ここから本文です

そごう柏店がついに閉店。止まらぬセブンアイ系百貨店の閉店ラッシュの背後にあるもの

HARBOR BUSINESS Online 9/28(水) 16:20配信

 流通大手「セブンアンドアイホールディングス」の「コンビニ事業以外切り捨て」が止まらない。

 2016年9月30日を以て閉店する「西武百貨店旭川店」「そごう柏店」などをはじめとした百貨店、そして総合スーパー「イトーヨーカドー」では閉店が相次ぐほか、そごう・西武では大規模な希望退職者募集、2013年に買収したばかりの通信販売大手「ニッセン」は合理化で完全子会社化、さらにショッピングセンター「アリオ」の新規出店凍結など、コンビニエンスストア「セブンイレブン」以外の事業に対して大ナタを振るう形だ。

 セブンアイがこうした大規模なリストラ策を採らざるを得なくなった背景には、「消費者のデフレマインド」に加えて「セブンアイ自体のデフレマインド」も根底にあるのではないだろうか。

◆百貨店事業の縮小続くセブンアイ

 2015年以降に発表されたセブンアンドアイホールディングスのリストラ策のうち、代表格の1つとされるのが「百貨店事業」、つまり「そごう・西武」の経営規模の大幅な縮小だ。

 「そごう・西武」は、2005年当時、西武鉄道との再合流を検討していたともされるなか、買収防衛のために大手流通傘下に入る道を選び、電撃的なセブンアンドアイホールディングス入りを果たした。一方で、近年は旗艦店以外の殆どが売上を落とし続けているという厳しい現実があった。

 そうしたなか、そごう・西武ではこれまでに2016年2月に「西武百貨店春日部店」(旧・ロビンソン百貨店春日部店)を、9月に「西武百貨店旭川店」と「そごう柏店」を、2017年2月には「西武百貨店筑波店」と「西武百貨店八尾店」を閉鎖させることを決めたほか、2017年中に中小規模のサテライト店の殆どを閉鎖、さらに希望退職者350人を募るということが判明している。このうち、西武百貨店春日部店については高級家具店「匠大塚」が出店をしたものの、そのほかの4店舗については、9月時点で今後の活用方法が決まっていない。

◆千葉県最大だった「そごう柏店」も……

 そごう・西武の事業縮小のなかで、象徴的なものの1つであると言われるのが、JR柏駅前に立地する「そごう柏店」(柏そごう)の閉店だ。

「柏そごう」は1973年10月に開店。地上14階、地下1階、3館体制で、売場面積は39,729㎡。 開店当時は千葉県最大の百貨店で、そのキャッチフレーズは「みどりのまちにお城のような百貨店」。「柏髙島屋」、「丸井柏店」などと同年の開業であり(丸井は旧店からの移転開業)、それぞれが国鉄柏駅とダブルデッキ(ペデストリアンデッキ)で連結されるという、当時としては画期的な街づくりで注目を集めた。

「柏そごう」はそごうグループで初の回転展望レストランや複層立ての連絡通路を設置。また、出店時から2000年までは「株式会社柏そごう」の運営で、地域貢献の姿勢を前面に打ち出し、別館は地元店舗が入居する専門店街を併設した「スカイプラザ」とするなど、のちのそごうの店舗づくりにも大きな影響を与えた。

 1991年にはピークとなる年商590億円を記録。開店以来、長きに亘り柏市の地域一番店として、そしてそごうを代表する大型百貨店の1つとして君臨してきた。14階という高層部にある回転展望レストランは柏市内の至る所から見える存在であり、今日まで柏駅前のシンボルとなっている。

 もちろん、近年におけるそごう柏店の経営不振は「流山おおたかの森」(流山市)や「ららぽーと柏の葉」(柏市)などといった、つくばエクスプレス沿線における大型開発の影響も捨てきれない。しかし、そごうの最大のライバルである「柏高島屋」は、現在も比較的好調である一方で、かつて長年に亘って髙島屋よりも多くの売上があったそごう柏店が閉店にまで追い込まれたのは何故であろうか。

◆そごう・西武と高島屋の命運を分けたのは?

 柏高島屋(現在の売場面積48,698㎡)は柏そごうと同じく1973年に東武鉄道柏駅ビルに開業した。

 当初の売上はそごうに大きく水をあけられていたものの、その後、改装と増床を繰り返し、1992年にはショッピングセンター開発を行う子会社「東神開発」の手で増床を図り「柏高島屋ステーションモール」を形成、さらに2008年には新館も開業。近年は若者をターゲットとしたファッションブランドも導入しており、従来は百貨店であまり買い物をしなかった層にまで客層を広げることに成功している。

 一方の、そごう柏店にしても店舗改革をまったく行っていなかった訳ではない。

 例えば、2014年からは大手百貨店では比較的珍しい産直野菜の売場を導入。また、地元で作られる「柏ビーズ」を使った雑貨の販売も開始したほか、2015年からは柏市の若年人口割合・ファミリー世代の多さに着目するかたちで「新入社員が選ぶ初任給に送りたいプレゼント」を提案するなど、比較的若い世代に向けた品揃えと商品提案も開始していた。また、合理化による直営床削減のため2012年に導入したカルチャースクールも、新たな顧客を獲得するきっかけの1つにもなり得た。

