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<茨城県北芸術祭>自然の中に点在するアート作品を訪ね歩くアートツーリズム

メディアゴン 9/23(金) 7:40配信

齋藤祐子[神奈川県内公立劇場勤務]

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「茨城県北芸術祭」が先週末から始まった。越後妻有、瀬戸内芸術祭に続き、豊かな自然の中に点在するアート作品を訪ね歩くアートツーリズム(兼、地方創生・観光振興)であろうか。

テーマは豊かな自然と対話する作品、あるいは日立鉱山などの産業遺構もある街にちなみ科学技術を使ったアート作品、その2つに焦点をあてている、という。

広い茨城県、南部は千葉・埼玉と接し都内への通勤圏内。一方北部は栃木・福島と接しており、海側は日立から高萩、五浦と福島県いわき市の手前まで、山側は水戸の上、常陸大宮などの奥久慈である。

海側と山側は山で遮られ、ここを横断するのは国道461のみで行き来はしずらい。モデルコースも、海側と山側でわかれている。さらにその中でもエリアごとに区切られている。見たい作品ありきでコースを組むと、本数の少ない公共交通、夕方には終わってしまう会場シャトルバスにはばまれる。レンタカーなどでも移動距離は長めなので注意が必要だ。

今回は海側の最北エリア、茨城県天心記念五浦美術館でのチームラボ1点狙いででかけた。とはいえ、現地に行くと欲が出る。できるだけ見て回ろうとして無理をするとかなり悲惨なことになる。

ここは、アートツーリズムの基本に戻り、ゆったりと自然を楽しむのが一番だろう。

さて、初日は昼から公開、という美術館に到着。広々とした駐車場にはミニ物産展のようにちょっとした物産と飲食の出店があり気分を盛り上げる。

手入れのゆきとどいた植栽の向こうに、ガラス張りの開放的な美術館が、海を見下ろす絶好のロケーションに建っている。名勝に建つ瀟洒な美術館、というわけだ。いいところである。

開場まで待つ間に、テレビカメラの取材もはいる。入り口ではダークスーツの一団と恰幅の良い政治家風のおじさまに「ようこそ」と迎えられたが、実行委員の県知事だろうか。

足早に受付でチケットを買い中にはいる。館内も充実しており、洒落たグッズを販売するコーナーやら、海を見下ろす素敵なレストラン、ちょっとした美術図書館や映像コーナーもある。正直、こんな雛の地にこれだけの美術館があるとは知らなかった。

さて、チームラボの新作である。チームラボは、ITを駆使したデジタル・アーティストの集団だが、昨年のミラノ万博日本館での古来の農村での生活をイメージしたデジタルアート作品など、日本古来の風景や花鳥風月、絵巻物や若冲の日本画などを題材に、デジタルでの新しい展開を試みる作品が多い。

新作「小さき無限に咲く花の、かそけき今を思うなりけり」は、お茶席を模した場所に置かれた抹茶碗の中にデジタルアートの花が咲き、碗をずらすと床に花が落ちて散ってゆき、また新たな花が抹茶碗の中に生まれていく、という風雅な作品である。

ここが岡倉天心(明治期に日本画の革新を目指してこの五浦の地に日本美術院を作り、またボストン美術館のアジアコレクションを監修、「BOOK OF TEA」などの本で日本美術や文化を欧米に紹介した)ゆかりの地であること、彼が西洋化の波の中で、日本画の革新と再興をはたしたことへのオマージュでもあるのだろうか。

チームラボをこの地の展示作家に選んだディレクターの意志を感じる。

近くにある天心遺跡(天心邸、六角堂、墓所など)にも他の作家の作品があり足を延ばしたが、そこには3.11で津波被害があり天心邸の庭先には津波の到達地点が示されている。

また海辺にある六角堂は流されて現在は復元されたものであるなどなど名勝を見ながらも近過去の歴史にも触れることになる。この先はいわきで、福島も近い。これだけ海に近ければ、高台以外は被害もあっただろう。

自然に近い名勝ということは、自然からの猛威からも無縁ではないのだから。

この日はシャトルバスの都合などで、見たかった作品の半分しかみることはできなかった。翌日仕切りなおした日立周辺でも、シャトルバスのルートがわからず、日立鉱山の産業遺構でもある日鉱記念館に寄れないなどアクシデントがあった。

しかし、この不便さも含めて都会を離れてわざわざ出かけていく地方の芸術祭の楽しみの一つでもあるのではないか。効率優先で駆け足で回るのではなく、なんどか出直しながらゆったりと名勝や歴史を調べ、当時に思いをはせながら回り、名物を舌でも味わってみる。

そんなせかせかしない旅をしに、北茨城?なにがあったっけ、といいながらもう1、2度足を運んでみるといいかもしれない。

ちなみに、車社会なのでウイークデーは日立など市街地は渋滞の恐れがあり、また都内に戻る上りも日によらず相当の渋滞となる。ルートと移動手段を何にするか、それなりに知恵を絞った情報収集と下準備が必要だろう。11月20日まで北茨城の各地で開催(https://kenpoku-art.jp/)。

齋藤祐子[神奈川県内公立劇場勤務]

最終更新:9/23(金) 7:40

メディアゴン

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北朝鮮からの脱出
北朝鮮での幼少時代、『ここは地球上最高の国』と信じていたイ・ヒョンソだったが、90年代の大飢饉に接してその考えに疑問を抱き始める。14歳で脱北、その後中国で素性を隠しながらの生活が始まる。 これは、必死で毎日を生き延びてきた彼女の悲惨な日々とその先に見えた希望の物語。そして、北朝鮮から遠く離れても、なお常に危険に脅かされ続ける同朋達への力強いメッセージが込められている。