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『貞子VS伽椰子』BD&DVD発売! 夢の競演&対決を描き切った鬼才・白石晃士監督を新人ホラー小説家が直撃!!

おたぽる 9/23(金) 20:00配信

 今年6月に公開され話題を呼んだ『貞子VS伽椰子』。Jホラーのレジェンドがまさかの共演&対決! てっきりギャグ路線かと思ったらマジで怖い! ……と無邪気なお子様からすれっからしのホラー愛好家まで、恐怖のどん底に叩き落としたのは記憶に新しいですね。そんな大ヒット作が早くも12月2日にBlu-ray&DVDで発売されるということで、監督の白石晃士氏にインタビューを敢行しました。

 ご挨拶が遅れましたが、今回取材・執筆を担当する、ホラー小説家の澤村伊智と申します。これまで白石作品を観て何度も震え上がったいちファンとして、そしてホラー界に足を踏み入れた新参者として、優れたホラーの作り手であり偉大な先輩である白石監督にお話を聞くことができて非常に光栄です。それでは早速インタビュースタート!


■VS路線のお祭り感はありつつ「ちゃんと怖く」

──『貞子VS伽椰子』は試写で、そして今回改めてDVDで拝見しているのですが、何度観ても素晴らしいと思うのが、本気で怖い映画になっているところです。ハリウッドならギャグ路線になってしまいがちな対決路線を、直球のホラー映画として成立させている。それは明確に意識されたんですか?

白石晃士(以下、「白石」) そうですね。「怖くしてくれ」っていうのは最初の段階でプロデューサーからも言われていて、私も強く同意しました。たしか「ちゃんと怖くないといけないと思います」という風に答えた記憶があります。ただ同時に、VS路線のお祭り感はシリアスな物語の中にもノリとして入れておきたいという気持ちはあって。それが後半の展開になっているのかなと思います。

――劇場公開時のインタビューを拝見すると、貞子と伽椰子のキャラクターをどう同時に出すか、という点で苦労されたと仰っていましたが、この点は?

白石 それは2人――まあ「2人」って言っちゃうとアレかもしれませんけど(笑)――のキャラクターの質が違うので、2人がバランスよく両方目立つように出そうっていうのは結構考えましたね。貞子の「呪いのビデオ」って、元々の設定だと「見たら7日後に死ぬ」ですよね。逆を言えば「その7日目までは死なない」わけですよ(笑)。元の『リング』はその間にいろいろ探っていると霊の気配がするのでちゃんとホラー映画にはなっていますけど。

 ただ、一方で『呪怨』の伽椰子は「家に入ったら死ぬ」――どんどん殺しちゃうわけです。最初から2人を出して「呪い殺す合戦」「殺したカウント勝負」にすると、どう考えても伽椰子が勝ってしまう。だったら伽椰子の登場は遅らせるしかない。そう判断して伽椰子の登場はクライマックスの直前にしました。それまでは俊雄だとか、あと近所の噂話だとかで「姿は見えないけど犠牲になった人はいる」という風にして、両者のバランスを保つようにした感じですね。

──設定もオリジナルから変更していますね。『リング』では呪いのリミットは7日でしたが、本作ではわずか2日です。

白石 貞子の呪いの「7日」というリミットは、『呪怨』のスピードに対してあまりにも長すぎるんですよ。なので最初は3日に短縮して脚本を書いていました。ですがそれでも作品の構成上うまくいかないことが見つかって。困っていたらもう1日縮めたら全て解決するのが分かったんです。「じゃあ48時間で!」ってことで2日になりました。すごい早いですけどね(笑)
 

■デッキとVHSとそのアナログの映像を、映画に残さなきゃいけない

――『リング』『呪怨』両シリーズは距離を置いてご覧になっていたそうですが。

白石 そうですね。『リング』はビデオで後から人に薦められて観ました。『呪怨』は劇場版公開の頃に最初のビデオ版を観たと思います。その頃から既に心霊ドキュメンタリーを作り始めていたので、「どんな恐怖表現があるかな」「霊的な怖い見せ方ってどんなのがあるかな」という興味があって、それで見ていましたね。要は仕事上の流れで見た感じです。当時『リング』にはそこまでハマりませんでしたね。怖いし面白いけど、自分の好みの方向性ではなかったので。

