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マジック点灯、2度目の先発。5回無失点。でも――お笑い芸人・杉浦双亮の挑戦記〈27〉

BEST TIMES 9/26(月) 18:00配信

■突然訪れた先発マウンド

 9月9日、金曜日。
 僕は二度目の公式戦先発をした。前回の先発登板から約3週間。この間、僕は一度もマウンドに上がることがなかった。

 まずコンディションが上がってこなかった。初めての先発のとき、試合中から腕が攣るという初めての経験をしたことを書いたけれど、その後も腕の張りが引かず、よくなったと思ったら下半身に張りが出たりと、なかなか体の調子が戻らない。キャッチボールだけは続けていたが、ブルペンには入れたのは8月30日のことだった。

 ようやくマウンドに上がれる状態になれたのに、今度は芸人としてだいぶ前から決まっていた仕事があり9月1日からチームを離れなければならなかった。

 体のことも芸人のことも自分のことだから、愛媛マンダリンパイレーツには迷惑を掛けてしまったとしか言えない。だから、体も少しずつよくなり、チームに戻ってからはなんとかチームに役立てるようなピッチングを見せたいという思いだった。

 9月7日のこと。
 加藤ピッチングコーチがやってきて、「9日、先発で行くぞ」と告げられた。2日後だ。正直ビックリした。基本的に、先発はもう少し早い段階で伝えられる。
 ただこの時期、それまで素晴らしい活躍を見せていた先発投手陣が、打ち込まれることがあったのも事実だった。前期優勝に続き、後期も首位争いをしていたが、その後のいろいろな計算をしても先発投手が足りないことは想像できた。
 そこで、白羽の矢が立ったのだろう。
 びっくりしたし、時間がないことは不安だったけれど、一方で「戦力」として認められ始めたのかもしれない、という思いもあった。急な登板であっても、谷間であっても、そういうときにマウンドに立つ存在としての役割を担えるのではないか、という思いだ。

■正田樹投手の後押し

 後から聞いた話では、この先発起用には正田(樹)ちゃんの後押しがあったようだ。6日に正田(樹)ちゃんとキャッチボールをしたのだけれど、そのときいい球が来ている、と感じてくれたようで正田ちゃんが、加藤コーチに「きのう、ソウスケさん良かったですよ」と、伝えてくれていたらしかった。

 いろいろなことが重なりあって登ることになった二度目の先発マウンド。敵地に乗り込む一戦、対戦相手は高知ファイティングドックス。

 チームは、前日に優勝マジック5がついたばかりで、大事な試合だった。やるしかない、そう思いながらも、そんな一戦に僕が先発することでファンの人は「なんでだよ」「大丈夫か」と思われているんじゃないか、そのプレッシャーが相当あった。

 一方で妙なめぐり合わせもあった。高知ファイティングドックスの先発が丸山投手――彼は、僕と同じトライアウトで合格し入団した選手で、最初は練習生だったものの後期からその実力を発揮し、好投を続けていた。なにより、トライアウト中もっともよく話した選手だった。

 プレッシャー、不安、運命。
 いろいろな感情があるなかで試合の火蓋は切って落とされた。
 その日、高知は9月9日にちなんで「99円デー」と称し、サワーやビールがすべて99円というイベントの日で、外野席以外のすべての席がうまっているような、異様な雰囲気を放っていた。

 初回から僕の球は荒れていた。いきなり2四球を与えピンチを背負った。
 なんとか無失点にしのいだものの、2回以降もペースは変わらなかった。スピードも122キロ止まりで変化球もなかなか決まらない。調子がいいとはいえなかった。

 ただ、守備陣がすごかった。ライトの白方選手がライト線に飛んだ長打コースの当たりをダイビングキャッチでアウトにしてくれたり、センターの林選手も左中間のヒットをセカンドで刺してくれた。

 全員が闘志をむき出しにしてプレーし、盛り立ててくれていた。

 ちなみに白方選手はつねづね「ソウスケさんに1勝をプレゼントしたい」と言ってくれる、頼もしい選手だ。この試合もファインプレーに加えて、先制タイムリーを打ってくれるなど、その言葉どおりのプレーを見せてくれて、僕に勇気をくれた。

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最終更新:9/26(月) 18:00

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