1(自社調べ)。書籍「身の丈コストでデザイン住宅を建てる。」「世界でたったひとつの間取りができるまで。」を刊行。雑誌「ゲーテ」で「鐘撞正也の住宅しゃべり場」を連載中。http://www.freedom.co.jp/

最終更新:9月23日(金)6時0分

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