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ローマ市民にはパンとサーカスを、東京都民には築地問題を --- 筒井 冨美

アゴラ 9/24(土) 7:10配信

「民衆にはパンとサーカス(見世物)を求めている」古代ローマの詩人の名句である。古代ローマ帝国の首都だったローマには帝国中の富が集まり、食べることに困らなくなったローマ市民の次の関心事は、競馬やら剣闘士勝負などの見世物だったそうだ。

「失われた20年」とか言われても、世界的にみれば日本はまだまだ豊かな国である。その首都である東京都では、食べ物に不自由するよう極貧状態は、まず見られなくなった。夜の港区にはキラキラ女子やスポンサー男が集っているし、億を超えるタワーマンションも次々と売れてゆく。爆買いの外国人富裕層によるとおぼしきホテル不足も続いている。

ここのところ、2代続けて東京の盟主たる都知事が任期半ばで職を追われた。だからといって、東京都民は知事の「政治資金で回転寿司」やら「公用車で湯河原行き」について、辞職に追い込まねばならぬほど、本気で怒っていたのだろうか?「5000万円の借金騒動」だって、「やっぱ、都知事クラスの政治家だったら、そういうこともあるよね。でも、本業をしっかりやってくれるなら、目をつぶってもいいよ。」というのが、都民のサイレントマジョリティの本音だったのではないか。

東京都民が本当に欲していたのは、結局「高い地位の人間を、引きずり落とす」というサーカスだったと私は思う。「用意した鞄に5000万円が入らなくてうろたえる猪瀬知事」とか、「記者会見のたびに、ビミョーな言い訳をしてうろたえる舛添知事」は、都民の見世物としてはイイ線だったと思う。そして、インターネットやらSNSの発達した現在では、そういう感情はシェアされ拡散され増幅されて…「辞任」でクライマックスを迎える。オリンピックエンブレムの盗作騒動も、都民が求めていたのは「著作権に問題のないエンブレム」ではなく、同様のサーカスだったと私は思う。

豊洲市場の地下水騒ぎも、東京都民が本心で求めているのは医学的安全性ではなく、「高い地位の人物を、引きずり落とす」 というサーカスではないか。そして、元人気女子アナでもある小池知事は、科学的リスクマネジメントや経済的合理性は理解できなくても、「都民が本心で求めていること」を察知する嗅覚には優れているのだろう。移転延期で「税金ダダ漏れ」状態が長く続いても、小池知事が高い人気を維持できているのも、「彼女だったら、都議会のエラそうなオヤジを引きずり落としてくれそう」な、期待感からではないか。

というわけで、次に、引きずりおとされるのは誰か?東京都の局長クラスの役人では、サーカスとして役不足の気がするし…やはりベテラン都議の誰かなのだろうか?


1966年生まれ。フリーランス麻酔科医。2007年より「特定の職場を持たないフリーランス医師」に転身。本業の傍ら、2012年から、「ドクターX~外科医・大門未知子~」など医療ドラマの制作協力に携わる。近著に「フリーランス女医が教える 「名医」と「迷医」の見分け方」(https://goo.gl/hpDlM2)。

筒井 冨美

最終更新:9/24(土) 7:10

アゴラ

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