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日銀による金融政策の新たな枠組み

NRI研究員の時事解説 9/23(金) 9:47配信

はじめに

各種報道により読者の皆様も事実関係はご存知であると期待して、本コラムでは新たな枠組みの二つの柱に焦点を当てて、考え方や効果、意味合いなどを検討したい。

イールドカーブ・コントロール

最初に確認しておきたいのは、日銀が常時コントロールするのは、日銀当座預金の(マイナス)付利金利と10年国債の利回りであって、イールドカーブの中の「2点」だけである。実際、黒田総裁も、MPM直後の記者会見でイールドカーブ全体をタイトにコントロールしようとするものではないと明言した。

それでも、市場に憶測や未消化さが残るのは、おそらく次の事情によるのであろう。第一に、日銀が特定年限を対象とする指値オペを導入した点である。日銀が本オペを具体的にどう使うかは、現時点では明らかになっていない。しかし、上記の黒田総裁の発言が大きな方向性を示しているのであれば、この指値オペも-イールドカーブの強力なコントロールのためでなく-国債金利がvolatileになった場合に補助的に使用する可能性が浮上する。

第二に、総括的検証の内容を巡ってイールドカーブのsteepeningの議論が注目を集めた点である。本件はマイナス金利政策導入後の金融仲介機能の維持や金融機関収益への影響の緩和という、やや特殊な文脈で注目を集めてきた面がある。この点に関して、総括的検証の結果公表文や黒田総裁の記者会見は、確かに日銀としてこうした影響に十分留意すべき点を認めている。ただし、だからイールドカーブ・コントロールを使って意図的にsteepeningするとは述べていないし、長期~超長期の金利を抑制したことが政策効果を生んだ点をむしろ強調している。

このように「ソフトタッチな2点コントロール」を「イールドカーブ・コントロール」と称するのは過大表示の面もあるが、少なくともコミュニケーションの面ではネガティブなイメージの強かったマイナス金利を包摂し、必要以上にハイライトしなくて済む点では意味があるのかもしれない。

イールドカーブ・コントロールの運営には留意点がある。一つ目は緩和度合いの認識である。日銀は2点の金利に関する操作目標をMPMで決定する。最初の操作目標は-10bpと0bpとされたが、これは声明文も示唆するように、現状の緩和度合いを追認したものである。しかし、追加緩和が必要になった場合は、何らかの均衡値を参照した上で、それと新たな操作目標との「距離」を示すことで緩和度合いを認識することが、日銀自身が政策効果を調整するためにも、市場に対して効果を説明する上でも重要である。ただし、均衡値の推計には様々な手法があり、推計誤差も考慮すれば、ある程度の目安といった位置づけで考えることが現実的であろう。

二つ目は実際の買入れ額である。理論的には、市場が日銀の金利コントロールを完全に信じれば買入れ額ゼロもありうるし、極端な金利の先高感が生ずれば、買入れ額は膨張しうる。実際、指値オペに金額無制限物が用意されているのは、後者に配慮したものであろう。もちろん、当初は直近の市場で成立した金利を目標とする以上、局面が変わらない限り、従来と同じ額の国債を買えば同じ目標を達成しうると考えることはreasonableである。その意味で、最初のイールドカーブ・コントロールは、日銀の国債保有残高でみて年間80兆円の増加を伴うとの見立てがなされているのであろう。

その上で、中期的に国債買入れ額がどう変化するかは興味深いポイントである。量的緩和の限界論者が指摘したように、民間投資家の国債保有額が徐々に低下した場合、供給の価格(金利)弾力性が低下する結果、国債買入れ1単位当りの金利低下幅は大きくなりうる。だとすれば、日銀が10年金利の操作目標を維持するための国債買入れ額は減少傾向を辿ることが考えられる。ただ、この間にISバランスの変化や中短期投資家の脱落などによって、日銀を含む投資家別の国債保有シェア-年限別構成も含む-が変化した場合に、上記の弾力性がどう変化し、結果として国債買入れ額がどうなるかはアプリオリには明確でないように思うし、より詳細な検討が必要であるように思われる。

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最終更新:9/23(金) 9:47

NRI研究員の時事解説

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