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シリアで再び、東アレッポで大虐殺が進行中

JBpress 9/26(月) 6:15配信

 シリア北部の大都市アレッポで、今まさに大虐殺が進行中だ。包囲された町に暮らす25万人の人が、凄まじい空爆で殺戮されている。

 シリアでは、米露が協議して仲介した一時停戦が9月12日からスタートしていた(アサド政権による空爆は一部で継続されていた)。だがその後、同17日にシリア東部で有志連合がアサド政権軍を誤爆する事件が発生すると、同19日にアサド政権は停戦終了を一方的に宣言。すぐさま各地での無差別空爆を再開した。

 この空爆には、アサド政権の同盟軍であるロシア軍も参加している。空爆はきわめて大規模なもので、アサド政権とロシア軍が一時停戦を新たな作戦の準備に利用していたことが窺える。

■ 支援物資の運搬車列が攻撃されて大炎上

 この一時停戦は、各地で包囲されて孤立している住民に、国連機関や援助機関が救援物資を届けることを第一の目的としていた。とくに問題となっていたのが、アサド政権に完全に包囲されている東アレッポである。そこでは25万人もの住民がアサド政権による兵糧攻めで危機的な状況に陥っていた。

 ところが、停戦中もアサド政権は救援物資の通過を認めず、多くのトラックがトルコ国境で足止めを食っていた。それでもなんとか、物資の搬入が合意され、作業が開始されようとしたその矢先、大事件が発生する。アレッポ西方の赤新月社の施設に停車中の車列が攻撃されて大炎上、スタッフ12人が殺害された。国連機関や赤新月社の人道支援物資を運ぶ車列が攻撃されるという異常行動だった。

 この攻撃に対し、現地をモニターしているアメリカは、攻撃がロシア軍によるものであると非難。同22日には、ダンフォード統合参謀本部議長が米上院公聴会で「同時刻に現場の上空にロシア軍の戦闘爆撃機(Su-24)が2機飛行していた。そのロシア軍機がやったということだ」と証言した。意図的に偽情報を証言した場合、当然ながらダンフォード議長は厳しく責任を追及されることは必至である、彼はそれなりに情報に自信を持っているのだろう。

 他方、ロシア側は真っ向から否定した。ロシア国防省の報道官は同20日、「空爆の証拠はない。シャーム・ファタハ戦線(イスラム系反体制派)の砲撃だ」と主張。さらに翌21日には「当時、有志連合の無人偵察攻撃機『プレデター』が上空を飛んでいた」と発表し、有志連合による空爆を示唆した(無人機の展開についてアメリカは否定)。

 米露の主張が食い違っているが、現場で攻撃を受けた側からは、戦闘機とヘリからの空爆だったという目撃証言が出ている。当時、上空を飛行していた戦闘機は前述したとおり、ロシア軍の戦闘爆撃機であり、ヘリはアサド政権のものだろう。

 (参考:‘Why did they wait to kill us? ': How the attack on the aid convoy near Aleppo unfolded/「ワシントンポスト」電子版/9月24日)

 決定的だったのは、被弾現場からはロシア製の「OFAB 250-270爆弾」と「S-5空対地ロケット弾」の破片・部品が見つかったことだ。これはロシア軍かアサド政権しか使っていないもので、少なくともどちらかによる空爆であったことを裏づけている。

 前述のようにロシア軍戦闘爆撃機とアサド政権のヘリの共同作戦だった可能性もきわめて高い。シリアではロシア軍とアサド政権は完全に共同作戦を実施しており(指揮権はむしろロシア軍側にある)、この攻撃も、ロシア軍かアサド政権かを問うのはまったく意味がない。ロシア=アサド軍による軍事行動ということである。

■ 国益のために積極的に「嘘をつく」ロシア

 このように、米露の主張が食い違うということはよくあることだ。いわば情報戦である。

 ただし、情報戦というと、米露が同じように偽情報を拡散しているようなイメージを持つ人もいるかもしれないが、現実はそうではない。

 アメリカ側では、前述したように国の責任ある立場の人間が「事実ではないと知っていながら偽情報を主張」した場合、議会やメディアから厳しく個人の責任が追及される。たとえば、仮に車列攻撃が有志連合側によるものが後に明らかになった場合には、ダンフォード議長は進退問題にまで追い込まれる可能性がある。

 したがって、誤情報はあり得るものの、意図的な偽情報の流布は大きく制限される(この点に関して、反米陰謀論の界隈からは、イラク戦争の元になった大量破壊兵器疑惑を米当局の意図的な捏造と誤認している例が散見されるが、事実は情報活動の不備による誤認識である)。

 それに対し、ロシア側ではプーチン政権が議会もメディアも完全に支配しており、国の責任者が「嘘をつく」ことに対して障害が存在しない。それをロシア国内で指摘する人がいたら、むしろその人物は解雇されたり、もしくは不審死を遂げたりすることになる。

 しかもプーチン大統領は国益追求の戦略として、「内外に嘘をつく」戦術を積極的に採用している。

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最終更新:9/26(月) 6:15

JBpress

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