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サブローからマリーンズへの伝言「Have Funの精神を忘れずに」

webスポルティーバ 9/24(土) 20:30配信

 幕張の強風を突き抜けていくような「サブローーー!」の場内アナウンス。今やQVCマリンフィールドの名物となった、ウグイス嬢・谷保恵美さんの甲高いコールを今年は一度も聞くことができていない。

【写真】サブローもPL学園出身のプロ野球選手81人のひとり

 そして9月1日、サブローはユニフォームではなくスーツに身を包み、QVCマリンフィールドで引退発表会見を行なった。終始淡々と受け答えしていたサブローだったが、ファンへの思いについて尋ねられると声を詰まらせ、涙を拭う場面もあった。

「一時期、半年くらいジャイアンツに行きましたけど、帰ってきたときも温かく見守っていただいて、熱く応援していただいて、感謝の言葉しかありません。これからも千葉ロッテマリーンズをよろしくお願いします」

 プロ通算22年、1781試合に出場して、1362安打、127本塁打、655打点、78盗塁、打率.265。外野手としてゴールデングラブ賞を2度受賞している。

 体はどこも悪くない。調子もいい。イースタン・リーグでの成績は57試合に出場して打率.240、4本塁打と今ひとつだったが、ベテランにとってファームの試合はあくまで調整の場でしかない。一軍の投手を打つための準備はしていたものの、声が掛かることはなかった。しかし一方で、今年で40歳になった自分が、チームにとってどんな存在であるかも自覚していた。

「自分のなかでは『ないだろう』と割り切って......、でも、やることはやっておこうという感じでした。一軍に行くことは『ない』と思っておこうと」

 一軍にいればナイターが多いため夜型の生活サイクルになるが、ファーム暮らしでは朝早く起床しなければならない。本人は「規則正しい生活になりました」と笑うが、一軍昇格の希望を失いかけながらも親子ほど年の離れた若手と汗を流す日々は、味わった者にしかわからない感情が渦巻いたに違いない。

「正直言ってキツイですね。キツイけど、これが僕の仕事なので、やらないといけない。ファームはデーゲームなので、コーヒーの量を減らして、今まであまり飲まなかったスポーツドリンクを飲むようにしたり。熱中症で倒れないように体調管理していました」

 プレーヤーとしては辛苦を味わっていたサブローだったが、この雌伏の日々は野球人として「勉強になったし、楽しかった」という。明日のマリーンズを担うであろう才気あふれる若者たちに、サブローは惜しみなく助言を送った。

「『こう言っておけばいいだろう』と思って伝えたことでも、人によっては『ここまで言わないと伝わらないのか』と想定外のこともいっぱいあって、いい経験になりました。子供に教える感覚ですね(笑)」

 言うまでもなく、プロ野球選手は個人事業主である。チームメイトとはいえ、自分の仕事を奪いかねないライバルに塩を送る義務はない。それでも、サブローは若手に積極的にアドバイスを送り続けた。

「すぐ上(一軍)でそこそこ結果を出せるような子も何人かいますよ。余裕があれば、一軍で使ってほしいくらいですね」

 サブロー自身、PL学園からドラフト1位でプロ入りしてから、レギュラーに定着するまで長い時間を要している。プロのスピード、体の強さ、飛距離、すべてに戸惑った。結果を出さなければいけないプレッシャーに怯えて打席に入り、かえって結果が出ない悪循環に陥ったという。初めて規定打席に到達したのは、8年目の2002年だった。

「体づくりができたことと、僕のバッティングの師匠である高畠導宏さん(故人)に(プロのレベルに)対応するためのバット軌道やタイミングを教わったことも大きかったんですけど、やっぱり気持ちに余裕が出てきたことが大きかった。『打たないと出られない』と思うのではなく、『打てなくても出られる』と余裕があれば結果も出てくるものなんです。いま、若い子たちにもそのことは伝えているんですけど、そのためにはやっぱり使ってもらえないと克服できないですからね」

 そして、サブローにとって野球人生のターニングポイントになる出会いが2004年にあった。この年、9年ぶりに監督復帰したボビー・バレンタインである。

「選手を萎縮させない、いい環境を作ってくれる監督でした。よく話しかけてくれたり、食事に連れて行ってくれたり、コミュニケーションを取ってくれました。ボビーによく言われたのは『Have fun!』。つまり『楽しめ』ということ。苦しい時こそ『Have fun!』。それ以来、僕のなかで常にその思いを持っていますし、これから若い選手たちにも変わらず伝えていきたいと思っています」

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最終更新:9/24(土) 20:30

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