 しかし、そごう柏店では、2005年に別館であるスカイプラザにビックカメラの導入をおこなったものの、柏髙島屋と比較すると有力テナントや時代の流れに乗った新ブランド、若者に人気のブランドの導入が少なく、微小な店舗改革もこれまでのイメージを一新するようなものではなかった。そればかりか、合理化によりシャンデリアの撤去やからくり時計の停止、販売員の大幅削減などを行ったことで「首都圏一等地の百貨店らしさ」がどんどん失われていくこととなった。

 店舗の雰囲気が「デフレ化」するなか、百貨店らしさを求める客は髙島屋へと流れていった。一方、館内で販売する商品はこれまでのそごうとそれほど大きく変化せず、さらに現在のそごう柏店において品揃えの中心となっている百貨店向けのミセス向けアパレルでは、多くのブランドが柏髙島屋においても同じ商品を取り扱っているため、そごうは新たな顧客を定着させることもできなくなっていた。結果として、柏駅前の百貨店は「ハレの日から日常まで幅広い世代を対象とする髙島屋」に対し、「かつては豪華だったシニア向けの古いそごう」というイメージで固定されることとなった。

 特に近年のそごう柏店は、抜本的な大型改装を行わずごく小規模の改装を繰り返したことが裏目に出ており、その結果、店内の動線が良くない部分も見受けられたほか、髙島屋と比較して老朽化も目立ってきていた。2015年2月期の売上高は、柏高島屋が358億円だったのに対し、そごう柏店の売上は121億円にとどまり、「柏そごう」最盛期の僅か2割程度となっていた。

◆閉店すればそれで終わりではない-そごう・西武の苦悩

 そごう柏店は2016年9月30日を以て閉店するものの、例え閉店してもこれで「そごう・西武との縁が切れる」ということにならない。そごう柏店はそごう・西武が建物の大部分を所有する自社物件であり、今後は店舗跡の処分が大きな課題となる。「ビックカメラ」「浅野書店」など一部のテナントに関しては営業を続けるものの、先述の通り首都圏の駅前一等地でありながら9月現在は店舗跡の活用方法は全く決まっていないといい、14階建て、3館体制と規模が非常に大きいため、建物を解体するにも多額の費用がかかることは明白である。

 柏市は、そごう・西武に対して店舗跡の活用策を早急に決めるように要請した一方、そごう・西武も柏市に対して店舗を公共施設として活用しないか打診しているという。

 1973年から2000年代初期まで、30年近くに亘って柏市の地域一番店だったそごう。もっと早期に抜本的な改革を行い、百貨店らしい「ハレの場」を提供し続けつつ、新たな客層も獲得する努力を行っていれば、ここまでの売り上げ減少は避けられ、閉店までには至らなかったのではないだろうか。

◆セブンアイの百貨店経営方針の功罪

 実は、他のそごう・西武の店舗でも柏店と同様に、とくに旗艦店以外においては、従来と比較すると内外装や販売員の極端な合理化に走ったり、長年に亘って改装やテナントの刷新が行われていないような店舗が存在する。百貨店は、一般的にスーパーマーケットなどと比較して店舗の規模が大きく、またその立地から建物が「都市の顔の1つ」として捉えられることも多い。もちろんそごう柏店も同様であり、その閉店は地域経済に暗い影を落とすばかりか、一等地の大型空き店舗の存在自体が地域のイメージ悪化を招くことは想像に難くない。

 セブンアイがこのままこういった経営手法を採り続けていくならば、「そごう・西武」全体ののれんに、ひいては百貨店業界全体にさえも大きな傷を付けることになり、それが更なる経営不振、そして新たな閉店を生み、地域経済の疲弊を招くというスパイラルに陥る遠因にもなるであろう。

 百貨店事業の縮小が続く影には、百貨店への新規投資を阻んだセブンアイの百貨店経営方針の功罪が見え隠れするように思えてならない。

<取材・文・撮影/都市商業研究所>

【都市商業研究所】

若手研究者で作る「商業」と「まちづくり」の研究団体。Webサイト「都商研ニュース」では、研究員の独自取材や各社のプレスリリースなどを基に、商業とまちづくりに興味がある人に対して「都市」と「商業」の動きを分かりやすく解説している。Twitterアカウントは「@toshouken」

※都商研ニュースでは、今回の記事のほかにも下記のような記事を掲載中

・エブリワン・ココストア九州、2016年末までに「RICストア」に改称-人気のベーカリーも存続

・プランタン銀座、2017年3月より「マロニエゲート銀座」に統合

・スターバックスコーヒー、山口市に出店へ-全県庁所在地への出店果たす

ハーバー・ビジネス・オンライン

最終更新:9/28(水) 16:20

HARBOR BUSINESS Online