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米大統領候補・第一回討論会での注目点とは --- 安田 佐和子

アゴラ 9/27(火) 16:30配信

バロンズ誌、今週はメディア業界の再編を促す。槍玉に挙がったのは、6位のバイアコム。前週にトム・ドゥーリー暫定最高経営責任者(CEO)が11月半ばに退任する方針を発表、同時に未公開の映画(恐らく”Monster Trucks”)で1億1500万ドルを償却したパラマウント・ピクチャーズの維持を表明したため売却騒動が持ち上がっている。バロンズ誌は、シナジー効果を踏まえ2005年にスピンオフした親会社CBSへの買収の可能性を伝えた。詳細は、本誌(http://www.barrons.com/this_week?cb=logged0.15902206427418153)をご覧下さい。

当サイトが定点観測するアップ・アンド・ダウン・ウォールストリート、今週のテーマに米大統領候補による第1回討論会を掲げます。抄訳は以下の通り。

視聴必至、クリントンVSトランプの第1回討論会―Must-See TV: Clinton vs. Trump, Round One

“The Rumble in the Jungle” (モハメド・アリVSジョージ・フォアマンによる1974年の戦い)や“The Thrilla in Manila”(モハメド・アリVSジョーフレイザーによる1975年の戦い)などボクシングの名試合ほどの死闘を繰り広げるかは別として、26日にニューヨーク州ロングアイランドで幕明けする第1回米大統領候補の討論会は注目に値する。視聴者数は1億人とスーパーボウルの1億1200万人にのぼる見通しで、ざっと3人に1人がチャンネルを合わせる公算だ。

ダニエル・クリフトン氏率いるストラテガスの政治チームによると、2012年のオバマ米大統領とミット・ロムニー候補の視聴者数は6700万人、2008年のオバマ候補VSジョン・マケイン候補は5240万人だった。今回の討論会は直近の2回だけでなく、1980年に打ち立てたロナルド・レーガン候補とジミー・カーター候補の8060万人の記録を塗り替えるだろう。

討論会では政治的に材料視されるだけでなく、投資家心理にも影響を与えうる。コンバージェックスのニコラス・コラス主席マーケット・ストラテジストは「クリントン候補が製薬大手マイランの”エピペン”に対しコメント(筆者注:値上げが過剰として批判した)した結果、バイオ関連が急落した」と指摘。結果、株価収益率(PER)は13.2倍と、そのほか製薬セクターを20%下回る羽目になった。

医療保険制度改革(オバマケア)も、主要な議題となるだろう。トランプ候補は撤廃と差し替えを、クリントン候補は堅持と拡大を目指す。エネルギーについても、時間を割くだろう。コラス主席マーケット・ストラテジストいわく、トランプ候補は連邦政府管轄の土地での石炭掘削などの禁止解除とクリーン・パワー・プラン(CPP、発電所からの二酸化炭素排出を規制する案)の撤廃を求め、クリントン候補はCPPの維持・実行・拡大を進める。またパリ協定をめぐりトランプ候補は脱退を主張、クリントン候補は支持する状況だ。

税制をめぐっても、激しいバトルが展開されるだろう。相続税率は現状で40%のところクリントン候補は5億ドル以上(夫婦で10億ドル)で65%、5000万ドル以上で55%、1000万ドル以上に50%を課すと提案済みだ。また相続税適用免除の水準を従来の545万ドルから350万ドルへ引き下げる。トランプ候補は反対に排除を狙う。さらにクリントン候補案では、過去の資産額を現状の価値で計算される点がポイントだ。つまり20年以上前にアップル株を取得した者が亡くなった場合、資産は現状のアップル株価で算出されそれに対し相続税が掛かるという。クリントン候補案は共和党が過半数を占める米下院で通過できず、トランプ候補案は民主党が多数派に躍り出る公算が大きい米上院で躓く見通しだ。

