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東京五輪、金メダルは「都市鉱山」から 廃スマホ活用

NIKKEI STYLE 9/24(土) 7:00配信

 2020年の東京五輪・パラリンピックのメダルを廃棄されたスマートフォン(スマホ)や携帯電話などから作ろうとする試みが始まっている。天然資源に恵まれていない日本だが、都市には様々な資源が眠る。貴金属を使った部品が内蔵されているスマホはその代表格。メダルに再利用できれば日本の環境先進性を世界にアピールできる。
 6月10日、「持続可能な未来」をめざす「東京2020運営計画への連携プラン提案」検討会合が都内で開かれた。集まったのは東京五輪・パラリンピック組織委員会や環境省、東京都の関係者。NTTドコモや田中貴金属工業、リサイクル会社の幹部も顔を連ねた。
 「日本の小型廃家電だけで、五輪メダルを全量作れます」。会議ではこのような結論が出た。根拠もある。12年のロンドン大会のメダルで使われた金属は金が9.6キログラムで銀は1210キログラム、銅が700キログラムだった。14年に日本国内で小型廃家電の回収で得た金属の量は金が143キログラムで銀は1566キログラム、銅が1112トン。計算上は必要な金属を確保できる。
 会議を主催したのはNPO法人の持続可能な社会をつくる元気ネット(東京・新宿)。崎田裕子理事長は「国民全員参加の五輪になるように、具体的な回収スキームを事業者側に提案してもらい、その実現を組織委員会に働きかけていきたい」と意気込む。今後は全国の携帯電話ショップや地方自治体などで、五輪メダルになることを訴えた回収キャンペーンを計画している。
 国立研究開発法人、物質・材料研究機構の原田幸明特命研究員は昨年夏から、小型廃家電によるメダル製造の実現可能性を調査してきた。家電の回収から金属精錬までの現状を分析。「日本の場合、ゼロから回収網などをつくるわけではない。日本全体で合意が得られれば既存の仕組みでメダルは作れる」と説く。
 五輪メダルに使われる金属はこれまで鉱山会社の寄付などで調達してきた。リオデジャネイロ五輪ではリサイクル金属が一部使われていたとされるが、完全リサイクルとなれば、話題になるのは確実だ。
 日本で完全リサイクルメダルの提案が出た背景には、豊富な「都市鉱山」の存在がある。
 金は世界の埋蔵量の16%分、銀は22%分――。国内の小型家電に含まれる金や銀の量だ。都市鉱山とは、こうした金属を含む廃家電を鉱山資源とみなした表現だ。日本はどの天然鉱山資源国をもしのぐ、世界有数の都市鉱山資源国だ。環境配慮を掲げる東京五輪のレガシー(遺産)の一案として、都市鉱山によるメダル作りが浮上するのは自然な流れといえる。
 だが実現は容易ではない。小型廃家電の回収の仕組みがまだ不十分なためだ。
 13年4月に始まった小型家電リサイクル法。自治体と認定リサイクル業者が連携して廃家電を回収するという内容だが、現状は役所に回収箱を設置するだけの自治体がほとんどだ。
 国内で年間65万トンの小型廃家電が発生するが、この法律の仕組みで回収できているのは10万トンに満たないとされる。環境省は自治体に人口1人当たり年間1キログラムとする小型家電の回収目標を定める。だが0.1キログラムに満たない自治体が多い。
 計算上は現在の回収量でメダルは作れるとはいえ、都市鉱山から得た金属の多くはすでに電子部品の材料として再利用されている。特に銀は需給が逼迫しており、メダルに回せる分を確保できるかは微妙だ。小型廃家電リサイクルへの関心を高め、回収量を増やすことが必要だ。
 「消費者が手軽に供出できるような仕組みが必要だ」。廃家電によるメダル製造に賛同する一社で中古品買い取り・販売のリネットジャパングループ(愛知県大府市)の黒田武志社長は指摘する。リネットジャパンは家電回収では14年に政府認定を受けたばかり。それでも現在、横浜や京都など13の政令指定都市を含む約90の自治体と家電回収の協定を結んでいる。
 相次ぐ協定締結の秘訣はリネットジャパン独自の回収方法にある。消費者は同社の専用サイトで回収日時を申し込むと、最短で翌日に佐川急便の担当者が自宅を訪れ、廃家電を詰めた段ボール箱を持ち帰ってくれる。料金は原則無料。消費者は役所の回収箱に行かずに、自宅に眠る廃家電を引き取ってもらえる。
 自治体は広報活動で協力している。大府市の実証事業では、環境省が目標としている1人当たり年間1キログラムに近い量の回収を達成できた。ネットの活用で管理費を抑えるなど、廃家電から取り出した金属の売却で「自治体の補助金に頼らずにビジネスは成り立つ」(黒田社長)。
 牛乳パックやペットボトルのキャップ――。日本では環境問題への意識が高い消費者は多く、直接の利点が消費者になくてもリサイクルが進んでいる商品は多い。「回収ビジネスは民間がつくり、国や自治体は告知・周知活動する。そんな官民連携が進めば、小型廃家電も回収が進むはずだ」(黒田社長)
 経済性や物理的な壁より、官民や消費者など日本全体の本気度が五輪のリサイクルメダルの実現を左右する。
(榊原健、庄司容子)
[日経産業新聞2016年8月19日付]

最終更新:9/24(土) 7:00

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