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「ミツバチ問題」は農薬規制だけでは解決しない

JBpress 9/23(金) 6:00配信

 日本における養蜂とはちみつの過去、現在、未来に目を向けている。

 前篇ではその過去の歩みを追ってきた。大きな流れは、養蜂については、江戸時代までのニホンミツバチを利用した伝統的手法から、明治以降のセイヨウミツバチや欧米の用具を利用した近代的手法へ、というもの。はちみつについては、薬用から食用のはちみつへ、というものだ。大きな転換を日本は経験した。

「耕作放棄地のお花畑化プロジェクト」の写真

 近代的養蜂は戦後も続いていった。ところが、突如として2000年代半ば「ミツバチの大量消滅」が日本を含む世界で起きていると伝えられるようになった。各国の政府や研究機関が真相解明を進めるなかで、「ネオニコチノイド」という殺虫剤を用いた農薬が、ミツバチ大量消滅の原因となっている可能性を指摘する声が高まってきた。

 最近の報道では「農薬が原因。だから農薬の禁止を」といった単純な構図で伝えられることが多い。だが、ネオニコチノイド系農薬を禁止すれば、ミツバチの未来は安泰なのだろうか。

 後篇では、ミツバチ研究をする研究者に、ミツバチ減少問題をどう考え、なにに取り組むべきなのか聞くことにした。応じてくれたのは、玉川大学ミツバチ科学研究センター教授の中村純(なかむら・じゅん)氏だ。行動生態学や生産物などを対象に、幅広くミツバチを研究してきた。長年ミツバチと接してきた研究者の目に、現状はどう映っているのか。

■ 欧州ではネオニコチノイド系農薬を規制するが・・・

 ミツバチは、花の蜜から作るはちみつや、花の雄しべに付いている花粉を餌に繁殖する。働きバチがもたらす花由来のこれらの餌は、巣にいる女王蜂の産卵や、孵化した幼虫が成長するための共有物となる。

 一方、ミツバチのこれら生産活動を人間が効率的に利用し、はちみつや交配用ミツバチを得るのが「養蜂」だ。養蜂家は、アカシア、レンゲ、ミカンなどの蜜源植物が生息する場所にミツバチを運んで、花の蜜を集めてはちみつを作ってもらう。南北に長い日本列島で、目的の蜜源となる草木を追いかける転飼養蜂と、次々と花が咲くような生物多様性の高い土地で多様なはちみつを生産する定飼養蜂があり、養蜂業者はこれらの方法でさまざまなはちみつを生産してきた。

 ところが、養蜂を続けられるのかと心配になるような出来事が報じられた。「ミツバチ大量消滅」だ。欧米では2000年代から、働きバチが大量失踪し、群れを維持できなくなる「蜂群崩壊症候群」が問題化。日本国内では、蜂群崩壊症候群とは認められないものの、2008年から2009年にかけてミツバチの群数が減少し、花粉交配用ミツバチが不足するなどした。

 今回のミツバチの大量消滅と同時期に使用が増えた農薬が、ネオニコチノイド系だった。因果関係が疑われ、2012年3月には、科学誌『サイエンス』オンライン版に、ネオニコチノイド系殺虫剤への暴露がミツバチの高い致死率を引き起こすとする研究結果などが報じられた(Science 2012; 336(6079): 348-50.)。

 2013年12月、欧州連合は「予防原則」の観点から、ミツバチが好んで訪れる作物へのネオニコチノイド系農薬3種を使用禁止とした。日本では現在のところ、カメムシなどの害虫に対する防除効果があることを理由に、農林水産省はネオニコチノイド系農薬の使用規制をしていない。

■ 農薬だけ悪者扱いは「全体を見たつもりになっている」に過ぎない

 玉川大学教授の中村純氏は、「ネオニコチノイド系農薬の使用規制でミツバチを救えるか」という解説記事を2015年『日本農薬学会誌』に寄稿した。

 この疑問文のタイトルに対する中村氏自身の答えは懐疑的なものだ。農薬だけが悪者にされている状況を、「関係者が切り分けたパイの中身だけで全体を見たつもりになっている」とたとえる。

 農薬のミツバチへの影響を否定してはいない。農水省が2016年7月「カメムシ防除に使用された殺虫剤に、蜜蜂が直接暴露したことが原因である可能性が高い」などとする「蜜蜂被害事例調査」の結果を公表したが、中村氏は「『可能性が高い』ではなく、原因であることは分かっていること」と話す。「農薬には水和剤と粉剤があるが、ラジコンヘリで散布するのに軽くて適した粉剤のほうの影響が、特に出やすいことも分かっています。水田の畦に生えているクローバーはミツバチの好物ですが、それが高濃度で農薬に汚染されているために影響が出ていると見ています」。

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最終更新:9/23(金) 6:00

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