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洋楽、邦楽、タイポップスも? ハロプロによるカバー楽曲を振り返る

リアルサウンド 9/28(水) 14:00配信

 カントリー・ガールズの4枚目となる両A面ニューシングル『どーだっていいの/涙のリクエスト』がリリースされた。「どーだっていいの」は中島卓偉の作詞作曲によるオリジナルナンバーだが、「涙のリクエスト」は男性7人組グループ、チェッカーズが1984年に2ndシングルとしてリリースしたヒット曲のカバーだ。

 過去の名曲カバーはポップス界における一手段だが、ハロプロにおいてもカバー楽曲はこれまでいくつも発表されてきた。今回、カンガルのカバーが出たこのタイミングで、過去のハロプロ楽曲におけるカバー曲を振り返って、その傾向を考察してみたい。

 シングルのほかにアルバムでもカバー曲はいくつかあるが、今回はシングルのみに的を絞って考えていく。また、同じハロプログループからのカバー、つまりハロプロオリジナル楽曲の共有カバーは除外して考える。ハロプロのシングルにおいてカバー曲は、これまで43曲あった(2016年9月末時点)。それらは傾向別に8個のカテゴリに分けることができる。

<01.洋楽>

・卒業 ~TOP OF THE WORLD~/平家みちよ(1998)
・サン・トワ・マミー/後藤真希(2002)
・サン・トワ・マミー (Musical Version)/後藤真希(2002|c/w曲)
・月影のナポリ (Tintarella Di Luna)/W(2004|c/w曲)
・悲しき16才 (Heartaches At Sweet Sixteen)/W(2004|c/w曲)
・ジンギスカン/Berryz工房(2008)
・ジンギスカン タルタルミックス/ジンギスカン×Berryz工房(2008)
・ランラルン ~あなたに夢中~/カントリー・ガールズ(2016)

 ハロプロの歴史上、一番最初のカバー曲は平家みちよの2ndシングルだった。アメリカの兄妹デュオ、カーペンターズの代表曲のひとつ「Top of the World」をシャ乱Qまことの訳詞でカバー。

 「サン・トワ・マミー」の原曲はベルギーの歌手サルヴァトール・アダモが歌ったシャンソンだが、日本では岩谷時子の訳詞により越路吹雪が歌ったバージョンが有名で、後藤真希のカバーもこの訳詞で歌唱している。

 「月影のナポリ」「悲しき16才」もそれぞれ原曲はミーナ・マッツィーニ、ケーシー・リンデンだが、森山加代子、ザ・ピーナッツが歌ったバージョンの方が有名だろう。戦後の邦楽シーンでは外国曲をカバーしてレコード発売するのが主流だった時期があり、これらの楽曲はその流れの中に位置付けられる。

 「ジンギスカン」はドイツの同名グループが70年代末に放ったディスコヒット曲。「ランラルン ~あなたに夢中~」は文脈が少々入り組んでいて、大元はアメリカの作曲家ジェローム・カーンが1930年代に作曲したミュージカル用楽曲「I've Told Every Little Star」が原曲。これを女性歌手リンダ・スコットが60年代に歌ってリバイバルヒット(邦題:星に語れば)。同バージョンはデヴィッド・リンチ監督による2001年公開の映画『マルホランド・ドライブ』の劇中や、現在も放送中のバラエティ番組『マツコの知らない世界』のオープニングで使用されており、そちらで耳なじみのある人も多いはず。このリンダ・スコット版をベースに、三浦徳子が新たに作詞した歌詞で歌われているのが「ランラルン ~あなたに夢中~」である。

<02.タイポップス>

・cha cha SING/Berryz工房(2012)
・Loving you Too much/Berryz工房(2012|c/w曲)
・I like a picnic/Berryz工房(2013|c/w曲)

 この3曲も洋楽ではあるが、別カテゴリとした。3曲とも原曲はタイの歌手トンチャイ・メーキンタイのレパートリー。特に「Loving you Too much」はカバーにもかかわらずBerryz工房ファンに人気のある一曲で、今年2016年にはやはりタイ人歌手のジェームス・ジラユもカバー。つんく♂がBerryz工房版から男性目線の歌詞にアレンジし直した訳詞を提供したのがニュースとなった。

