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市場飽和で注目! 知られざる[高齢者向け]不動産の実力とは?

HARBOR BUSINESS Online 9月23日(金)9時10分配信

◆多様化する不動産業界、オーナーの次なる戦略とは!?

 空室率の増加やニーズの多様化により、不動産オーナーに求められる戦略も変化してきている。シェアハウスが可能な物件はもちろんのこと、DIYが可能な物件、民泊可能な物件など既存の賃貸では難しかった条件も可能な物件も登場。こういった不動産の多様化には、儲かるからというよりも、「多様化させないともはや儲からない」というオーナー側の苦労が見て取れる。

 今回、新卒で入社した不動産仲介会社を25歳の若さで退職、65歳以上の老人専用不動産「R65不動産」をたった1人で立ち上げた山本遼代表を取材し、不動産オーナーの新たな戦略について伺った。

◆「誰に貸すか」を再度考えなおす時期に

 国内都市部の物件数は現在、都市規模に対して飽和しつつある。新しく建てたくても土地がなく、建物を立て替えにより更新するか、より郊外で物件を見つけ再開発するかになりつつある。

 特に個人オーナーとなれば、金銭的リスクがとれず、ハードにお金をかけることができないケースが多い。そのため、個人オーナーは「建物をそのままで、誰に貸すか」を再度考えなおす時期に来ているのだ。

 山本氏は一般的な仲介業務を経験したが、現場で高齢者向け不動産のニーズを痛感した出来事があったという。

「私が勤めていたころの不動産会社では一定以上の年齢の顧客をほとんど断ってたんです。高齢者の場合、若い世代が引っ越しするよりも日程が多くかかるし、内見の回数も多い。まぁ、はっきり言って面倒くさいからです」

 そのときに、ぽろっと聞こえたのが「これで5件目なんだけどなあ」という80歳の高齢者の発言。当時、山本氏はその言葉にショックを受けたという。

「もしかしたら高齢者向けに不動産を仲介したら、大きなニーズがあるのでないかと感じたんです」

 ここから山本氏は、高齢者向け不動産仲介のニーズをリサーチしはじめた。定年退職を機に東京から地方に移住したけれども失敗して戻ってきた「田舎出戻り」高齢者にも会い、そのニーズを聞き出した。

◆都心に住む高齢者は多いのに、物件が足りない!

 都心に住む高齢者は年々増加しており、山本氏もその潮流を次のように語る。

「’13年に総務省が発表した『住宅・土地統計調査』の調査結果を見ても、65歳以上の実に17%が賃貸契約で生活しています。しかし、オーナーは旧来の常識にとらわれ、指をくわえて若い世代が入居するのを待っているのが実情です。

 東京都内23区に限ると、65歳以上で賃貸を借りようとした場合、借りられる部屋は全体の市場の中で1.3%しかないんですね。200件を見て、ようやく3件ほどが候補に上がる程度。これでは需要に合っていないのは明らかです」

 今後、人口比率で4人に1人、ないしは3人に1人が高齢者になってくるのに、1.3%というのは時代に即していないと言わざるをえない。

◆なぜ、高齢者に貸さない?

 なぜ、こうしたミスマッチが起こっているのだろうか。その原因を山本氏は次のように分析する。

「そもそもこれまで、65歳以上の世代が部屋を借りる慣習がなかったのがまず最大の要因ですが、もう1つ原因として挙げられるのが、高齢者に多い孤独死のリスク。一般的に孤独死は、物件価値を著しく下げるとされ、オーナーとしてもそのリスクを避ける傾向が強いんです。

 しかし、時代は高齢社会。人口動態が変わりつつあり、高齢者の不動産ニーズは日に日に高まっています。そうした状況下であるからこそ、オーナーは高齢者に目を向けるべきです」

 まだまだ高齢者に対して部屋を貸す事業者が少ないからこそ、今後のビジネスチャンスが眠っているというのだ。さらに、高齢者に貸し出すことにはこんなメリットもあるという。

