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GDPなど経済統計は本当に信用できるのか(上)

会社四季報オンライン 9/28(水) 19:31配信

 「GDPなど経済統計は本当に信用できるのか?」――こんな議論が巻き起こっています。経済統計をめぐっては以前から「発表のたびに大きくブレる」「景気の実態とズレがある」などの指摘が出ており、この問題は当連載でも何度か取り上げてきました。最近では、今年4月に経団連が「公的統計の改善に向けた提言」をまとめたほか、政府や日銀も統計の精度向上などの取り組みを本格化させ始めています。

 このような議論のきっかけの一つとなったのが、昨年12月に発表された2015年7~9月期実質GDPの改定値でした。その前月に発表された速報値ではマイナス0.8%(前期比、年率換算)だったのに対し、改定値ではプラス1.0%と大幅に上方修正されたのです。

 数字のうえではポジティブサプライズだったのですが、マイナスだと思っていた景気が1カ月もたたないうちに「実はプラスでした」となったわけで、改定幅は1.8ポイントにも達したのです。これでは企業の景気判断や政府の政策が混乱してしまいます。

 GDP統計はこれまでも速報値と改定値の乖離がたびたび問題になってきました。実質GDPがマイナスからプラスへ、あるいはマイナスからプラスへと「逆方向」になった例が00年以降では7回あります。

 中でも00年7~9月期はプラス1.0%からマイナス2.5%へ改定され、その幅は3.5ポイントに達しました。

 プラスまたはマイナスで同じ方向でも、改定幅が1.0ポイント以上となったケースも過去5年間(20期)で4回ありました。改定幅の平均は0.68ポイント。この数字は一見小さいように思えますが、成長率自体がせいぜい1%台程度であるのを踏まえると、これだけの改定幅は極めて大きいと言えます。景況感も変わってくるでしょう。

■ 精度面の問題抱える家計調査

 なぜこのように改定値で大幅にブレるかについては当連載で詳しく書きましたが(14年11月26日「たかがGDP、されどGDP」など)、GDP統計は各省庁が集計する各分野の数多くの基礎的な統計を基に内閣府が推計を積み重ねて算出しています。その主なものは家計調査(総務省)、商業動態統計(経済産業省)、鉱工業生産(同)、法人企業統計(財務省)、毎月勤労統計(厚生労働省)など多岐にわたります。

 その中には、「速報値」の発表までに集計が間に合わない統計もいくつかあります。たとえば、四半期ごとに発表される法人企業統計は企業の設備投資の動向がわかる重要なものですが、まとまるのはGDP速報値の発表後になってしまいます。そこで、速報値の段階ではほかの統計で代用して設備投資を推計。改定値には同企業統計の結果が反映されます。

 ところが同統計は資本金1億円未満の中堅・中小企業のサンプル数(抽出率)が低く回答率にもバラツキがあるため、それが改定値に反映されて数字をブレさせる一因になっているのです。

 GDP統計には速報値と改定値の乖離以外にもいくつか問題点があります。その一つが、GDP推計の基となる基礎統計自体に精度の面で難点を抱える統計があることです。家計調査はその代表例です。

 同調査は総務省が全国の家庭から無作為抽出した約9000世帯を対象に行っています。このサンプル数は統計学上、問題ないそうですが、現実には全国約5200万世帯の0.02%をカバーするに過ぎないため、集計上のブレが大きくなる傾向があります。

 同調査は対象世帯に家計簿のような調査票を渡し、毎日の買い物や料金支払い1つ1つについて金額と数量を記入してもらっているのですが、その分類が細かいため、調査対象者にとってはかなり負担が大きく、記入漏れや不正確な記入が起こりやすいという弱点もあるのです。

 こうした事情から、時間的余裕の少ない共働きや子育て世帯の回答率が減少して高齢者世帯に偏りがちとなり、それらの結果、同調査の数値は実態以上に消費低迷の数値が出やすくなる可能性がある、と指摘されています。

 家計調査による実質消費支出(2人以上世帯)の前年同月比の推移を見ると、同じ消費関連指標である商業動態統計の小売業販売額に比べてブレが大きく、やや弱い数字の出る傾向のあることがわかります。

 家計調査は消費する側の支出額であるのに対し、小売業販売額は販売する側の実績を集計したものです。こちらは全国の百貨店、スーパー、コンビニエンスストアのほか、小規模小売店も含め小売業を広範囲に網羅しており、小売りの実態を比較的よく反映しているとされています。

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最終更新:9/29(木) 17:36

会社四季報オンライン