忘れてならない議題こそ、貿易である。両候補とも環太平洋パートナーシップ協定(TPP)に反対の立場を採り、中国に対してはクリントン候補が外交問題として取り上げトランプ候補は為替操作国と批判する。ただし、中国は一段の金融・財政を通じた刺激策が必要となる人民元引き上げに動くことはないだろう。

中央銀行の役割についても、議論が及びかねない。米連邦公開市場委員会(FOMC)は20~21日に開催した会合(http://mybigappleny.com/2016/09/22/fomc-review-16sep/)で、政策金利を据え置いた。地区連銀総裁の3人(http://mybigappleny.com/2016/09/22/fomc-review-16sep/)が利上げ票を投じたものの、追加利上げは米大統領選直前にあたる11月1~2日開催のFOMCより12月13~14日開催のFOMCが妥当と考えられる。

日銀は21日、金利据え置きを発表した一方で短期金利と長期金利の目標を設定する「長短金利操作付き量的・質的緩和(QQE)(http://mybigappleny.com/2016/09/21/fedsurvey-16sep/)」の導入を発表した。10年債利回りにつきゼロ%という目標を発表したことで大量に長期債を買い入れする手間が省けたと言えるのかもしれない。いずれにしても、日銀とFOMCの政策決定を経てS&P500は週足で1.2高と7月15日週以来の上昇率を遂げた。

ただし、今回の米大統領選が予想以上に接戦となり両候補とも選挙人270人を獲得できない可能性が浮上し米下院が米大統領を決断するリスクが台頭してきている。こうしたシナリオを踏まえれば、2000年のフロリダ再集計問題は些細であるかのように見えるから不思議だ。

――今回の米大統領候補によるディベートでは、健康問題をはじめ中傷合戦となる可能性が濃厚です。クリントン候補は同時多発テロ事件の追悼式典で体調不良により中途退場(http://mybigappleny.com/2016/09/12/clinton-911/)する場面が話題になりましたが、心臓外科医マホメット・オズ氏が司会の健康情報番組“ドクター・オズ・ショー”で過去の病状記録などを発表するはずだったトランプ候補側は最近の診断結果(http://money.cnn.com/2016/09/14/media/dr-oz-donald-trump-taping/)を明らかにする程度。逆に疑問を煽ったことも事実です。脛に傷を持つ2人がどのような論戦を張るのかも、注目。クリントン候補の泣き所であるeメール問題やクリントン財団をめぐる疑惑、トランプ候補の長所であり短所でもある暴言問題をはじめ選挙事務所の家賃問題(http://edition.cnn.com/2016/08/23/politics/trump-tower-rent/)(正式な共和党の大統領候補になってからトランプ・タワーに構える選挙事務所の家賃を3万5458ドルから16万9758ドルと500%以上も引き上げ、寄付金で私腹を肥やしているとの疑惑)、確定申告問題など、2人には攻撃材料がふんだんに存在します。どこまでの泥仕合が繰り広げられるのか、少なくとも世紀の討論会として人々の記憶に残ることは間違いありません。

ちなみに、クリントン候補が米国の若手で絶大な人気を誇り映画”ハンクオーバー”シリーズで有名なザック・ガリフィアナキスのトークショーに出演した内容はこちら(http://abcdane.net/site/moviestv/2016/09/ZacG-Hirally-interview.html)。「トランプ候補が大統領になったらキッド・ロック(保守派のロッカー)が国務長官に就任すると思うのですが、あなたはカナダに移住しますか?」など舌鋒鋭い質問内容がシュールな笑いを誘い、必見です。クリントン候補が「インタビューを受けたことを後悔しているわ」とこぼすほどでしたが、同候補にとっては良い練習となったのではないでしょうか。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE - NEW YORK -」2016年9月25日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE - NEW YORK -(http://mybigappleny.com/)をご覧ください。

安田 佐和子

最終更新:9/27(火) 16:30

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