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大分県臼杵市はなぜ地域包括ケアを実現できるのか

JBpress 9/27(火) 6:10配信

 少子高齢化は、高齢の入院患者や要介護者の増加を招き、病院や介護施設の不足を生んでいる。結果、これまでのように特定の施設で1人のケアをすべて行うのは難しくなりつつある。

 一方、高齢者が可能な限り住み慣れた地域で適切な医療や介護、生活支援などのサービスを受けながら、いかにして自立して生活することができるかが重要なポイントとなってきた。そこで、地域の行政機関や医療機関、介護福祉施設など、関係する様々な機関が連携して医療や介護を行う「地域包括ケア」の必要性が叫ばれている。

 ただし、高齢者が自立して生活するためには、そうしたケアのみでは必ずしも十分ではない。高齢者が地域の人々と交流し、また地域が高齢者を支え合う仕組みも必要である。しかし、少子高齢化はこうした支え合いの基盤であった、町内会や自治会といった既存の「地域自治システム」の消滅を招いている。

 そんな逆風の中、地域の人が主体となって連携の新しい仕組みづくりに成功した場所がある。大分県臼杵市だ。行政と医師会のキーパーソンたちが中心となって、医療・福祉において、あらゆる機関が連携したネットワークを構築した。また、地縁にもとづく新たな支え合いの仕組みを作り出すことで、高齢者が住民に見守られながら生き生きと生活することのできる環境を生み出したのだ。

 臼杵市の取り組みとは、どんなものなのか。行政学や地方自治論を専門とする國學院大學法学部の稲垣浩准教授の話を元に紹介したい。

■ 「日本の20年先を行く」臼杵市

 ──臼杵市では、行政と福祉、医療などの機関が連携し、新たなネットワークを構築したと聞きます。まずは、なぜこのような動きが起きたのか、背景から教えてください。

 稲垣浩氏(以下、敬称略) 大分県は、高齢化率が県平均で28.6%と高い地域です。その中でも臼杵市は、高齢化率が34.4%と非常に高く、2024年には41.4%に達すると予想されています。このような理由から、高齢化社会において「日本の20年先を行っている」と言われるほどの状況でした。

 そこで問題となるのが、病棟ベッドの不足です。

 ──どういったことでしょうか。

 稲垣 高齢者が増えれば、入院患者も増加します。その結果、臼杵市はすでに病棟ベッドが足りない状況となっていました。そうなると、病院が福祉や行政のいろいろな機関と連携して、1人の患者がさまざまな形で医療を受けられる体制を構築しなければなりません。

 これは数年前から、日本全体が取り組むべき課題とされてきました。臼杵市は早い段階で、「地域包括ケア」のシステムづくりに着手したのです。

 ──それが“新たなネットワーク”ということでしょうか。

 稲垣 そうですね。従来、地域の医療機関と自治体、あるいは福祉と医療などの間の連携が取れていない自治体は多く見られてきました。例えば高齢者の介護は、病院施設という枠組みの中で行われる分に大きな問題はありませんが、自宅での介護など、枠組みがなくなれば関係機関の連携がカギになります。いかに行政と医療・福祉が連携し、情報を共有できるか。そこで、ネットワークを作るべきという機運が高まったのです。

■ 毎週の「ケア会議」が生む、ジャンルを超えた情報共有

 ──そのネットワークの仕組みを教えてください。

 稲垣 核となるのは、「地域ケア会議」の実施です。週に1回、各機関から関係者が集まり、対象となる患者について、今後のケア方針を話し合います。

 出席する関係者は幅広く、理学・作業療法士から管理栄養士、歯科衛生士、保健所、市役所、介護施設などのサービス事業所、ケアマネージャー、包括支援センターまで含まれます。そして、対象の患者1人につき30分ずつ、全員で現状を共有し、今後の計画を議論します。1回の会議で3~5人について話し合うようです。こうして連携を可能にします。

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最終更新:9/27(火) 6:10

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