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ボロボロの屋敷、無賃労働、村八分……夢が打ち砕かれる”地域おこし協力隊の闇”

HARBOR BUSINESS Online 9/25(日) 9:10配信

 最近、よく耳にする制度で「地域おこし協力隊」というのを耳にしたことがあるだろう。

 総務庁の施策ではじまったこの制度、田舎暮らしを体験でき、しかも月額17万ほどの月給ももらえるオイシイ制度だ。この制度の甘い水にまんまとはまってしまった人々の声を聞いてほしい。

◆朽ち果てた家、それなにのに寮費8000円

「もちろん僕だって夢を持って移住してきたんですよ」と語るのは埼玉から九州の某県に地域おこし協力隊としてやってきた男性Aさんだ。

 都会での暮らしに疲れ地方移住を希望する人々には制度はとても魅力的に見えたという。ところが……。

「まず『早く来てくれ』というので引っ越し代の高さを気にせず、一番ハイシーズンの4月に50万円近くかけて家財ごと九州に上陸しました。けれど行ってみたら家がなかったんです」

 Aさんは独身だが長い一人暮らしの間に家財が増え、2DK分の荷物があった。にも関わらず、受け入れ先に荷物を置く場所どころか住む場所もなかったというのだ。

「地域おこし協力隊の受け入れの初年度だったんです。だから隊員は募集したけれど、実際のことはなにも決まっていませんでした。無理やり家財をその村の体験住宅と呼ばれる空き家に移されました。あとで俺たちが運んでやるから大丈夫とかいうんですよ。壊れたりぶつけたりされたら困るので厳重な輸送ができる高い引っ越しパックを選んだのに台無しですよ。行って10日経ったら、別の家に引っ越せと命令されました。それが体験住宅とは比較にならないほど酷い物件で(苦笑)」

 体験住宅は都会から田舎に移住したい人のための一時的な宿泊施設だ。ひと通りの家具が備えられていて清潔、トイレも水洗完備であった。しかし、引っ越しを命じられた先は違ったという。苦笑するAさんは続ける。

「引っ越した先、つまり隊員の宿舎になったところは、まず畳が腐ってましてね。いつ畳替えしたかわからないような畳で歩くと沈むんです。壁も壁紙が破れていてひどい有様でした。トイレはもちろんボットン便所、ここいらじゃ汲み取り率も高いのでそこはしょうがないですけど」

 その地区では個人で居住者が家を借りようとしても、見ず知らずの人には貸してはくれない。崩れかけた家でも家賃は5万円というのが相場だ。田舎なのでワンルームマンションなどは極めて少なく、新築ワンルームの家賃は9万円と都会並みだ。

 Aさんが与えられた住宅は、昭和半ばに人口増加した頃に作られた県の元教員住宅だったという。人口減少でいらなくなったまま放置されていたもので、コンクリート造りとはいえ築40年はゆうに越えている。汚いなら自分で改装すれば……と思っても、これがお役所仕事でそうもいかない。住宅の管轄が村にないため、修繕には県の許可が必要なので触ってはいけないと決まっているそうだ。

 もちろん、移住受け入れに熱心で受け入れ体制がしっかり整っている地域もある。しかし、地域おこし協力隊が流行していることで「隣の村でもやっているからうちの村も」程度の認識で都会から人を呼び寄せてしまう自治体も少なくない。そのため、日本各地の地域おこし協力隊からは、こうした貸し与えられる住居への不満が噴き出してくるのだ。

「二階建てで50平米近くあるけれど、一階は汚くて使いたくなかった。この状態では役場でもとても歓迎されている気にはなりませんでしたね。3年近く住んだけど協力隊の期間が終わったら他の地域に移住し直します」

◆地域おこし協力隊はヒエラルキーの一番下

 中国地方に赴任したBさんは、やる気満々で行ってみたら仕事がなかったというクチだ。地域おこし協力隊としての仕事で募集がかけられていたにも関わらず、である。

「仕事? 村役場の仕事を手伝うという前提でしたが、都会から来たそこそこの社会人が働くような職務はないんですよ。その上、役場の中じゃ地域おこし協力隊は自分たちの仕事を増やす厄介者としか扱われませんでした。もちろん本人のキャラクターもありますが、何かしようと思い立っても協力してくれる人がいない。役場は目新しいことは地域おこし協力隊にやらせない。『お金がないから無理』と必ず言われます。地域支援員という名前で村を車で視察するだけです。若者なら用事も頼みやすいけれど40過ぎた男性が移住しても針のむしろですね」

“田舎の村を俺たちが変えてやる”というドラマのイメージで広がった地域おこし協力隊。ほんの少しの成功例は大きく報道されるが、うまくいかなかった事例は広がらない。仕事どうのこうのよりも、田舎に若者が来るだけで役場も地元も満足してしまい、それ以外には求められていないのが実態なのだ。

「右も左もわからないから聞きたいのに、『面倒を起こさないでくれ』としか扱われない。役場の職員、役場のパートの下、移住しただけで役場に就職したわけではないと思っていますが、給料は国から出るけれど、他の管轄は村役場。役場のアルバイトと同じ扱いになり、保険証とか年金が適用されます。でも田舎では役場で働くにはコネがないと無理。だから役場全部が身内みたいなんですよ。そこにコネもないヨソモノがぽつんと 入ってみたらどんなことになるかあなたにだってわかるでしょう?」

 中には、役場の職員に好かれようと、自分の勤務時間をすぎても職員の仕事を夜中まで手伝おうとする人もいる。ただ働きさせられても役場では依然として一番下の階層のままだが、そこまでしてやっと役場の人に心を開いてもらえるという。当然、協力隊メンバーが仕事を手伝ったとしても無給である。

 悲しいかなこうした「地域おこし協力隊はボランティアなんで何でも手伝ってもらえる」という雰囲気を悪用するブラック自治体は多数存在している。村にしてみれば、無料の働き手。結局、Bさんは3年間仕事らしい仕事もなく、成果を出せず、この8月に3年の期間が終了。東京に戻るそうだが、40近い年齢で3年のブランクの再就職は難しい。

 夢と希望にあふれた「田舎でのんびり暮らす」のキャッチフレーズで募集されている地域おこし協力隊制度。蓋を開いてみれば、ブラック自治体のやりたい放題になっているのは衝撃的だ。

<取材・文/小手平走歌>

ハーバー・ビジネス・オンライン

最終更新:9/26(月) 12:45

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TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

北朝鮮からの脱出
北朝鮮での幼少時代、『ここは地球上最高の国』と信じていたイ・ヒョンソだったが、90年代の大飢饉に接してその考えに疑問を抱き始める。14歳で脱北、その後中国で素性を隠しながらの生活が始まる。 これは、必死で毎日を生き延びてきた彼女の悲惨な日々とその先に見えた希望の物語。そして、北朝鮮から遠く離れても、なお常に危険に脅かされ続ける同朋達への力強いメッセージが込められている。