――ご自身の好みは洋画だそうですね。

白石 ええ、『死霊のはらわた』とか『遊星からの物体X』だとか。ホラーである前にエンターテインメントであるような作品がやっぱり好きです。エンターテインメントの中に、非現実的で不可解な要素が入っている映画が好きなんですね。逆に言えば怖くなくてもいいんです(笑)。面白ければホラーでなくてもいい。だから『死霊のはらわた』もショッキングではあるけど楽しいですし、『~物体X』も怖いけど、人間同士のやりとりが最高に面白くて、そこに美しい造形のクリーチャーが出てくるっていうのが映画的に面白いと感じるんです。要はエンターテインメントの1つの要素としてホラーが好きっていう感覚ですね。

――それは原体験というか、映画に興味を持つきっかけがそういう作品だったからですか?

白石 そうですね、最初に一番意識した映画が『ジョーズ』なんで。もちろん恐怖は描かれていますが、ユーモアもあるし超絶エンターテインメントだし、それに人間ドラマもあるし。おまけにキャラクターは立ってるし。自分の好きな要素が全部詰まってるんですよね。『ジョーズ』に受けたショックとワクワク感は相当デカいです。

 あと中2の夏休みに観た『狂い咲きサンダーロード』と『ファントム・オブ・パラダイス』がきっかけで映画っていうものにハマりました。後は再放送で観た『必殺仕事人』シリーズの初期が大好きです。原体験的にはその辺りを観た時の感情がミックスされている感じですね。今現在もそれに近い作品を作っているつもりです。

――ここからは本編内容の話を。序盤「現代でビデオデッキを入手する」シーンが続くのが印象的でした。「呪いのビデオ」を改めてちゃんとやっているというか。それは監督のご意向ですか?

白石 そうです。私が参加したときに既にあったプロットでは、たしかDVDに焼かれた映像か何かだったと記憶しているんですが、VHSとかビデオデッキとかは無くて。でも貞子をやるんだったら一番最初のVHSはやりたいなと思いました。あとVHSが消えそうになっている今――それこそデッキの生産もついこないだ終了したというニュースがあった今現在なら、なおさらデッキとVHSとそのアナログの映像を、そのノイズも含めて映画の中に残さなきゃいけない。そういう風に誰かに言われている気がしたんです。だから「絶対出そう!」と思って出しました。

──女子大生がリサイクルショップでビデオデッキを購入すると、中に変なVHSが入っていて……という展開にとても説得力を感じました。

白石 ちょいちょい行くんですよ、リサイクルショップ(笑)。「何かいいもの眠ってないかなあ」って。実際、店の隅っこの方にビデオテープとか置いてあるんですよ。DVDとかも。中には変なものもあったりして。それがあの展開の元になってるんです。

――変なものって何ですか?

白石 すみません、ここではちょっと言えないんですけど(笑)。インディーズ的に出された、販売してはいけないVHSのソフトですね。衝撃の映像でしたよ。「こういうものがあるんだな」って思いました。

──購入されたんですね(笑)。その後、貞子の呪いがネットを介して全世界に拡散されることが仄めかされています。あれも確固たる意志というか、現代ならやるべきだという信念を感じたのですが。

白石 ええ、現代でネットから逃げるわけにはいかないので。ネットに拡散すれば世界には広がるよなと。描いてはいませんけれど、おそらく世界は滅亡しています。
 ただあんまりネットの描写をやるのは映画では面白くないと思ってるんですよね。だからちょっとだけに留めているんですが。

――面白くない、というと?

白石 ネットを映画で表現するってなると、モニター、画面を見せるってことになっちゃうんです。映像表現として面白くない。現実世界を見せた方が絵ヅラとしての要素はいっぱいあるじゃないですか。ネットに限定してネットと人間とのやり取りになってくると、絵ヅラは面白くないし、人間のナマの動きも少なくなっちゃうので、映画的にはすごくしょぼくなってしまうんですよね(笑)


