ここから本文です

【開発秘話】発売から5か月で400万箱以上売れた『アサヒもぎたて』

@DIME 9/24(土) 17:10配信

缶チューハイなどそのまま飲用可能なRTD(Ready to Drink)は、堅調に成長を続けている。中でも市場拡大に貢献しているのが、アルコール度数7%以上の高アルコールタイプで、市場の約半数を占めているという。現在、この高アルコールタイプで人気を得ているのが、アサヒビールの『アサヒもぎたて』である。

 2016年4月に発売された『アサヒもぎたて』は、つくりたての美味しさと果実の新鮮な味わいを実現した、アルコール度数9%缶チューハイ。〈新鮮レモン〉〈新鮮グレープフルーツ〉〈新鮮ぶどう〉の3種を発売後、6月に〈新鮮白桃〉、8月に〈新鮮オレンジライム〉を追加した(〈新鮮白桃〉は期間限定品で出荷終了)。

 8月末時点での販売数量は400万箱超(1箱=250ml×24本換算)。初年度500万箱を目標に販売をスタートしたが、発売3週間で100万箱を突破。5月に目標を600万箱に上方修正したが、勢いが衰えることなく売れ続け、7月に750万箱へと上方修正したほどである。

■理想のチューハイは居酒屋の生搾り

 完成までに3年ほどの時間を要した『アサヒもぎたて』の開発の背景にあったのは、RTD事業の再構築。ビール類では高いシェアを誇る一方、RTDで苦戦を強いられていた同社は、伸張している高アルコールタイプのRTDで、将来のビッグブランドになれるものの開発を目指した。

 開発に当たり実施したのが、お客様を徹底的に調べること。1対1のインタビュー調査を重視し、時間をかけて360人ほど調査。定量調査を含めると、調査した人数は約5000人にのぼった。『アサヒもぎたて』の開発を担当したマーケティング本部マーケティング第二部(RTD・焼酎)の宮广(みやま)朋美さんは、「『アサヒ スーパードライ』を開発した当時に5000人規模の調査を実施していますが、これに匹敵するものになりました」と明かす。

 お客様の声を深堀した同社は、RTDに対する潜在的な不満を発見した。それは、甘さが残ったりアルコール臭くて飲みにくく、人工的な味わいがする、というもの。一方、理想的なチューハイについて尋ねると、ほぼ全員が居酒屋の生搾りを挙げたという。

 ここで同社はさらに、居酒屋の生搾りが美味しいと思う理由を深堀する。その結果わかった美味しいと思う理由は、「つくりたて」。つまり、新鮮だから美味しいというものであった。こうして同社は、新鮮に徹底的にこだわったチューハイをつくることにした。

■新鮮さを追求した素材と製造法

『アサヒもぎたて』の開発では、素材と製造法の両面から新たなことにチャレンジすることにした。

 素材での新たなチャレンジは、収穫後24時間以内に搾った果汁の使用である。同社によれば、レモンの場合、収穫後1日目に搾ったレモン果汁と収穫後3日目に搾ったレモン果汁を分析すると、収穫後3日目の香気は1日目の約10分の1に減少、劣化臭の1つである薬品臭は1日目の約1.4倍に増加することが判明。収穫後24時間以内に搾った方が、新鮮でレモンらしい香りが強いことがわかった。それまでは効率を考慮して、収穫から48~72時間後に搾汁することが一般的であったが、新鮮な果汁のみを使うため、収穫後24時間以内に搾ってくれるところを探し、調達することにした。

 一方、製造法については、独自の「アサヒフレッシュキープ製法」を開発した。「アサヒフレッシュキープ製法」は、低温殺菌技術と香味劣化抑制技術の2つをかけ合わせ、時間が経ってもつくりたての美味しさを維持できるようにしたもの。これまで蓄積してきた様々な劣化対策の知見から、最適なものを組み合わせて開発した。

 低温殺菌技術は、熱が加わることで生じる劣化を抑えるために通常より低温で殺菌しつつ、香味成分もキープするもの。ただ単に、温度を下げればいいわけではなく、試験を繰り返しながら品質を担保できる温度を探った。しかも、品質を担保できる最低殺菌温度はフレーバーごとに異なるので、フレーバーごとに試験を重ねて見出した。

