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地図の起伏表現はこうして進化した、秘訣は「ありえない影」

ナショナル ジオグラフィック日本版 9月23日(金)7時20分配信

山を高く、谷を低く見せる秘訣

 絶景で有名なスポットが、まっ平らな大地だということはあまりない。そそり立つヒマラヤの山々から、大地が深く刻まれた米国のグランドキャニオンまで、並外れて美しいとされる地形には高低差がある場合が多い。平面に地図を描く人たちにとって、とりわけやっかいなのがこうした場所だ。

地図ギャラリー:起伏表現の歴史9点

 地図上に起伏を表現する技法は、その多くがコンピューターのなかった時代に、人々の試行錯誤の末に生み出された。

 現存する世界最古級の地図の一つは、4000年以上前のメソポタミアで作られたもので、土器の板の表面に刻まれており、山々は小さな半円形を連ねて表現されている。その後長い間、地図技法に大きな進歩は見られなかった。

 ルネサンス期になると、格段に洗練された技法が登場する。コンパスを使った地形測量が初めて行われ、高さが正確に測られるようになった。この時代に開発されたケバ図法では、線(ケバ)を描くことによって斜面の方向と勾配を表現する。1807年に製作された地図は、ケバ図法を用いてメキシコのオリサバ火山を描いている。

 ぼかし(レリーフ)法は、山などの垂直に伸びる地形が落とす影を模した陰影を、地図に表現する技法だ。初期の例としては、レオナルド・ダ・ヴィンチが手がけた美しいイタリア・トスカーナ地方の地図がある。

 ぼかし技法が頂点に達したのは、20世紀半ばのスイスにおいてであった。米国立公園局やナショナル ジオグラフィック協会に所属する米国の地図製作者たちは、本場で技術を学び、共同研究を行うために、頻繁にスイスに赴いた。

 豪ロイヤル・メルボルン工科大学のバーナード・ジェニー氏によると、スイスが当時開発した技法の中には、今も現役で使われているものもあるという。その多くを手がけたのが、チューリッヒ工科大学のエデュアルド・インホーフ教授だ。インホーフ氏が執筆したぼかし技法についての書籍は、1965年にドイツで初版が出版され、現在も地図製作に関わる人々の必読書となっている。

 インホーフ氏の業績の中でも特にすばらしいのが、山頂に立って地平線を眺めたとき、大気中のもやの影響で、遠くの山よりも近くの山の方がはっきり見えることを利用した点であるとジェニー氏は言う。インホーフ氏はこの現象を再現するために、地図を見ている側に、まるで衛星か飛行機から大地を見下ろしているかのように感じられる、上からの視点を与えた。「最も高い山は地図を見ている人間に最も近いため、はっきりとした強いコントラストで描き、逆に低い谷は最も遠いため、ぼんやりとした弱いコントラストで描くのです」

 インホーフ氏の手によるスイス・グラウビュンデン地方の地図には、この手法が生かされている。

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最終更新:9月23日(金)7時20分

ナショナル ジオグラフィック日本版

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