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中国不動産市場 バブル崩壊ではなく拡大が懸念か

マネーポストWEB 9/30(金) 16:00配信

 中国において、杭州市では9月19日から、南京市では26日から不動産購入制限政策が打ち出されることになった。購入制限政策とは1世帯が購入できる住宅件数を制限する政策である。都市部を中心に再び不動産投機を警戒する動きが出始めた。

 中国の8月の70大中都市住宅販売価格をみると、対前年同月比では62都市で上昇している。厦門では43.8%、合肥では40.3%、深センでは36.8%、南京では36.7%、上海では31.2%、北京では23.5%、杭州では22.0%、広州では21.1%、福州では20.2%上昇している。前月比でも、64都市で上昇しており、7月と比べ上昇都市数は3つ増えている。

 不動産価格の上昇は顕著である。上昇の主要因として、投機の増加が指摘されるが、それには潜在的な実需が強いといった背景がある。

 中国では男性と女性の人口数に開きがある。2015年末の総人口は13億7462万人であったが、このうち、男性は7億414万人で女性は6億7048万人である。女性100に対して男性が105.02の割合だ。出生数で比べると、女児100に対して男児は113.51の割合である。

 正常な状態では、男女の出生比率は女児100に対して男児103~107だといわれている。1980年代には基本的にその範囲に入っていたが、1990年には111.3に上昇、2000年には116.9、2004年には121.18に達している(「環球軍事網」2016年4月20日付より)。2008年以降は下がり始めているが、2015年の段階でも正常の範囲には程遠い。

 中国では男の子を欲しがる親が多いが、一人っ子政策がそうした欲求を増幅させたことで、人工中絶を通じて、歪な人口構成が形成されている。

 若者たちの間で発生している男女間人口比率の不均衡は婚姻面で大きな問題を引き起こしている。

 相手選びで優位にある女性は結婚の条件として、住宅の所有を第一とする。日本人には大げさに聞こえるだろうが、これは事実である。中国本土のどの地域においても、結婚に際して男性は、両親や祖父母、親戚が援助する形を含め、新居を購入しようとする。男子や一族にとって、新居は子孫を次の世代に残すために必要不可欠なものとなっている。

 こうした構造的な要因で強い実需が発生しているからこそ、投機が蔓延する。

 上海ではこの夏、離婚件数が大幅に増えたそうである。不動産購入制限が復活しそうだといった見通しが強まり、1世帯1住宅(2住宅とするところもある)といった大原則を潜り抜けるために、偽装離婚を急ぐ夫婦が増えているためと考えられる。

 投機需要は社会の隅々まで広がっており、根の深い問題である。

 日本では、価格の急上昇や不動産在庫の多さをもって、日本のバブル崩壊との類似性を強調する意見が多いが、これには強い違和感がある。

 不動産価格上昇の要因は、男女比率の不均衡だけではない。人口移動が長期にわたり続く可能性が高いことも要因の一つである。

 2015年における中国の一人当たりGDPは7990ドルで世界76位である。順位を落とし続けて26位となっている日本と比較しても、中国はその約4分の1に過ぎない(IMFデータより)。

 都市と農村、沿岸と内陸との間に大きな経済格差がある以上、今後も人口移動が続く。表現を変えれば、農村、内陸において依然として大きな過剰労働力が存在しており、それが都市、沿海部に向かうことで不均衡、非効率が解消される。

 こうした経済の大きな流れは、潜在成長率が低下してバブル崩壊が起きた当時の日本と全く異なる。

 昨今、中国の不動産市場におけるバブル崩壊が懸念されているが、当局が管理を怠れば、これから巨大なバブルが発生・拡大する可能性すらあるのである。

文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うTS・チャイナ・リサーチ代表。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」、メルマガ「週間中国株投資戦略レポート」も展開中。

最終更新:9/30(金) 16:00

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