ここから本文です

ベネッセ、わずか3か月で社長交代……生き残りのカギは「IT化」と「グローバル化」だ

HARBOR BUSINESS Online 9/23(金) 9:10配信

 アップルコンピュータ、日本マクドナルドHDなどの社長を歴任した”プロ経営者”の原田泳幸氏が今年6月に退任したベネッセホールディングス。しかし、後任の福原賢一氏もわずか3か月で辞任。次期社長にはファンド出身の安達保氏が決まった。

⇒【資料】ベネッセ当期純利益

 そんなベネッセの経営状況は最悪だ。最大3500万件とも言われる顧客情報漏洩の問題を起こした’14年期に続いて’15年期も最終赤字。’16年第1四半期は今まで黒字を保っていた営業利益さえも赤字に転落した。ボロボロのベネッセの現状を数字で読み解くとともに、明るい未来を切り開く道はないか本稿で模索していきたい。

◆昨年比2ケタ減が続く国内教育事業

 まず、本業であり総売上高の半分を占める「進研ゼミ」をはじめとする国内教育事業の苦境は明らかだ。小・中・高いずれの講座も昨年比2ケタ減が続いている。

 一昨年の顧客情報流出も痛恨の極みだった。300億円もの特別損失を計上し、経常利益の段階では260億円の黒字だったはずが、最終赤字に陥ってしまった。しかし、何より、危ういのは大きな特別損失がなかった’15年期でも普通に赤字決算になったことだ。

◆「介護」「海外」「教育」という成長の柱

 投資家向けに自社の戦略を示す「決算説明会資料」にも記載されているベネッセの今後の成長の柱は「介護」「海外」「学校」(学校向け教育事業、BtoB)の3つだ。

 介護・保育事業は増収増益続きで、売上の規模も全社の20%を占めるほどにまで成長したが、ポテンシャルが大きいはずの「海外」がパッとしない。中国・台湾で幼児向け通信教育を手がける海外事業は伸びたものの、その倍の売上高があるベネッセUSAは直近の四半期で19.8%も減収。あまり順調とは言えない。

「海外」以外で本当に注力すべきなのはIT化である。近年、Edtechと言われる、教育・学習コンテンツのITサービス化は著しく、さまざまなベンチャー・大手企業の新規事業部門が参入している。「スタディサプリ」や「schoo」などのオンライン動画教育や、「レアジョブ」「DMM英会話」などのオンライン語学学習が代表例だ。

 ポテンシャルは数兆円とも言われるこの成長産業への参入はベネッセへのチャンスであると同時に、放っておけば既存顧客を新興プレイヤーに奪われるピンチでもある。ベネッセは’14年や’15年には、海外の動画教育サービスと提携したり、「Edtechラボ」というスタートアップ支援私設を作るなど、ベンチャーとの交流を深めていた。リクルートが最終的に買収した「Quipper」という教育ベンチャーにも出資していた。

 しかし、先ほど挙げた直近の決算説明会資料にも有価証券報告書に、「Edtech」の表記は1文字もない。戦略の柱にする気はまったくなさそうだ。

 顧客データ漏洩により会社の信頼度が下がったのも間違いなくベネッセの苦境の一因だが、根本的には人口減少社会とIT化という巨大なトレンドが同社の衰退要因だ。海外に活路を求めるか、IT企業になる覚悟でやるしか道はない。

◆ベネッセは「リクルート化」すべき!?

 参考にすべきは、やはりリクルートだろう。同社も国内向けの様々な情報誌で稼いでいるが、人口減少社会を前提に、まだ国内の媒体がまだ稼げているうちに、海外買収をしまくるという戦略をとっている。国内最大の広告代理店である電通も同様で、総利益ベースでの海外比率がすでに50%を超えるほど熱心に海外企業を買っている。

 リクルートや電通とは売上や保有現金が3倍ほど小さいとはいえ、ベネッセに見習える点はあるはずだ。

 しかし、ベネッセは900億円もの現金をうまく使えていない。「ベルリッツ」「東京個別学院」「鉄緑会」など既存の教育機関の買収は積極的に進めてきたが、海外・ ITという領域では存在感がない。

 ベネッセの自己資本比率は30%台で結構銀行からの借入も多く、60%台のリクルートと比べると台所事情は苦しい。お金を使うのには慎重にならざるをえないのだろうが、900億円もの現金を持っていることは確かなので、覚悟を決めてITベンチャーと海外企業を買収したほうが良い。例えば、すでに上場した企業だが、オンライン英会話で国内No.1との触れ込みの「レアジョブ」の時価総額は40億円足らずだ。

 おそらくベネッセ内部には今後、会社を支えるのに必要となる人材があまりいないのではないだろうか。教育業界の発展や変革に情熱を燃やす人はいるだろうが、スタートアップ業界に詳しかったり、海外でビジネスができる人が全然足りていないように見える。(もっともそれは多くの日系大企業に言えることだが)。事業買収は人材獲得の意味合いも持つ。自前でできないなら、できる人を買収して呼び込めば良い。

 さて、新社長の安達保氏はそういった戦略を取れるのだろうか。安達氏はマッキンゼーを出た後、カーライルという再生ファンドでの経験が長い。同社で安達氏が主に手がけてきたのは飲食店や食品会社だ。これらはIT化から距離のある業界だ。ベンチャーについてはあまり詳しそうではない。投資先の海外展開を積極的に進めたという実績もなさそうだ。どういう戦略が打ち出せるか、不透明だ。

 新社長は、前のクックパッドの社長だった穐田氏のような人物が理想的だったのではなかろうか。安達氏と同じマッキンゼー出身だが、カカクコムやクックパッドといった日本最大級のITサービスの会社で社長として事業を急拡大させた経験があり、ベンチャーの買収も手慣れている。

 クックパッドでは海外企業の買収とその後の事業成長という海外展開も経験した。穐田氏は1月から創業者の佐野氏に「お家騒動」を起こされ、追い出される形で最近クックパッドを去ったばかりだった。タイミング的にはベネッセへの転身もありえたように思える。

 いずれにしても、ベネッセが思い切った策によって伝統的な日系大企業から脱皮できるのかどうか注目である。

【決算書で読み解く、ビジネスニュースの深層】

<文/大熊将八>

おおくましょうはち○現役東大生にして、東大・京大でベストセラーの企業分析小説『進め!! 東大ブラック企業探偵団』(講談社刊)著者。twitterアカウントは@showyeahok

ハーバー・ビジネス・オンライン

最終更新:9/23(金) 9:59

HARBOR BUSINESS Online

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

北朝鮮からの脱出
北朝鮮での幼少時代、『ここは地球上最高の国』と信じていたイ・ヒョンソだったが、90年代の大飢饉に接してその考えに疑問を抱き始める。14歳で脱北、その後中国で素性を隠しながらの生活が始まる。 これは、必死で毎日を生き延びてきた彼女の悲惨な日々とその先に見えた希望の物語。そして、北朝鮮から遠く離れても、なお常に危険に脅かされ続ける同朋達への力強いメッセージが込められている。