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『おそ松さん』サントラは大傑作!アニメを見てなくてもうなる音楽の自由さ

女子SPA! 9/25(日) 16:20配信

 思わぬところで、大傑作に出会うものです。ある晩、本を読みながらテレビをつけていると、やたらタイトなベースラインと打楽器の絡みが流れてきたのです。ひょっこりひょうたん島みたいにひょうひょうとした曲調と、豪快に鳴り響くホーン。

“おかしい。『CDTV』でこんなかっこいい音楽が流れるはずがない!”

 あわてて画面に目をやると、アニメ『おそ松さん』のサントラ(9月7日発売)だと判明。リードトラックの「おそ松さん!」に、心奪われてしまったのです。

◆アニメを見てなくても、楽しすぎるサントラ

『おそ松さん』はアニメもマンガもノータッチの筆者。不明を恥じつつ、2枚組サントラをゲットしたところ、これがまためくるめく音楽の大図鑑。最初から最後まで楽しすぎる一枚でした。

 ぱっと聞き取れるだけでも、クラシック、ジャズ、ブルース、シャンソン、ヘビメタ、エレクトロ、演歌、挽歌、ゲーム音楽に、北島三郎や中島みゆきのパロディ。挙句には、クリスマスキャロルまで。文字通り、何でもアリ。

 たとえば「OSO」(1枚目 トラック25)は近年のカニエ・ウェストを思わせるサウンドスケープですし、「土下座」(1枚目 トラック31)を聴けば、ピンクパンサーが浮かんでくるといった具合で、とにかく扱っている音楽の幅が広いのです。

◆音楽好きがうなる、音楽の大図鑑

 さらに興味深いのは、アレンジの妙味。

「実松さん」(2枚目 トラック26)のあとに「十四松と概念」(2枚目 トラック27)を聴いて、どちらも同じメロディを元に作られていると気づく人はどれだけいるでしょうか? 短調と長調の違い。リズムパターンや楽器の構成が違えば、曲もまるごと変わってしまうことを、改めて教えられる。

 そんな音楽のレッスンがエンターテイメントになっているのですから、もう至れり尽くせり。

 でも、色々なジャンルや手法を取り入れているからといって、とっちらかっているわけではありません。バラエティに富みながら、演奏の質には統一感があるのですね。

 それは、「シェーWAVE ED」(1枚目 トラック6)によくあらわれているところ。ほとんどイージーリスニングのようなジャズなのですが、この処理の仕方に、凛としたユーモアが感じられる。アメリカのヒップホップユニット・OutKastの名盤『Speakerboxxx/The Love Below』にある「Love Hater」という曲とセンスが通じ合っているように感じます。

◆「ボツになってもいいから無駄に色々作ってみたい」

 そうしたディテールは抜きにしても、このサントラには教えられることがあります。それは、アニメ制作者からの依頼があったからこそ、この音楽的な自由が生まれたという事実。つまり、制約が作曲家を刺激したのではないでしょうか。

 アルバムのライナーノーツで、作曲を手掛けた橋本由香利はこう語っています。

「ボツになってもいいから無駄に色々作ってみたい(笑)と思わせるシナリオやコンテからのパワーを常に感じていました」

 というわけで、一人の作曲家からここまで豊かな音楽を引き出したアニメ『おそ松さん』のポテンシャルに、今さらながら興味津々なのです。

<TEXT/音楽批評・石黒隆之>

女子SPA!

最終更新:9/25(日) 16:20

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