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赤い糸が私たちにもたらすものとは?

VOGUE JAPAN 2016/9/24(土) 21:40配信

赤一色で埋め尽くされた空間へ。

初めて塩田千春の作品を観たのは、2001年の第1回ヨコハマトリエンナーレだった。《皮膚からの記憶》と題されたインスタレーションは、20mもの長さの巨大な白いドレスが3着、天井から吊り下げられていた。(それだけでも度肝をぬかれる)しかもその裾は泥水のプールに浸かっていて、降り注ぐシャワーの水にうながされ、茶色い汚れはじわじわと下半身から上半身にグラデーションを描いて染み込もうとしていた。

赤い糸の向こう側を覗き見る。

女性なら誰でもそれをショッキングな光景と思うだろう。理屈でなく生理的に。それが何を表わすと感じるかは観る人次第だ。筆者の場合、どこかに澱のように沈殿していた、少女時代から現在までのさまざまな感情の記憶が、一気にぐわっと湧きあがってきて、震え上がったことを覚えている。

女性ならきっと生理的にショッキング。

塩田千春は、若い頃に移り住んだベルリンを拠点に、常に彼女ならではの独特のマテリアルを使って作品をつくってきた。初期の頃は、血液やガラス管、黒い糸といった、女性の生理感覚とそこにつきまとういい知れない不安や恐れを象徴する素材が使われていた。

やがて作品のモチベーションは歴史や社会に開かれていく。おびただしい数の椅子、窓枠、古靴、白いパイプベッド。それらは近代史を学んだものにとっては、自動的に過去の忌まわしい事実を思い起こさせる品々だ。室内には、それを覆い隠すかのように、ここでも赤や黒の糸がびっしりと張りめぐらされていた。

VOGUE Japan

最終更新:2016/9/24(土) 21:40

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