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電通、デジタル広告で"不適切取引"の裏事情

東洋経済オンライン 9月24日(土)4時30分配信

 金額は大きなものではなかった。だが、電通にとってはかなりの痛手となりそうだ。

 9月23日、広告代理店大手の電通は東京証券取引所で会見を開き、デジタル広告サービスについて不適切な取引があったことを発表した。広告の掲載期間がずれていたり、広告が掲載されていなかったというものだ。

 不適切な疑いのある案件は633件、111社にのぼり、金額は合計2億3000万円。そのうち未掲載にもかかわらず、広告主に請求した額は320万円だった。中本祥一副社長らは会見の冒頭、「広告主、関係者、株主の皆様に多大な迷惑をお掛けしました」と謝罪した。現時点で、業績に与える大きな影響はないという。

■「効果が出ていない」、広告主の指摘で発覚

 一連の不正が発覚したきっかけは、広告主であるトヨタ自動車の指摘(7月)だったという。「広告を出稿したにも関わらず、その効果が出ていない」といった指摘を受けて電通が調査すると、故意もしくは人為的なミスにより、間違った時期に広告が掲載されていたり、掲載されていなかったり、広告の運用状況に虚偽の報告が含まれていることがわかったという。

 電通は8月に中本副社長をトップとする社内調査チームを立ち上げ、現在も調査を進めている。広告主には個別の結果がまとまり次第報告し、すべての調査は年末までに終える見通しだ。

 今回の焦点となったデジタル広告には、グーグルなどの検索エンジンで検索した際に、そのキーワードに連動して表示される「検索連動型広告」や、広告主が狙ったユーザーに広告を表示すると同時に、その効果に見合った金額で出稿できる仕組みなどが挙げられる。

急成長分野にひずみ?

 デジタル広告はテレビや新聞のようにマス層に向けてアピールするものではないが、より広告を見てほしいユーザーに効率的に届けられるため、広告主のニーズは年々高まっている。「毎年2ケタ増のペースで売上高を伸ばしている」(電通・デジタルプラットフォームセンターの榑谷典洋局長)。

 ただ、急成長しているだけに現場の負担は大きく、人員も十分ではなかったという。電通側は成果を出すことに対してプレッシャーがあったのではないかと説明したが、金額からして、現段階では特段、過大な請求をしたわけではなさそうだ。不正は今回の発表内容にとどまるのか。それとも氷山の一角なのか。背景について、さらに調査を進めていくとしている。

■デジタル強化が裏目に出たのか? 

 デジタル分野は現在の電通にとって最重要の分野だ。国内では今年7月、デジタルマーケティングの専門会社「電通デジタル」を設立したばかり。ITコンサルやビックデータの活用、eコマースなどに力を入れてきた。海外でも、米国のデータマーケティング会社を買収するなど、年間400~500億円程度の枠を設け、デジタル関連の会社の買収を進めている。

 会見では、「デジタル戦略を強化してきたことが、こうした不正につながったのではないか」との質問も出た。これに対し、中本副社長は「広告主のニーズに応えていく。きちんとした再発防止の対策を講じつつ、伸ばしていきたい」と語った。

 9月からはデジタル広告の内容確認の業務について、独立性の高い部署に移すなどの措置を取っているというが、これまでのようにデジタル分野を伸ばすことができるのだろうか。明確だったはずの成長戦略に、自ら水を差してしまったようだ。

田邉 佳介

最終更新:9月24日(土)4時30分

東洋経済オンライン

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