■「怖い」って思いながらも「やっと来た!」というバランス

――伽椰子の登場シーンはグッと来ました。ですが、じわじわと盛り上げてドーンと来る演出は、いわゆるJホラーっぽくはないですよね。

白石 伽椰子の下りは「ワクワク感」ですよね。皆さんがイメージしているJホラーって、「ワクワクしないホラー映画」なんですよ。『リング』はワクワクしない。確かにゾッとします、ドキドキハラハラもします。でも「この先何があるんだろう、ワクワク、ドキドキ」とは違うんですよ。お祭りの高揚感はない。でも私はそういうワクワク感はどの作品にも込めたいと思ってて。特に貞子VS伽椰子って企画はそういう要素がないといけない。

 だから伽椰子がなかなか出てこなくて、待ち侘びて、やっと出てきた時に「うわっ、ついに来た!」みたいにテンションが上がる感じにしたかったんです。もちろんシンプルに「怖い!」って思う方もいらっしゃると思うんですけど、その両方――「怖い」って思いながらも「やっと来た!」って思うみたいな、そういうバランスで行けたら一番いいなと思って作りましたね。

――試写で観た時なんですけど、伽椰子登場のくだりで、隣で観ていた青年があまりの恐怖と興奮のせいで呼吸困難になってて(笑)。完全に監督の演出にハマッていましたね。

白石 あははははは! それはうれしいです。

――貞子と伽椰子をぶつけるアイデアは監督が参加される以前からあったそうですか、その先をどうするかで苦労されたとか。

白石 ええ、元あったプロットはけっこうごちゃごちゃしてて、予算的にもハマらないものだったので、それをすごくシンプルにして、キャラクターも変えて。私からすれば「現実に当てはめた」ってことでしかないんですけど、それでいて面白くなるようにした感じですね。

――ヒロインがみんな魅力的だったのですが、これは可愛く撮ろうという監督のご意向ですか?

白石 そもそも本人たちが可愛いですから(笑)。もちろん美しく撮らなきゃってのはありますけど、それ以前に美しい人をそろえなきゃってキャスティングの時点で思っていたので、可愛い子が揃ってよかったです(笑)

――キャストの印象をキャラクターに盛り込んで脚本を書かれた、という話ですが。

白石 ええ、事前に会うことができたのでそれはやりました。現場によっては衣装合わせで初めて会って後は現場で、みたいなケースもあるんですが、幸い今回はそれより前に会って話す機会があって。で、その時の感触みたいなものを脚本に盛り込みました。特に主演の山本美月さんと玉城ティナちゃんは本人の印象をけっこう脚本に反映しています。


■童心を大事にして、ワクワクする映画を作っていきたい

――ここからは過去の白石作品を踏まえた質問をさせてください。後半から胡散くさい霊能者・経蔵(安藤政信)が登場しますが、これは監督の『カルト』に共通するものがあります。『カルト』も後半「ネオ」というチャラい霊能者が出てきますよね。

白石 経蔵も私が参加する前のプロットに、既にアイデアとしてありました。「男性の霊能者」っていう風に。彼がハリウッド映画っぽく霊能力を使って、ファンタジー路線で活躍する風に書かれていたんです。そこにネオに通じるものを感じたので、結果的に近いものになったという流れですかね。

――霊能者だとか、あと除霊、お祓いといったオカルト的なことがお好きなんですか?

白石 昔の心霊番組で観た記憶が脚本書いてる時に出てくるんじゃないかと思います。あと、除霊やお祓いって、一箇所で場面を盛り上げることができるんですよね。緊張感さえあればシーンを持続させることができる。映画の撮影ってシーンが多くなればなるほど移動時間とお金がかかりますよね。まあ私みたいに低予算でばかりやってる者人間は「1シーンを長く面白く見せて」、「移動、撮る場所を少なめにして」、「密度を高める」っていうやり方で脚本を書いて撮影するんです。お祓いのシーンっていうのはその最たるものです。

――なるほど、効率化というかコスパというか。

白石 ちなみに最初に書いた脚本では、佐渡川さんがお祓いを受けていたぶられる様がもっと長かったんですよ。悪霊にやられる前に死ぬんじゃないかってくらい苦しみまくってて。それで山本さんが止めに入ってビンタされるって流れだったんですけどね。そしたら「長すぎる」と指摘されまして(笑)。「幽霊関係ないですよね」って(笑)

──長く面白く密度を高めすぎたわけですね(笑)。本作について、監督は各所で「子どもに見て欲しい」と発言されていますが、この点を詳しく教えていただけますか?