「高齢者の特徴として、賃貸期間の長さが挙げられます。高齢者は一度、入居すれば長い人で10年、20年と住むことも珍しくありません。また、継続的に更新するため、家賃も同水準で継続できる点も見逃せない。

 若い借り手が3年前後で入れ替わるのと比べれば、オーナーにとっては非常に好都合だといえます。こうした“優良高齢者”の借り手は、トラブルも少ない。あと、5年経てば、65歳以上に貸すのが当たり前になるでしょう」

◆孤独死のリスクは、下がりつつある!

 さらに、前述した孤独死に関しても、保険会社や保障会社のサービスが手厚くなり、またIoTの発達もめざましくなったりと、近年ではそのリスクは減少傾向にある。

「これまでは人力で行なうしかなかった見守りや定期点検も、オンラインでの見守りサービスなどが普及し、その人的コストが大きく低下しました。遠隔地からでも、独り身の高齢者の孤独死を防ぐテクノロジーが発達していますし、今後、急速に伸びていくでしょう」◆高齢者に貸すべきは「アパート」

 では、不動産オーナーを志望するとき、具体的にまずやるべきことは何だろうか。不動産には、マンション、アパート、一軒家と様々なタイプがあるが、山本氏が投資家目線で注目しているのは、「アパート」である。

理由として山本氏が挙げるのが、以下の3つだ。

1.資産価値が下がりやすく、借り手探しに苦労しやすい

2.壁が薄いアパートは生活環境が静かな高齢者向き

3.低層のため足腰の弱った高齢者に好まれる

 さらにその理由について、山本氏はこう語る。

「まず、アパートは資産価値が下がりやすいため、借り手として高齢者という選択肢は常に持っておくべきです。私のもとにも、築15年前後のアパートにいかにして入居者を入れるか相談が多く寄せられていますが、多くは高齢者との契約を増やすことで解決の糸口になることが多いですね。

 また、高齢者は65歳を過ぎると生活騒音がなく、通常人気のないアパートの1階も足腰が弱ってきた高齢者にはむしろ好まれる、という状況が起こっています。また、駅近という条件が必要ないのも高齢者ならではかもしれません。高齢者にとっては病院とかスーパーといった日常の生活圏こそが重要であり、その中だけで完結していればいい人たちが多い。電車から遠くとも、バス路線があれば良いという見方もできます」

◆リスク管理を実践できるオーナーが生き残れる

 今後、不動産オーナーにとって必要なものが、リスク管理だ。リスク管理のポイントとして山本氏があげるのが「接触頻度」だ。

「事故物件にしないためには、接触頻度をとにかく増やすことが求められます。従来は定期的な見守り訪問の回数を増やすことが求められましたが、これは最新のIoTの導入や複数物件の同時管理などでカバーすることができます。ただし、過剰な監視カメラは高齢者からも嫌がられることを肝に銘じておきましょう」

 オーナーとしては、こうしたリスク管理を盤石にすることで、家賃を高めに設定できるようになる。例えば、家族に代わって見守りのリスクを持つかわりに家賃を1.3倍程度にすることも可能なのだ。

 高齢者に物件を貸すことが当たり前になったときに、今の空室で競争優位が保てるかどうか。それは、旧来の「借り手」像から離れることが必要だ。勝てる不動産オーナーの分かれ目は、常識にとらわれない発想と実践にかかっている。

<取材・文/HBO取材班>

【山本 遼】

やまもと りょう◯愛媛大学卒業後、新卒として、愛媛県の不動産会社に入社。社会人2年目で、転勤のため上京。上京後は主に地方からの一人暮らしの方を中心に不動産を仲介。仲介業での経験を活かし、社会人4年目、25歳で独立。「R65不動産」をスタート

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最終更新:9月23日(金)9時10分

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