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日銀の9月MPMにおける「主な意見」-パラダイムシフト

NRI研究員の時事解説 9/30(金) 13:19配信

はじめに

日銀が「総括的検証」とそれを踏まえた「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を導入したMPMの「主な意見」が公表された。予想外の意見はみられない一方、票決の結果が示唆するほどにはコンセンサスが形成されたかどうか不透明な印象も受ける。当面の政策運営に対する意味合いも含めて、内容を検討したい。

「総括的検証」

「総括的検証」のポイントである「量的・質的金融緩和」の全体の効果については、デフレではない経済状況を実現できたことや、インフレ期待の形成において適合的な要素が大きいので、フォワードルッキングなメカニズムを強める必要があることなど、黒田総裁の会見や講演の内容に照らして、執行部ないしそれに近い立場とみられる意見が示されている。その上で、マネタリーベースの拡大が期待インフレ率の押し上げに寄与したとの意見と、両者の相関は為替レートを通じた短期的かつ見せかけに過ぎないとの意見が、異なる立場から併記されている。

以前の本コラムでも触れたように、少なくともこれまでの「量的・質的金融緩和」の効果を振り返る際には、為替レートは相当なウエイトを以って取り扱うべき論点である。その意味では、このような形であれ言及があったこと自体は重要だが、黒田総裁が会見で再度強調したように為替政策は財務省の専管事項であるだけに、これ以上深入りすることは現実的ではないのであろう。

マイナス金利政策に関しても、長短金利を大きく引き下げる効果を持ったが、金融機関や金融市場への影響にも留意すべきという、執行部とみられる意見が冒頭に示された上で、後者の点に関しては各々異なる立場からの意見も示されている。

つまり、金融機関の体力はグローバルな金融システム安定にとって重要である-大手金融機関を念頭に置いていると示唆される-との懸念が述べられる一方、(1)金融機関経営の悪化が経済に及ぼす影響と、金融緩和が金融機関を経由せず経済を好転させる効果のバランスを考えるべきという中立的な意見に加え、経済が好転すれば信用コストの低下や貸出の増大によって金融機関の経営も好転するとの指摘も記されている。

マイナス金利政策は所期の効果を発揮したが、その運営に際しては金融仲介への影響に配慮するというのが、黒田総裁の会見等で示された「公式見解」であるが、今回の「主な意見」を見る限り、マイナス金利政策の運営については、必要な「配慮」の程度も含めて、まだ様々な意見が残っている印象も受ける。

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最終更新:10/7(金) 14:08

NRI研究員の時事解説