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なぜ円は独歩高になりやすい? 為替レートの不思議

NIKKEI STYLE 9/30(金) 7:00配信

 今でも忘れられないのが、私が社会人になって初めて為替運用に携わったときの衝撃です。その会社ではチーム採用制が取られ、入社前に担当業務も決まっていたので、準備万端で業務に臨んだはずでしたが実際はわからないことばかり。まさに「為替にチャレンジ」の毎日でした。

 今回はその際の経験から、為替市場や為替レートの基本構造を通して、皆さんの海外投資に伴う為替リスクやコストについてお話ししたいと思います。

■市場では円は「米ドル/円」以外売買されていない?

 為替市場では米ドルを中心に1日当たり5兆ドルという世界最大規模の売買取引が行われており、流動性が高い市場として知られています。米ドルの総取引量は全体の約90%を占め、上位3通貨ペア(米ドル/ユーロ、米ドル/円、米ドル/英ポンド)の合算でおよそ50%に達します。

 裏を返せば、流動性が低い通貨ペアは多数存在し、主要通貨とみなされている日本円でも、米ドル以外の通貨ペアの取引量は僅か4%にすぎません(図表1)。

 米ドルが圧倒的な取引量を誇る理由として、世界の基軸通貨として信用され国際的な貿易取引や金融取引で使われていることに加えて、「媒介通貨」の役割を果たしていることが挙げられます。一般にはあまり意識されていませんが、日本にいる私たちが新聞やネットで目にする各国通貨の対円の為替レートは、米ドル/円を除いて「クロス円」で表示されています。これは各国通貨を一度米ドルに換算し、その米ドル建ての換算額を対円レートで表示する、というものです(図表2)。

■米ドルの媒介によって為替変動が増幅されやすい

 さて、その「クロス円レート」には外貨/米ドルと米ドル/円レートの掛け算で合成されるがゆえの特性があります。米ドルと円が同方向に動く、つまり米ドル高(外貨安)と円高(米ドル安)が同時に進むと、双方の変動幅が同方向に掛け合わされ、クロス円の変動幅は大きくなります。逆に米ドルと円が逆方向に動けば、双方の変動幅は互いに打ち消しあうので、クロス円の変動幅は小さくなるのです。

 6月下旬の英国のEU離脱決定となった国民投票後に、投資家のリスク回避姿勢が強まり安全通貨が買われ、円が独歩高となったことは皆さんも記憶に新しいのではないでしょうか。これはユーロ、ポンドから米ドルへのシフトが起こるとともに、英国のEU離脱の影響が米国よりもさらに小さいとみられた円にもリスク回避の資金が向かったため、米ドル高(外貨安)と円高(米ドル安)が同時に進んだことで、米ドル以上に円の変動幅が大きくなったと考えられます。

 このように、クロス円レートはいや応なく米ドル/円の価格変動の影響を受けるため、クロス円同士の動きが似通いやすい(相関が高い)という特性があります。さらに、円と米ドルは政治的、経済的にも安全通貨とみなされやすいため、円と米ドルが同方向に進み、結果として円のボラティリティー(価格変動)がより大きくなりやすいのです。従って海外資産に投資をする際には、基軸通貨の米ドルから投資をするほうが、円からよりもリスクを抑える効果が高いと考えられます。

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最終更新:9/30(金) 7:00

NIKKEI STYLE

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