ここから本文です

欧州で広まる完全菜食主義の弊害

Wedge 2016/9/27(火) 12:20配信

 今年8月、イタリアで、子供に完全菜食を強いる親に対し、禁固刑の罰則を与えるという変わった法案が議会に提出された。肉や魚を食べない人を菜食主義者の「ベジタリアン」と呼ぶのに対し、肉や魚だけでなく、卵、バター、はちみつなど、動物搾取による製品も食さない人を完全菜食主義者の「ビーガン」と呼んでいる。

 つまり、イタリアでは、子供に肉、魚、卵などを与えないビーガンの親は、法律で罰せられるべきという議論が持ち上がっているのだ。なぜ、このような法が提案されるに至ったのか。

ビーガンブームで栄養失調になる子供たち

 法案の中心的存在となったフォルツァ・イタリア党(FI)のエルビラ・サビーノ議員は、こう説明する。

 「ここ数年、イタリアでは、ビーガンが人間にとって、著しく健康に良いという考えが普及した結果、動物性の食物をすべて取り除いた食事を子供たちに強要する傾向が見られるのです」

 このブームが影響し、ここ最近では、乳幼児や2歳の子供たちが栄養失調で病院に運ばれ、時には、危篤状態に陥る事態などが発生。幼少時に必要なプロテイン、ビタミンD、B12、カルシウム、オメガ3、鉄分などがビーガンには足りないという問題が危惧されている。

 ビーガンの歴史は、1944年11月1日にイギリス人のドナルド・ワトソンが設立した「ビーガン協会」に遡る。人間は、動物に頼らずに生きるべきという理念から生まれた。英歌手・ポール・マッカートニーを始め、米男優のブラッド・ピットや同女優・グウィネス・パルトロー、クリントン元米大統領といった著名人が完全菜食主義者として知られている。

「ビーガン主義は態度である」

 すでに70年以上の伝統を持つビーガン主義は、このように世界各国に広まりつつあるが、彼らは食生活以外にも、動物保護を基盤にした生活様式を心がけている。

 スペインの非政府組織「ディフェンス・アニマル」のカルロ・ピノ代表は、「ビーガン主義は、ダイエットではない。それは態度である」と主張。「人間1人ひとりが敬意を持って生活するスタイル」と捉えている。

 動物愛護団体「ピタ」(イギリス支部)のベン・ウィリアムソン広報官は、「04年から、欧州連合域内での動物実験を禁止した。化粧品会社も、この案件にリストを連ねるようになった」と語る。アパレル産業についても「絶滅の危機にある動物が、今日のファッション雑誌に登場している」と懸念を抱いている。

 革製品や動物性成分を含む化粧品なども排除するビーガン思想は、食生活以外にも、こうしたさまざまな分野に展開している。このブームが、社会に意識変化をもたらし、肉食でも完全菜食を経験しようとする人々が増えている。

1/2ページ

最終更新:2016/9/27(火) 12:20

Wedge

記事提供社からのご案内(外部サイト)

月刊Wedge

株式会社ウェッジ

2017年2月号
1月20日発売

定価500円(税込)

■特集 トランプに賭けた未来
・トランプ・ショック震源地をゆく
・米国製造業復活の鍵を握る日本人
・利益相反が懸念されるトランプ政権

天皇陛下の退位 専門家の提言

天皇陛下の退位をめぐり政府が設けた有識者会議は年明けにも、論点整理を取りまとめる。
憲法や皇室問題に詳しい専門家の提言とは。