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妻夫木聡、綾野剛ら豪華キャストの話題作『怒り』。李監督が撮影裏を語る

女子SPA! 9/24(土) 9:10配信

 その年の賞を総なめにし、観客からも高い支持を得た『悪人』の原作、吉田修一さんと李相日監督が再び組み、早くから話題を集めていたヒューマン・ミステリー『怒り』が公開中です。

⇒【写真】映画『怒り』よりシーンカット集

 千葉、東京、沖縄を舞台に展開する群像劇で、それぞれに謎の男と出会い、彼こそが未解決殺人事件の犯人ではないかとの疑念と信頼のはざまで揺れていく…。豪華な出演陣も話題の本作を手がけた李相日監督に、作品、そしてキャストそれぞれの魅力について伺いました。

◆妻夫木聡と『悪人』以来のタッグ

――殺人事件も起きていますし、日常とは違うはずなのに、観ているうちに観ているこちらにリアルに迫ってくる作品です。

李:犯人が誰なのかと観始めて、途中から3人のうちのだれが犯人でもイヤだという思いになるように、観る人の感情を揺さぶりたいと思ってました。最初の事件によって、ミステリーとして、犯人探しの緊張感を楽しみながら、気づかぬうちに観客自身の話になっていく。自分だったらという領域に入っていくんです。ただそれがキレイごとではなく、自分の膿みたいなものを見せつけられたりもするので、どれだけの人がのめり込んでくれるか、耐えられるかという映画になっていったと思います。

――妻夫木聡さんとは3回目のお仕事ですね。

李:『悪人』をやったうえで、次に何かをするには、もっと違う色なのか、もっと発展させた形なのか、とにかくお互いにハードルがないとやりましょうということにはなかなかなれない。今回のように、自分の心に嘘を貼り付けている存在というのは、同性愛者ということも含めて、今まで彼がやったなかでは新しく複雑な役だと思いましたね。

◆森山未來、綾野剛、松山ケンイチの魅力

――疑わしき3人の男を演じた、森山未來さん、綾野剛さん、松山ケンイチさんについてお聞かせください。

李:初めて仕事をする人がいいと思いました。あとはどこかしらシルエットが似ていること。加えて彼らは共通して陰をまとっていると感じました。もちろんそれぞれに本来違うのですが、3人とも覗いてしまうことが怖くもなる裏側を抱えていそうな空気感があります。

 未來くんに関しては、深い闇と身体的な説得力のある人だと思います。身体全体で発するニオイが強い。沖縄編の彼は身体と精神が非常に両極端なバランスで成り立っている不思議な存在なので、未來くんしか考えられなかったですね。

 松山くんはこれまでどちらかというと、パキっとした役の多いイメージが強かった。線が太いくっきりした役というか。その濃いふちを全部取り払って、曖昧模糊とした松ケンが見てみたいと思いました。いなくなったとき、あれ、あいつどんな顔してたっけ? と思うような。彼も最初は何かくっきりとまとえるものを探しているようでしたが、この現場では必要ないんだと決めてからは、柔軟でしたね。

 綾野くんの今のスタンスは、ある意味なんでもやるという感じですよね。たぶん何かに染まりたくないんだろうと思います。綾野剛という役者は。初期のころの影のある役とは真逆のことをやりだして、逆に惑わすようになってきた。ただ影があるということだけじゃなく、もしかしたらこの人、全然違う側面もあるんじゃないかということを常に匂わせる。2週間で終わっちゃったので、もう2週間くらい組みたかったですね。

◆本編の写真の映像にはある仕掛けが

――3人の男の写真について、東京、千葉、沖縄編でそれぞれ写真を変えているとか。

李:はい。疑念は、自分に対する自信のなさが出発点だと思うんですよ。自分の心の中にある隙間によって、冷静によく見たら違うはずなのに、どんどん分からなくなってしまう。一度疑念が芽生えると、その人の中ではそれが事実として確立してしまう。その心境をどう映像として具体化できるかを考え、3人の要素をそれぞれの場所で微細に使い分けることにしました。

――編集の段階で変更になった部分、より強く打ち出された部分はありますか?

李:犯人が発覚する一連のクライマックスですね。脚本では、細かいテンポで三カ所が織交ざり緊張感が高まっていきます。そこを編集で、犯人を明かす直前から一つのエピソードを切り離し、ラストのシークエンスへと繋げました。そうすることで、この物語が犯人解明で終わるのではなく、その先に伝えるべきことを明確に提示できたかと思います。

<TEXT&PHOTO/望月ふみ>

『怒り』は全国東宝系にて9月17日より公開

配給:東宝

(C) 2016映画「怒り」製作委員会

女子SPA!

最終更新:9/24(土) 9:10

女子SPA!