<03.60年代ポップス>

・君といつまでも/後藤真希(2002)
・涙の太陽/メロン記念日(2004)
・恋のバカンス/W(2004)
・恋のフーガ/W(2005)
・ふりむかないで/W(2005|c/w曲)

 60年代にリリースされた邦楽曲のカバーは5つ。「君といつまでも」は加山雄三の代表曲で、前述の後藤真希「サン・トワ・マミー」との両A面カバーシングルとしてリリースされた。「涙の太陽」はエミー・ジャクソンをはじめ安西マリア、田中美奈子らのバージョンも有名。「恋のバカンス」「恋のフーガ」「ふりむかないで」の3曲ともオリジナルは女性デュオ歌手のザ・ピーナッツで、それを辻希美&加護亜依のWがカバー。Wはこの他にもカバー曲を歌う機会が多く、1stアルバム『デュオU&U』は女性デュオ歌手のカバー15曲で構成されていた。

 なお、60年代にはGS(グループ・サウンズ)のブームもあったが、アップフロント提供により1999~2000年に放送されていたテレビ番組『ガレージ』(テレビ東京系)からはシングル「ガレージ・オープニングソング集」が4作リリース。モーニング娘。、太陽とシスコムーンなどのハロプロメンバーがコーラスやメインボーカルを担当して「亜麻色の髪の乙女」「ブルー・シャトウ」といったGSソングをカバーしているので、これらもハロプロ楽曲と考えることができる(今回のリストには含めなかったが)。

<04.70年代アイドル>

・ペッパー警部/モーニング娘。(2008)
・ロマンス/モーニング娘。(2008|c/w曲)
・暑中お見舞い申し上げます/℃-ute(2009)

 「ペッパー警部」はピンク・レディー、「ロマンス」は岩崎宏美、「暑中お見舞い申し上げます」はキャンディーズと、いずれも70年代に活躍した女性アイドル歌手のカバー。娘。の「ペッパー警部」カバーは、阿久悠作詞曲のカバーで全編構成された企画アルバム『COVER YOU』からの先行シングルだった。

 また、ハロプロでは2001~04年にかけて、60・70年代の邦フォーク/ニューミュージック曲をカバーする『FOLK SONGS』というアルバムシリーズが5作までリリースされていた(2009年リリースの同傾向のアルバム『チャンプル(1) ~ハッピーマリッジソングカバー集~』も含めると6作)。

<05.アニソン>

・モーニング娘。のひょっこりひょうたん島/モーニング娘。(2003)
・CAT'S EYE/キャッツ(ハート)アイ セブン(2012)
・魔法使いサリー/アンジュルム(2015)
・オラはにんきもの/こぶしファクトリー(2016)

 ハロプロ×アニソン楽曲については先日リアルサウンドに寄稿した記事「Buono!、きら☆レボから、こぶしファクトリーまで ハロプロ×アニソンを俯瞰する(http://realsound.jp/2016/07/post-8494.html)」にて解説したのでそちらを参照していただきたい。「モーニング娘。のひょっこりひょうたん島」の原曲である「ひょっこりひょうたん島」はアニメではなく人形劇番組の同名主題歌だが、キッズ向けという意味合いでこちらのカテゴリに含めた。

<06.女性歌手>

・サヨナラのかわりに/モーニング娘。(2007|c/w曲)
・笑顔/松浦亜弥(2007)
・あなたに出逢えて/松浦亜弥(2007|c/w曲)

 「サヨナラのかわりに」は、テレビ番組『おはスタ』(テレビ東京系)の1999年度出演者によるユニット“おはぐみ”が2000年にリリースした卒業ソング。おはぐみには末永遥、酒井彩名など5名による“おはガールシトラス”が含まれている。2007年2月上旬に番組内ミニドラマ『モーニング娘。の“ありがとう”を伝えたい』が放送され、その流れでのカバーだった。

