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村野藤吾の名作を守れ! スポンサー募集中です。

Casa BRUTUS.com 9/29(木) 22:00配信

福岡県・北九州市にある〈八幡市民会館〉。村野藤吾が手がけた作品性の高いモダニズム建築だが、耐震面やバリアフリー改修の課題から取り壊しの危機にある。

そこで今年6月、地元まちづくり団体が立ち上がり、建築家らの協力で現代美術館に再生するプランを発表。単に建築の保存を叫ぶのではなく、活用の計画案を提案する前向きなこの取り組み。そのポイントを提案者のひとり、建築家の宮本佳明さんに聞いた。

Q 提案では、音楽ホールから美術館へと用途が変わっています。なぜ使いみちを変えるのですか?

ひとつは耐震補強の合理化です。ホールの空間を維持する場合、ホール外側から耐震補強しないとなりません。しかも元の建物が、構造的にはかなり変わっている。耐震補強に費用がかかり、外観やホワイエの意匠も損なわれかねません。美術館ならば、ホールの空間を維持する場合に比べて半分以下のコストで耐震補強できます。

Q 文化遺産を残すにはお金がかかるというこれまでの認識を覆す、合理的なプランですね。設計のポイントを教えてください。

ホール内に展示室を散りばめて、それらを支える構造体を耐震要素として機能させるアイデアです。袋にものを詰めると、しっかりするでしょ? そんなイメージです。

Q 美術館以外の使い方でも同様の方法で補強できそうですが、それでも美術館として再生すべき理由とは?

美術館にすると、集客効果が期待できるからです。現代アートで観光客を呼び込み、まちおこしにつなげた事例は国内外にたくさんあります。かつて鉄鋼業で栄えた八幡を再生する起爆剤として有効なはずです。今回の提案を主導した「八幡市民会館リボーン委員会」の中では鉄鋼業の博物館にするアイデアも出ていたのですが、うまくスポンサーが付かなかったそうです。でも美術館なら出資してもよいと言ってくれる企業が出てきて、実現に動き出しつつあるのです。

Q 改修費をスポンサーからの資金でまかなうプランなのですか?

バリアフリーと耐震補強の費用は行政、美術館への改修にかかる約5億円は民間で分担する計画です。スポンサーは集まりつつありますが、まだ足りていません。ぜひご協力お願いします!

Q では、この建物の魅力とは? 協力を募るためにも、詳しく教えてください。

〈八幡市民会館〉は1958年築。戦後、民主主義が定着する中で生まれた“市民会館”という施設の先行事例です。村野藤吾というのは不思議な設計をする建築家で、特にこの建物は分析すると、相当変わったことをしています。印象的なのはホールの量塊感ですが、このマッシブなボリューム、実はガラスのスリットの上に浮かぶように建っています。

Q 重いものを、あえて浮かべる。先ほど「構造的に変わっている」とおっしゃっていたのは、これなのですね。

なおかつこのボリューム、真正面から見ると両端の壁がわずかに外側に広がっています。さらに横から見ると、壁が非常にゆるやかな曲面を描きながら、中心に向かって外側に倒れています。つまりコノイド曲面です。模型をつくり、図面を描いたからわかるレベルの、かすかな曲面です。コンピュータのない時代の設計技術、施工技術で実現させるのは、恐ろしく難しかったはずです。

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最終更新:9/29(木) 22:00

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