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「ぼろ」に和む 森山直太朗、曲に重ねるシンパシー

NIKKEI STYLE 9/28(水) 7:00配信

 著名人が、お気に入りのモノについて語る連載「私のモノ語り」。今回の語り手は、「さくら(独唱)」や「夏の終わり」などタイムレスな名曲を紡ぐシンガーソングライターの森山直太朗さん。今年でデビュー15周年を迎えますが、節目を迎える前に「小休止」として約半年間は音楽活動から離れた時期も。その時に縁あって「山小屋」を手に入れたことから、近年は美術的な価値やファッション性が再評価されているという「ぼろ(BORO)」と出会いました。歴史が感じられる古布に、森山さんはどんなシンパシーを感じ取ったのでしょうか。

■憧れだけで手に入れても持て余すのではと思っていたけど

「ぼろ」とは主に東北地方などで、何世代にもわたって、布きれを幾重にもつなぎ合わせて使い続けてきた布のことで、野良着や肌着、寝具まで用途は幅広い。近年は無作為につなぎ合わされた様子がデザインとして優れているとして、ヨーロッパをはじめとする世界中のアーティストやファッション関係者からも「BORO」として注目を集めている。「襤褸」とも書く。
 最初に「ぼろ」を手に入れたのは去年の秋の初めごろ、骨董市でした。それから市に通っては、少しずつ買い足しています。本当はどれも愛着があるので全部持ってきたかったんですが、スタッフに「そんなに持ってこられても……」って冷たい目で見られるのが怖くて踏みとどまりました(笑)。

 藍などで染めた布きれを幾重にもつなぎ合わせた古布である「ぼろ」は5、6年前から気になっていました。HOLLYWOOD RANCH MARKETやOKURAなどを展開する聖林公司さんをはじめ、僕が日ごろからお世話になっているファッションブランドがあるんですが、店舗では季節ごとにディスプレーをしますよね。そこで「ぼろ」を使っているのを見る度に言葉にならないシンパシーを感じていました。
 ただモノって必要、必然性が生まれて初めてつながりができます。もう40歳だし、憧れだけで購入しても持て余してしまうだろうと思って手を伸ばさずにいたんです。

 ですが、思いがけなく(スタッフからの提案で)去年の秋から「小休止」に入ることになり、そのときにかねてより探していた山荘を手に入れることになりました。中古物件だったんですが、部屋の中に大きなケヤキの一枚板のテーブルがどんと鎮座していて、その存在感がとても大きかったんです。

 ケヤキのテーブルは、山荘のオーナーさん自らが地元の材木屋を巡って手に入れたこだわりのテーブルだと聞いていましたし、それを取り外してソファを入れるのはなんか違うなと。それって、トラディショナルな名曲のカバーを聴いたときに似てるなと思いましたね。個々の感覚だから一概に言えませんが、時折「どうしてこうしちゃったのかなぁ」ってなんとも言えない気持ちになることもあります。オーナーこだわりが詰まったケヤキのものを取り外してまで、僕はその山小屋を手に入れる意味はないなと思ったんですね。

……すみません、なかなか「ぼろ」の話に行き着かなくて(苦笑)。でも、このくだりがないと僕と「ぼろ」の出会いも無意味なものになってしまうので、もう少しだけお付き合いください。

 で、そのケヤキの一枚板の大きなテーブルを残すと決めたのですが、主張がとても強く、その卓のせいでいかんせん和風に見えてしまう。どうしたら僕らしくアレンジできるだろうかと思いあぐねていた時に、ふと浮かんだのが「ぼろ」でした。

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最終更新:9/28(水) 7:00

NIKKEI STYLE

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