 香味劣化抑制技術は、時間の経過とともに生じる中身の劣化を抑制するもので、そのために効果がある特別な素材を使う。ただ、その素材は200種類以上もある。香味の劣化抑制効果だけでなく、味に影響を及ぼさないかという観点から素材を検証し、フレーバーごとに使うものを決めていった。

「アサヒフレッシュキープ製法」でつくった製造後1~2か月相当品と他社品を同社が分析したところ、レモンの場合、香気が他社品の約10倍、劣化成分は他社品の約半分という結果が出た。

■新鮮な果実感と高アルコール感の両立

 一方、ネーミングやパッケージデザインも試行錯誤を重ねた。まずネーミングについては、果実の新鮮さがわかるものを考え、800案の中から現在の名前に決めた。「もぎたて」の表記もひらがなだけでなく、ローマ字なども検討した。お客様調査でも、「もぎたて」というワードは好評だった。

 パッケージについては500案以上の中から検討したが、新鮮な果実感が伝わりながらも高アルコール感を担保することにとても苦労したという。最終的にはお客様調査の結果が良かった現在のデザインに落ち着いたが、新鮮な果実感については、もぎたてがわかるよう葉っぱをつけ、高アルコール感についてはシルバーに黒文字を乗せることで表現した。

 また、高アルコールタイプではよく使われる「ストロング」というワードを大々的に使わず控え目にした。これはあらかじめ決めていたことで、その理由は「大々的に『ストロング』を使ってしまうと、『酔い』や『酒』がすぐ連想されてしまうため」と宮广さん。アルコールの強さよりも先に、果実の新鮮な味わいを感じてもらうことを重視した。

■大規模な50万人サンプリングの実施

『アサヒもぎたて』の発売に伴い、同社は50万人の大規模サンプリングを行なう。宮广さんによれば、50万人というのは同社のRTDでは最大規模だという。

 サンプリングは、発売前はもちろんのこと、発売後も新フレーバーが出るタイミングに合わせて実施。ウェブサンプリングに積極的に取り組んでいるほか、レモンの木をつくり、そこに掛けたサンプリング缶をお客様にもいでもらうといったイベントも、各地で実施している。

 なお、このイベントは「チームAZ」の発案から生まれた。AZとは『アサヒもぎたて』の開発記号で、RTDでは初めて、商品化が決まる前に部署横断型のプロジェクトチームをつくって開発や販促にあたることにした。『アサヒもぎたて』が勝負をかけた商品であることは、「チームAZ」の存在からもわかる。

 サンプリングの結果、「Twitter上には、『アサヒもぎたて』に関するツイートが想定以上に出現しました」と宮广さん。内容は、アルコールの強さよりも、果実の味に触れたツイートが多いとのことだ。

★★★取材からわかった『アサヒもぎたて』のヒット要因3★★★

1.新鮮な中身

 中身の新鮮さは美味しさに直結する。収穫後24時間以内に搾った果汁と新鮮さを損なわない製造法により、果実の新鮮さによる美味しい中身を実現した。

2.新鮮さが伝わるネーミング

 新鮮な果実感が一番伝わるものとして現在の名前を採用。「もぐ」という行為の荒々しいイメージも手伝い、高アルコールタイプであることも想起させた。

3.新鮮さが伝わるパッケージ

 果実の描き方を工夫して、収穫間もない果実を搾った果汁を使ったことを想起させたほか、色使いなどで高アルコールタイプであることも示した。

 RTD事業を再構築しRTD市場での存在感アップを賭けて『アサヒもぎたて』を送り出した結果、同社のRTDはシェアがアップし、業界4位から3位に上がったという。今後は〈新鮮りんご〉の発売も決定しており、通年販売、期間限定販売問わずフレーバーは増やしていく方針だ。現在の勢いを加速させられるかどうかは、ユーザーが興味・関心を失わないように新鮮さを維持し続けることができるかどうかにかかっているといえる。


文/大沢裕司

@DIME編集部

最終更新:9/24(土) 17:10

@DIME

記事提供社からのご案内(外部サイト)

@DIME

小学館

2017年1月号
11月16日発売

定価630円

ヒット商品&トレンド大予測!
ふるさと納税駆け込み攻略ガイド!
発表!小学館DIMEトレンド大賞
別冊 DIME創刊号付き

Yahoo!ニュースからのお知らせ