ここから本文です

100均で何でも買える時代に“高くても売れる”商品を作る知恵

@DIME 9/29(木) 7:31配信

この連載では、自分が過去に考えてボツになった企画、すなわち「ボツネタ」を振り返ることで見えてくるビジネスアイデアのつくり方をご紹介します。

僕は100円ショップ、いわゆる「100均」をよく使いますが、それぞれのお店で商品バリエーションは増え、もう100均で何でも揃ってしまうのではないか? と思えるほどになっています。 そんな中、玩具や雑貨の商品企画会議で、「それ、100均で売ってるんじゃない?」という意見が出て、企画がボツになる光景をよく目にします。今回は、この「100均時代」に、何千円、何万円でも売れる商品を作るにはどうすればよいかをお話します。

<今回のボツネタ>

【商品名】メイロメイカー

【当時考えた商品概要】

迷路を作って相手に解かせる頭脳バトルゲーム! フィールドに自由に壁を立てて、球を転がしてゴールまで運ばせる迷路を組み立て、互いに相手に解かせろ! よりゴールに時間がかかった方の負け! 手に汗握る対戦ゲーム!

【ボツになったポイント】

・何かフツー
・何か100均でも売ってそう
・何か自分で作れちゃいそう

このアイデアも10年以上前、新入社員時代に考えたものです。玩具メーカーに入社し、企画担当になってから、日々商品アイデアを会議で提案していたのですが、当時上司から提案企画に対してよく頂いていたのが、「なんかフツー」というコメントでした。僕は、すでに世の中にありそうなフツーのことばかり頭に浮かんでしまう企画マンでした。このネタもスケッチしていた一案ですが、今見ると結構恥ずかしく思います。そしてその当時は、「なぜフツーじゃダメなんだろう」と考えていました。フツー=NGという意味が分からなかったのです。

それと似た意味で、「100均でいいじゃん」「材料買って来れば作れるじゃん」とも、よく言われていました。100均でも同様のモノを入手できそうだということです。そんなこと言っても、100均って何でもあるし、難しいなぁ…みたいなことで悩んでいたのを思い出します。

価格で勝負すると、安い相手はどこまでも現れ続けます。どうすれば、自分たちより価格の安い競合に勝つことができるのでしょうか?

■価格より大事な価値は、「作り手が誰であるか」

例えば、新しさで戦っても、安い競合は速いスピードで追随し、コストパフォーマンスで上回ってきたりもします。どうすれば他社に負けない商品を作れるのか。

ズバリ言うと、値段が関係なくなる商品は、作り手の顔が見える商品です。

先日僕は、少々高価な折り畳み傘を買いました。折り畳み傘は100均でも買うことができます。しかし、あるお店で傘を見つけて、「風を受け流す骨の設計をしていて、簡単に折れない」「幅が広い、でも軽量」「持ち手がしっかりしている」など、欲しいと思うポイントがいくつかあり、買おうかなと迷っていたのですが、最終的に購買を決めたのは、「台東区の工場で作られている」という一文だったように思います。全くの想像ですが、町工場で創意工夫しながらこの傘を作ったのではないか、というイメージが湧き、その瞬間、レジに向かっていたのでした。作り手のこだわりが商品のたたずまいから伝わり、他では手に入らないと直感したのだと思います。

作り手の顔の見え方はいろいろありますが、「ブランド」とは、まさしく「誰が作ったか」と言うことです。トヨタの車が欲しくなるのは、トヨタに知人がいるわけではなく、おそらくトヨタという大企業は優秀な技術者やデザイナーの集合体であり、その人たちが作っているから素晴らしい車なのだ、とイメージしているから欲しくなるわけです。ブランドで商品が欲しくなるという現象は、ネームバリューというより、作っている人が想像できるから買っているのです。

もっとわかりやすいのは書籍です。もしも著者名を表示してはいけない、という世界になったら、本は売れないでしょう。たとえ知らない著者だったとしても、著者と言う存在があって、タイトルを見て、冒頭から読んでいくうちに、すでにその著者自体に興味がわいてくるから、その本を買うのです。

自分が最近買ったものを思い返してみてください。安くないのに買ってしまったものは、作った人のイメージを無意識のうちに想像できていたのではないでしょうか?

100均の商品は、誰が作ったかを全く気にせず、安くて便利だから買っています。これを凌駕して売れる商品は、どんな人が作ったかが見える商品です。では、どうすれば、作り手の顔が見える商品を開発することができるのでしょう?

■作り手の顔は、「意外性」から見える

よく、野菜の販売所で「この小松菜は○○さんが心を込めて作りました」など、生産者の紹介が顔写真付きで表記された野菜が売られていることがありますが、僕は、作り手の顔を見せるという本来の意味はそういうことではないと考えています。

作り手の顔は、その商品が持つ「意外性」から見えるものです。

僕は昔、商品に「意外性」と言う要素は果たして絶対に必要なものなのか? と言うことが理解できなかった時期がありました。人はなぜ、意外性を求めるのか? 意外じゃなくてもいいのではないか?

後々、「意外性」とは、商品が持つ驚きというより、「こんなものを作る人はすごい」と、作った人の魅力を直感することであり、それがモノを買う理由であることに気が付きました。意外性は、作り手の個性です。開発者がどうしても実現したかった部分が、コストなどの壁を越えて反映されていることが見えると、他者の知恵や想いに対してお金を払いたくなるのです。身に覚えがないでしょうか。人は、人にお金を払っているのです。

「こだわり」と言う言葉も一緒です。「これを作った人は、こんなことを考えて、この部分にこだわったのか。自分とは違う面白い人だ。」という興味が湧き、その瞬間にその作り手のファンになるから買うわけです。モノにお金を払うか払わないかの境界線は、実はここにあります。だから僕は、もし100円ショップが、開発者の顔が見える商品群というブランディングをして来たら、恐ろしいと思っています。

もし今あなたが、商品開発に携わっているなら、あなた自身がその商品で絶対に外せないこだわりを突き詰め、コストを考えながら商品を作っているときも、絶対に譲れない部分の仕様を軽々しく下げたりせずに、買う瞬間にファンにさせるような商品を作ってみましょう。すでにある会社の看板も超えて、作り手本人だけが絶対に捨てなかった、他の人が驚くこだわりと意外性を商品に持たせることができれば、その商品は一人歩きして売れていくのです。

■今回のまとめ

・人はモノを買うとき、無意識のうちに、その商品を作った人にお金を払っている。

・商品開発の基本は、作り手の顔が見える商品開発である。そのためには、開発者だけの「こだわり」を安易に捨てず、お客様に「意外性」を感じさせるモノづくりをする。

文・イラスト/高橋晋平

@DIME編集部

最終更新:9/29(木) 7:31

@DIME

記事提供社からのご案内(外部サイト)

@DIME

小学館

2017年1月号
11月16日発売

定価630円

ヒット商品&トレンド大予測!
ふるさと納税駆け込み攻略ガイド!
発表!小学館DIMEトレンド大賞
別冊 DIME創刊号付き

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

北朝鮮からの脱出
北朝鮮での幼少時代、『ここは地球上最高の国』と信じていたイ・ヒョンソだったが、90年代の大飢饉に接してその考えに疑問を抱き始める。14歳で脱北、その後中国で素性を隠しながらの生活が始まる。 これは、必死で毎日を生き延びてきた彼女の悲惨な日々とその先に見えた希望の物語。そして、北朝鮮から遠く離れても、なお常に危険に脅かされ続ける同朋達への力強いメッセージが込められている。