白石 自分はワクワクする映画を作っています。童心を大事にして、童心に戻って作っているんです。仲間である子ども、特に小中学生に向けて作ってると言いますか、実は子ども以外に向けて作っていないというか。子どももしくは「子ども心をもっている大人」。あるいは「大人の中にある子ども心」に向けて撮っていますね。知性理屈をこねくりまわしたような、小難しい映画は作りたくないんですよ。単純に面白いとか、「ウワーッ」て気持ちになって、それプラス見た後に心に残るものがある、そういう映画を作っているんです。子どもが見て楽しいって映画にとってすごく大事なことだと思ってて、そこは忘れちゃいけないと考えています。

――一方で『ノロイ』『口裂け女』そして本作と、子どもが痛い目に遭ったり、傷付いたりするシーンを臆せず描いてらっしゃいますよね。子供の観客を意識しつつ、劇中で子供を傷つ付けるのはどうしてでしょう?

白石 子ども相手に幼稚なものを見せるわけにはいきませんから。自分が小学生の時でも、例えば『デビルマン』とか初期の『必殺』シリーズなど暴力的で残酷な作品を楽しんでいました。子どもだからって幼稚なものを見せるのは、子どもを馬鹿にしてるのと一緒だと思います。「子どもがヒドい目に遭う」なんて普通にある。そこに嘘は吐きたくないんです。

――子供だからって安全圏にはいないよ、と。

白石 むしろそういうシーンは見せた方がいいとすら思っています。自分としてはちっちゃい子どもがたくさん人を殺す話とか作りたいんですよね。だって『漂流教室』とか少年マンガ誌で連載されてたじゃないですか(週刊少年サンデー)。ああいうものが当たり前だと私は思ってるので。子どもが殺される話をやりたいんですけど、やらせてもらえないんですよねえ(苦笑)。でも、中盤で俊雄が大活躍して子供をバンバン殺すのも、あるいはその気持ちがあったからかもしれません。俊雄も伽椰子も、子どもに対して容赦するわけないですしね。それは必然です。嘘を入れてはいけない。

――『ジョーズ』のサメも同じですね。最初に襲うのは若い女性ですし。子どもが殺したり殺されたりする白石作品、自分も観てみたいです! 本日はありがとうございました!

白石 ありがとうございました。

――山本さんは、前半は完全にもらい事故というか、とばっちりでヒドい目に遭ってばかりですが、後半はヒロイックな立ち回りもしますね。

白石 彼女本人はサバサバした性格なので、その印象からですね。あと男っぷりのよさも感じたので、それを盛り込んでみました。玉城さんは大人しい性格で、内向的な印象を受けました。その一方で真面目で誠実な感じがしたので、それをキャラクターに落とし込みました。

――佐津川愛美さんは全編を通じて余計なことしかしていないキャラクターを演じていましたが、ひょっとして彼女自身が点…?

白石 いやいや(笑) 彼女は最後の方に決まったので、出来上がったキャラクターを演じてもらった感じですね。彼女自身はあんな性格じゃありません(笑)

 彼女がああいうキャラクターになったのは、人間の愚かさみたいなものを描くためでもあります。基本的にはみんな真面目に動いてるんですけど、結果的に最悪のチョイスしかしていない。見ている人、特に子供が「こうなっちゃダメだぞ」と、反面教師にしてくれたらいいですね。

■『貞子vs伽椰子 プレミアム・エディション』
12月2日発売
価格:Blu-ray 5,800円、DVD 4,700円(税抜き価格)
Blu-ray:GNXD-1034 DVD:GNBD-1589
本編DISC1枚+特典DISC1枚(メイキング映像ほか)
発売元:NBC ユニバーサル・エンターテイメント/KADOKAWA
販売元:NBC ユニバーサル・エンターテイメント
(C)2016『貞子 vs 伽椰子』製作委員会

■白石晃士
1973年生まれ。映画監督・脚本家。『ノロイ』『口裂け女』『カルト』『戦慄怪奇ファイル コワすぎ!』シリーズなど作品多数。

■澤村伊智
1979年生まれ。小説家。 デビュー作『ぼぎわんが、来る』、第2作『ずうのめ人形』(ともにKADOKAWA)発売中。

最終更新:9/23(金) 20:00

おたぽる