 「笑顔」の原曲は谷村有美が日テレNEWS24の2006年末特番『世相』のエンディング用に書き下ろしたものだったが、それを松浦がカバーして同局のイメージソングとしてシングル発売された。そのシングルのカップリング曲「あなたに出逢えて」も、谷村の1995年発表アルバム曲のカバー。

<07.森高千里>

・ロックンロール県庁所在地 ~おぼえちゃいなシリーズ~/ミニモニ。(2003)
・渡良瀬橋/松浦亜弥(2004)
・ザ・ストレス/安倍なつみ(2006)
・ザ・ストレス (危機Version)/安倍なつみ(2006|c/w曲)
・ザ・ストレス (shakabone HIDE Remix)/安倍なつみ(2006|c/w曲)
・ザ・ストレス (アカペラVersion)/安倍なつみ(2006|c/w曲)
・この街/℃-ute(2013)
・雨/矢島舞美(2013|c/w曲)
・ハエ男/℃-ute(2013|c/w曲)
・この街 (Dance Groove Ver.)/℃-ute(2013|c/w曲)
・17才/つばきファクトリー(2016|c/w曲)
・私がオバさんになっても/つばきファクトリー(2016|c/w曲)

 モーニング娘。をはじめとしたハロプロアイドルが所属するアップフロントグループ、その事務所の先輩である女性アイドル歌手が森高千里で、後輩たちから楽曲カバーされている率が高い。バージョン違いを除けば8曲もある。「ロックンロール県庁所在地」のみ1992年のアルバム曲で、その他はすべてシングル曲。「17才」の原曲は南沙織だが、森高のカバーバージョンも有名だろう。「私がオバさんになっても」のつばきバージョンは今年音源化されたが、℃-uteの2007年の演劇『寝る子はキュート』の劇中で歌われたのが印象深いというハロプロファンも多いはずだ。

<08.男性歌手>

・ズルい女 (English Version)/ココナッツ娘(1999)
・ラーメン大好き小泉さんの唄/こぶしファクトリー(2015)
・江戸の手毬唄II/℃-ute(2008)
・桜ナイトフィーバー/こぶしファクトリー(2016)

 「ズルい女」「ラーメン大好き小池さんの唄」の2曲とも、つんく♂が所属するロックバンド・シャ乱Qのナンバーで、それぞれ英訳、ドラマ主題歌としてアレンジカバーされている。

 「江戸の手毬唄II」は五木ひろしとの競作としてリリースされたものなので、五木版が「I」、℃-ute版が「II」という意味合い。「桜ナイトフィーバー」も原曲はKANだが、こぶし版リリース前にハロプロメンバー全員でライブイベント「ひなフェス」にてカバー披露したという経緯がある。

 なお、アンジュルム「大器晩成」については、中島卓偉からの提供曲と解釈して今回はリストには含めなかった(中島のアルバム『煉瓦の家』に収録のバージョンは、アンジュルム版より先にレコーディングされたそうだ。しかしリリースはアンジュルムより後だったので、そういう意味ではセルフカバーといえる)。



 そして今回のカントリー・ガールズ「涙のリクエスト」だが、カテゴリ的には<08.男性歌手>に分類することができる。ただ、シャ乱Q・五木ひろし・KAN(・中島卓偉)はいずれもアップフロントに近しい身内的な存在であり、そこでチェッカーズのカバーというのは、どういう経緯でこうなったのかはよくわからないが、意外性があって面白い。カンガルの過去楽曲はアメリカン・ポップス調であることが多く、オールディーズをベースとした音楽性を持つチェッカーズを取り上げるというのは理に適っている。メンバー梁川菜々美のサックス演奏がパフォーマンスに組み込まれているのも同曲の注目ポイント。

 ある時期までのハロプロカバー曲は、GS/フォーク/ニューミュージック系だったり、森高などのアップフロント人脈に寄った、いってみれば保守的な印象が強かったように思う。それに比べるとBerryz工房のタイポップスや、「ランラルン ~あなたに夢中~」「涙のリクエスト」といった予想外な方面からの掘り起こしは新鮮だ。今後もカバーを行なう際はそういった良い意味での驚きを与えてくれるものに期待したいところである。

ピロスエ

最終更新:9/28(水) 14:00

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