ここから本文です

「万引き老人」がここまで蔓延してしまう理由

東洋経済オンライン 9月23日(金)6時0分配信

東洋経済オンラインに集いし労働者・学生・市民諸君! 「若き老害」こと常見陽平である! 前回に引き続き、高齢者の万引きについて『万引き老人』(双葉社)の著者であり、現役万引きGメンの伊東ゆうさんとの対談をお届けする。今回は万引きを防止するための対策についてもお伺いした。ぜひ、ご覧頂きたい! 

この記事の写真を見る

■財布に50万円入っていても…

 伊東 ゆう(以下、伊東):一方で、少数ですが、生活にまったく困っていない人もいます。過去に高い地位についていたことが多く、万引をして捕まったにもかかわらず、過去の職歴自慢をする人さえいます。

編集部註:一般刑法犯の検挙人員数を年齢別に見ると65歳以上は約4.7万人に上り、14~19歳に次ぐ水準。全体の数は約25万人と10年前から3割強も減少しているにもかかわらず、高齢者の数は約1割増加している。高齢者犯罪で最も多いのは窃盗で約3.5万人と断トツ

 たとえば、値の張る茶葉を万引した老人がいました。免許証をみると高級住宅街に住んでいる。捕まえてみると、財布の中には50万円入っていました。なぜ盗んだのか聞くと「町内会の会合で配って、みんなに喜んでもらおうと思って」と言います。

 気前のいい人だと思われたい。そんな虚栄心があるのです。過去に高い地位についていた人ほど、こういったタイプが多いように思います。女性の中には、わざわざブランドもののバックを使って万引する人もいます。

 常見 陽平(以下、常見):生活をダウンサイジングできず、万引をしてまでも、自分が退職後も一流であることを誇ろうとするのですね。うーん、根深い。

虚栄心のある人はおカネがあっても…

 伊東:さっきのコロッケを盗んだ老人は、経済状況が改善すれば、万引をしないと思います。しかし、虚栄心のある人はおカネがあってもまた繰り返してしまうのでしょう。

■地域の人を「犯罪者」にしないために

 常見:一度、万引の現場をみたことがあるんです。中学生くらいだったかな、スーパーにいたら大きな音が聞こえて、ジャージーを着た小太りの男の子を、大人がすごい剣幕で追いかけていました。男の子はすぐにつかまって、ぶるぶる小刻みに震えていました。あの光景がすごく強烈で……。万引ってしちゃいけないものなんだと強烈に感じた出来事です。

 伊東:それは衝撃的だったでしょう。今のお話のように、万引って、やるほうと捕まえるほうに温度差があるんですよ。やるほうは、ちょっとしたつもりでやっているけれど、捕まえるほうは相手が犯罪者だから、すごい剣幕です。

 不思議なんですが、日本は万引に対して甘い社会であると思います。「おれ、万引したことあるんだ」って打ち明け話ができますよね。

 常見:ああ、確かに、飲み会の席で武勇伝的に聞くことがあります。

 伊東:置き引きや、ひったくりをした過去を打ち明けることはほとんどありません。同じ窃盗なのに、万引は軽いものとして扱われています。

 ただ、万引の被害額を総計すると、4000億円以上もあります。

 とある調査会社によると日本全国の年間万引被害総額は1兆0407億円に上るとされています。その被害総額からすれば特殊詐欺の被害額を大きく上回っており、決して軽い犯罪とはいえません。結局、そのツケは、普通におカネを出している私たち消費者が負担しているのです。店舗の側も万引をさせない対策をもっと取るべきだと思っています。

 常見:環境を整えることで、万引を減らすことはできるのでしょうか? 

 伊東:十分可能だと思います。万引犯は、ほとんど決まった場所で犯行に至ります。だいたい同じような場所で、カバンに入れるのです。

 常見:では、「ステーキが欲しいけど、ステーキの棚は万引しづらいから、ハムにしておこう」のように、盗りたいものを盗るのではなく、盗りやすいものを盗ることがあるのですか? 

 伊東:欲しい商品の場所と、カバンに入れる場所は違います。一度商品を手にして、死角に入り、そこで商品をカバンに入れるのです。だから、盗るものは違えど、カバンに入れる場所はだいたい一緒です。

 常見:万引したことないからわからなかった……。棚からすぐにカバンに入れるわけじゃないんですね。

1/2ページ

最終更新:9月23日(金)6時0分

東洋経済オンライン

東洋経済オンラインの前後の記事