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“レッスルマニア11”ブレット対バックランド“因縁ドラマ”の意味――フミ斎藤のプロレス講座別冊WWEヒストリー第186回(1995年編)

週刊SPA! 9/23(金) 9:10配信

 スーパーイベント“レッスルマニア”は、選ばれたスーパースターだけが出場を許される年にいちどの祭典である。“レッスルマニア11”(1995年4月2日=コネティカット州ハートフォード、ハートフォード・シビックセンター)にはシングルマッチ5試合、タッグマッチ2試合の全7試合がラインナップされた。

 公式カード全7試合に出場するWWEスーパースターズは合計18選手。100人を超すといわれる契約タレントのなかのわずか18選手だから、やはり“レッスルマニア”出場は所属選手にとってもひじょうに“狭き門”ということになる。

 前年の“レッスルマニア10”では実弟オーエン・ハートとのシングルマッチ、ヨコヅナとのWWE世界ヘビー級選手権の2試合をおこない、メインイベントではヨコヅナを下しWWE世界王座を奪回した“ヒットマン”ブレット・ハートは、今大会はボブ・バックランドと“アイ・クイット・マッチ”(通常の3カウントのフォールではなくアイ・クイット=戦意喪失の意思表示でのみ勝敗が決まるルール)で対戦した。

 ブレットとバックランドは前年11月の“サバイバー・シリーズ”(1994年11月23日=テキサス州サンアントニオ、フリーマン・コロシアム)で対戦し、そのときはバックランドが十八番チキンウィング・クロスフェースでブレットを下しWWE世界王座奪取に成功。それから3日後の同年11月26日、新王者バックランドはマディソン・スクウェア・ガーデンでディーゼル(ケビン・ナッシュ)に敗れ、同王座をあっさり明け渡した。

 WWE世界王座はブレットからバックランド、バックランドからディーゼルへと移動し、1995年のPPV第1弾、1.22PPV“ロイヤルランブル”タンパ大会ではディーゼル対ブレットのタイトルマッチが実現。しかし、この試合にはバックランドとオーエンが乱入。ブレットはこの“報復”としてメインイベントの時間差式変則バトルロイヤル“ロイヤルランブル”に乱入し、オーエンとバックランドの入場シーンを妨害した。ブレットは対オーエン、対バックランドというふたつの長編ドラマを緻密に同時進行させてきた。

 1957年7月生まれのブレットはこのとき37歳で、1949年8月生まれのバックランドは45歳。37歳のブレットがニュー・ジェネレーション世代のベビーフェースで、45歳の大ベテランのヒールのバックランドと闘うという設定は、ブレットとバックランドのちょうどあいだの世代にあたるハルク・ホーガンを時代ごと“消去”するためのキャスティングだった。

 WWEはこの年、1月の“ロイヤルランブル”、4月の“レッスルマニア”、6月の“キング・オブ・ザ・リング”、8月の“サマースラム”、11月の“サバイバー・シリーズ”の年間5大イベントに加え、新企画の導入を決定。“イン・ユア・ハウス”のタイトルで5.14、7.23、9.24、10.22の4大会をPPVの年間スケジュールに組み込んだ。

 新PPV“イン・ユア・ハウス”4大会の開催は、団体経営のベースがハウスショー・ビジネス(入場チケットの売り上げによる興行収益)からPPV(契約式有料放映の視聴料)へと移行しつつあることを物語っていた。また、PPVのカード編成を長編ドラマの“句読点”として学習した観客は、ノーTVのハウスショーが単なる“地方公演”のひとコマであることを知ってしまった。

 ビンス・マクマホンは、それほど目新しいとはいえないブレット対バックランドのシングルマッチをあえて“レッスルマニア11”の第5試合にラインナップした。ゲスト・レフェリーはWWEの“1984体制”の象徴ともいえるロディ・パイパー。パイパーは前年の“レッスルマニア10”でもブレット対ヨコヅナのタイトルマッチを特別レフェリーとして裁いた。

 ブレットがチキンウィング・クロスフェースでバックランドを半失神状態に追い込んだところでレフェリーのパイパーが試合をストップ。ビンスにとってはブレット、パイパー、バックランドの3世代のスーパースターが同じリングに立っていることがホーガン不在の“レッスルマニア”の正しいレイアウトだった。(つづく)

※この連載は月~金で毎日更新されます

文/斎藤文彦 イラスト/おはつ

※斎藤文彦さんへの質問メールは、こちら(https://nikkan-spa.jp/inquiry)に! 件名に「フミ斎藤のプロレス講座」と書いたうえで、お送りください。

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最終更新:9/23(金) 9:10

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