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列車制御システム整備進まず NY郊外列車衝突事故

Japan In-depth 9/30(金) 19:00配信

現地時間29日朝8時45分頃、ニュージャージー州で、列車が猛スピードで駅構内に突っ込む事故が発生した。

事故が起きたのは、5万人以上が利用する、ニュージャージー州とマンハッタンを結ぶハブであるホーボーケン駅。ラッシュアワーに起きた惨事で犠牲になったのはプラットホームにいた34歳の女性。ケガ人は乗客を中心に112人にのぼった。

CNNで目撃者が語ったところによると、列車は駅に近づく際、通常は10km以下 に減速するところを、この時は、50km近く出していたように見えたという。このホーボーケン駅は終着駅であり、運転手に心臓発作など何か身体的問題が起きたのではないかという見方が今のところ有力である。負傷した運転手は病院で治療を受け、現在、捜査に協力しているというが、真相が明らかになるまでには時間がかかるだろう。



■珍しくないアメリカの列車事故

鉄道のインフラ整備が遅れているアメリカでは、このような列車脱線事故は珍しくない。 2011年には、同じホーボーケン駅に列車が突っ込み、30人が負傷する事故が起きている。運転手の不注意が原因と見られている。

2013年12月にはニューヨーク市ブロンクス地区で列車が脱線、4人が死亡、60人以上が負傷する惨事が起きている。居眠りしていた運転手が、制限速度の3倍の速度でカーブを曲がろうとして起きた事故だった。

2015年5月には米東部フィラデルフィアで、首都ワシントンからニューヨークに向かっていた長距離列車アムトラックが制限速度の2倍の170kmでカーブを曲がろうとして脱線、8人が死亡、200人以上が負傷する大惨事が起きている。この時、運転手は投石を伝える無線に気を取られ、減速を忘れていたと見られている。

いずれの事故とも、 列車制御システム、PTC(Positive Train Control)が整備されていれば防げた事故であった。



■遅れる列車制御システム整備

このPTCについては2008年にカリフォルニア州で25人が死亡、135人以上が負傷した列車衝突事故を契機に、法律が制定され、2015年末までに全米の鉄道路線に整備が義務づけられていた。前述のアムトラックでは昨年末には整備を完了。フィラデルフィアを中心とした交通網のSEPTA(Southeastern Pennsylvania Transportation Authority)などでも、最優先課題として整備がすでに大幅に進んでいるが、 膨大な費用がかかる新システムを前に各社苦しみ、議会は全米7割の路線で期限までの整備は不可能と判断。国家運輸安全委員会の反対を押し切って、2018年末までに期限が延期された。

今回事故の起きたニュージャージーの路線では、PTCの整備はまったく進んでいないと見られており、現状のままでは、今後2年間で間に合うとは到底思えない。 事故後の会見では、ニュージャージー州知事クリス・クリスティー氏とニューヨーク州知事のアンドリュー・クオモ氏に対し、記者からは、「PTCがあれば防げた事故ではないか」との質問が相次いだが、両氏とも、まだ事故原因がわかっていないとして、PTCの議論に移行することを避けている。

ABCによると、国家運輸安全委員会が制御システムの導入を呼びかけ始めた70年代以降、PTCが整備されていれば防ぐことができたと見られる事故は145件。300人が死亡、6700人が負傷している。

井上麻衣子(ジャーナリスト/ビデオグラファー/ストリート・フォトグラファー)

最終更新:9/30(金) 19:00

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