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出世した人は、なぜ「雑談恐怖症」に陥るのか?

NIKKEI STYLE 9/30(金) 16:40配信

現役時代それなりの地位にいた人ほど雑談が下手

 「初対面の人を前にどう振る舞ったらいいのか?」――。頭を悩ませる人がますます増えているらしい。

 このところ「雑談関連書籍」は書店で平積みの人気だ。SNS(交流サイト)で雑談だらけの日々を送っている若者が、「リアルな場面じゃてんで雑談ができないって?」などと斜に構えている場合ではない。

 「雑談恐怖」は若者だけではない。私が取材した老人施設関係者がため息まじりに言っていた。

 「特に男性入居者で、現役時代それなりの地位にいた方に限って、他のメンバーさんとのたわいない会話に交じれず苦しむケースが多くって……」

 「雑談は厄介だ」とおっしゃる方は、実は昔からいた。目的を持った会話は比較的楽にこなせても、行き当たりばったりの瞬発力を求められる雑談は、むしろ難しいと感じても不思議はない。

 だからだろう。昔から「雑談で困らないための呪文」が重宝されている。「きど(木戸)にた(立)てかけし衣食住」の類だ。ネット上にいくらでもあるから、一度ご覧になってもらいたい。

 「き」は気象、「ど」は道楽・趣味、「に」はニュース、「た」は旅、「て」は天気ないしはテレビ。「雑談のテーマに迷ったら思い出せ」ということらしい。ところがこの「雑談マニュアル」、お手軽だけに「リスク」も伴う。

「マニュアル質問」をするなら責任を持って

 先日、某地の某会合に登壇を待つ間、律義そうな若者が私に気を使い、いろいろ話しかけてくれた。「おじさんを、ほったらかしにしたら気の毒だ」という親切心あふれる誠実な若者が、“例のマニュアルで雑談”してくれていたのがすぐにわかった。

青年:「こちらの冬は、寒いでしょう」

梶原:「そうですねえ、でも、身が引き締まる感じ、私は好きですよ」

 北国の厳しい冬、春を待つ地元の人の心情が聞けたらなあと期待したら、スッと話題を変えられた。

青年:「趣味はなんですか?」

梶原:「あ、そうですねえ……犬の散歩かなあ。散歩と言っても、ちっちゃなトイプードルですから大層なもんじゃありませんが」

 北国のわんちゃんは寒さに強く、雪道やぬかるみもへっちゃらでたくましく散歩を楽しむのか、聞いてみたかったが、話題が次へクルリ!

青年:「けさのニュースで、衆参ダブル選挙か? とありましたがどう思われます?」

梶原:「まあ、そうですねえ、どうでしょう。与党にとってチャンスと見ればやるってことですかねえ」

 この地はかつて選挙に強かった、某有名政治家の強固な地盤だ。そのエピソードが聞けるかと楽しみにしていたら、また話題を変えてきた……。

青年:「テレビは見ますか?」

梶原:「見ます、見ます! 朝ドラの『真田丸』も大詰めですねえ」

 「それを言うなら『あさが来た』じゃないですか!(笑)」というツッコミを期待してボケたらスルーされ、「本番ですよ」と青年にせかされた……。

 マニュアルによる「質問」は便利だが、投げかけた質問には責任を持った方がいいのではないかと、親切にされておきながら偉そうな感想を持ってしまった。

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最終更新:9/30(金) 16:40

NIKKEI STYLE

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