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映画『ハドソン川の奇跡』:クリント・イーストウッドとトム・ハンクスが描く英雄パイロットの物語

ローリングストーン日本版 9月23日(金)12時0分配信

クリント・イーストウッド監督とトム・ハンクスが、実在の航空事故"ハドソン川の奇跡"を再現し、英雄になることの意味を問う。

【予告編はこちら】映画『ハドソン川の奇跡』:クリント・イーストウッドとトム・ハンクスが描く英雄パイロットの物語

トム・ハンクスが航空パイロットを演じた映画『ハドソン川の奇跡』は、ややもすると勘違いされやすいかもしれない。

2009年1月15日、航空パイロットのチェズレイ・サレンバーガーは、エンジンを喪失した航空機を凍てつくようなハドソン川に不時着水させ、搭乗していた150人の乗客と5人の乗組員の命を救い、英雄となった。もしもあなたが、本作を賞狙いのくだならい伝記映画と想像しているならそれは間違いだ。なぜならば、クイント・イーストウッドは大概そんな愚かなことはしない。(『アメリカン・スナイパー』を見た?)そして、表面的なトップ記事のごとくサレンバーガーを演じるには、トム・ハンクスという俳優は忠実で大胆すぎる。本作は、英雄と掲げられることを受け入れられない男の恐怖、自らへの疑惑を深く掘り下げることで、観客の注目と関心を集めるのだ。これには目を見張る。

公式な記録によれば、USエアウェイズ1549便は、ニューヨークのラガーディア空港から離陸した3分後、複数の鳥(カナダガン)と衝突し、2機のエンジンを喪失した。サレンバーガーは即刻、 副操縦士のジェフリー・スカイルズ(演じたアーロン・エッカートが素晴らしい)に解決策を検討させる。彼らは、ラガーディア空港、近くのニュー・ジャージー州テターボロ空港に墜落せずに辿り着くことができただろうか? サレンバーガーは、わずか208秒という限られた時間で「ハドソン川に着水する」と決断する。サレンバーガーは、ヘリコプターや警察や消防士やフェリーが直ちに救出に駆けつけられるミッドタウン沿いに着水ポイントを定めた。

IMAXカメラによる鬼気迫るシーンの数々

イーストウッド監督は、IMAXカメラを駆使し(撮影監督のトム・スターンに賛辞を送る)、鬼気迫る機内や救助シーンであなたを釘付けにする。しかし、そういった胸の高鳴るシーンだけで、映画全体を持たせることができるだろうか? そうは思えない。そこでイーストウッドと脚本家のトッド・コマーニキは、"ハドソン川の奇跡"と呼ばれる大惨事の後の余波を描いているのだ。公の場で、サレンバーガーはメディア、政治家、彼を崇拝する人々から質問攻めに遭う。さらに内心で、もしも不時着に失敗していたら起きたであろうゾッとするような幻覚にも悩まされていた。やがて、サレンバーガーは妻のローリー(ローラ・リニー)との電話で自分の決断に確信を持つ。

しかし、40年以上の経験に基づいたサレンバーガーの判断は国家運輸安全委員会から嫌疑をかけられ、サレンバーガーとスカイルズは執拗な尋問を受ける。国家運輸安全委員会による公聴会は救出劇の直後ではなく、事故から18カ月後だった。ではなぜ、嫌疑は覆ったのか? それこそが本作のテーマであり、経験の重さや直感がコンピュータによる計算・推測を凌駕するということ、そしてそれはそう遠くない昔、人間性が何でもデジタル化されてしまう以前は当たり前のことだったかもしれない。

映画『ハドソン川の奇跡』は、それぞれのキャリアで絶頂を迎えているイーストウッドとハンクスにとって、紛れもなく思い入れの深い一本だろう。ハンクスの芝居は素晴らしいもので、謙虚な男の大胆な所業に見事に調和し、特別な意味合いをもたせている。ハンクスは、『フィラデルフィア』と『フォレスト・ガンプ/一期一会』の演技で2度のオスカー(主演男優賞部門)を獲得しており、『ビッグ』『プライベート・ライアン』『キャスト・アウェイ』で3度ノミネートされている。驚くべきことに最後の受賞から15年も経っているのだ。何てことだ! アカデミー会員たちはハンクスの偉業を当たり前だと思っているのだろうか? 彼らは、『ロード・トゥ・パーディション』や『キャプテン・フィリップス』や『ブリッジ・オブ・スパイ』を見たのだろうか? ハンクスの手にかかると、不可能と思われることさえ楽々こなしているように見えるのだ。サレンバーガーの人柄を知るための回想シーンはわずかしかないが、そこに特別な弁明はない。そんな限られた状況でも、類稀なる才能の持ち主ハンクスは観客が知るべき全てのこと、サレンバーガーという男の実像を見事に表現しているのだ。これは第1級の演技力といえる。

本作は、まさにサレンバーガーが重んじていること、"最高の仕事"と呼ぶに相応しいだろう。

9月24日(土)丸の内ピカデリー、新宿ピカデリー他全国ロードショー。
http://wwws.warnerbros.co.jp/hudson-kiseki/

Translation by Sahoko Yamazaki (RSJ)

Peter Travers

最終更新:9月23日(金)12時10分

ローリングストーン日本版

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